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第35話 商人ネズミ

 「娘は絶対にやら〜〜〜〜ん!」

 いや、別にお前の娘じゃないだろうゲタン。


 「見習いだと、まだまだ半人前の奴にはやらん!」

 いや、別にお前の娘でもないよねセコス。ああ、妹だからセリフ合ってるか。


 「スペード様、何を言ってるんでチュー」

 おい、ねずみ敬語になってるやん。えらい人なの?


 そんな周りの反応が聞こえてないのか、当の本人はセイムさんの手を握って熱烈アピールをしておる。

 「ぜひ一度、城下町の方へお越しください。わたしが精一杯のおもてなしをさせていただきます」


 セイムさんはどう受け答えしたらよいか、わからないようだ。


 待てよ、コイツら城下町の商人って言ってたな。わしとしては一度、城下町に行ってみたいと思っていたので、これは好都合かも。セイムさんをダシに一度行ってみようかな。全部コイツ等のおごりで。よし、じゃあとりあえず、助け舟を出すか。


 「スペードさんとおっしゃったか、まあ、そんなに事を急かさないで、セイムさんもすごく戸惑っておるじゃろ。今、わしがセイムさんにある仕事をお願いしているところじゃから、また仕事の終わった後で話す機会を設けますから、ひとまず落ち着きなさい。」


 そう言って、手を離させて、セイムさんには目配せで仕事に向かうように指示をする。


 「これは、私としたことが取り乱してすみません。でも本気ですから。」

 「娘は絶対にやら〜〜〜〜ん!」

 いや、別にお前の娘じゃないだろうゲタン。

 …2回言うなよ。


 スペードはセコムに向き合い

 「お兄さんでしたか、私が半人前だからという理由でしたら、これからお兄さん、セイムさん両方に認めてもらえるよう、仕事に精進いたしますので。」

 と頭を下げた。


 あわててネズミがスペードを制する。

 「スペード様、あなたがこんな蛮族に頭を下げるとは。やめてくださいチュー。いや、やめなさい。ほら、ちゃんとするでチュー。」


 「さっきからよく森の民をさげずむ発言をしておるようじゃが、あんたはどういう了見りょうけんで見下しておるのじゃ?」

 わしはネズミ商人にあけすけに聞いてみる。


 「ふん、わしらからみたら森の民は、野蛮で粗暴で文化のない辺境の未開の地にすむ蛮族だ。

まあ王城、城下町にすむ人間以外は、森の民だろうが、ナルケル地域も蛮族だけどチュー。」

 「ふん、そんな蛮族だとさげずむ森の民と交易を続けるあんたのほうが、がめつい守銭奴という名の蛮族じゃがな。」


 意外に族長は怒っていない。もう慣れているのか、こういう人種に全く期待していないのか。

 ならば、どうでもいいこいつで1つ試してみるか。


 「そんなあなたに、わしからのお近づきの印におもしろい物をプレゼントしましょう。ネズミさん」

そう言い懐から拳大の袋を渡した。中には乾燥した草が入っている。


 「だれがネズミか!ん〜これは何だチュー」

 「これはオカタ山に住む仙人口伝の秘薬イカリソウ〈強壮、強精〉の薬です。」


 薬草の名前は全部日本語のままにしておいたのじゃ。こちらでは、薬と認識されていない、普通の草だったのでな。


 「ほう、オカタ山に住む仙人の話は噂には聞いた事があるでチュー。仙人口伝なら大丈夫でチューか。しかし、なぜ〈強壮、強精〉の薬草を?」

 おい、チョロイな。仙人っていうだけで信じて受け取るのかい!ひょっとしてこの世界の人はみんなチョロイのでは…


 「やはり権力者は色を好むのではないかと思ってな。そうなるこういう薬は需要があると思いましてのう。まあ騙されたと思って一度お試しください。売るもよし、自分で使うもよし。

効果は仙人お墨付きじゃ。」

 くくくっと下衆な笑いを演出してみる。


 本当は一切試してないんじゃけど…。だって、収集、乾燥、粉砕しただけで時間が足りなかったんで人体実験は出来なかったんじゃ…。

 だからこいつで試させてもらって一石二鳥じゃ。まあ毒ではないと思う。ないんではないか?ないといいな〜〜ぐらいじゃ。


 「そうか、ではありがたくもらっておいてやろう。飲み方はあるんでチュー?」

 「その袋からひとつまみ沸いたお湯にいれて、湯の色が、ゲロ吐く手前の土気色の顔のような色になったら飲み頃じゃ。毎日寝る前に飲むがよい。」


 「汚い例えだな…分かったでチュー。もうそろそろ積み下しも終わった頃だろうし、邪魔したでチュな。それではまた後で」

 とゲタンに言い残し出て行った。


 ふーっ一仕事終えた感じじゃ。などと思っていたら。


 「おいジジイ何も仕事終わってないぞ。早く提案せんか、わしに。もう嘘は抜きでな」

 と真顔でゲタンに釘をさされました。


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