第34話 城下町の商人
「この水にはな、砂糖が入ってるんだ」
もちろん砂糖というのはわしが地球語に訳した言葉だ。
「なっ、砂糖なんて高価な物どうやって…」
セコスが尋ねる。
セイム、レイク、リイナは初めて飲んだようだ、とてもキラキラした目で甘い水を飲み干した。可愛いいのう、わしのも飲むか?
「よっぽど、驚いたようだな。砂糖は貴重品で族長のわしでもほんの少し持っているだけだ。
おまえらを驚かすためだけに使ってやったのだ、ありがたくいただけ!」
ニヤニヤ自慢げに笑う。
あの笑いがちょっとムカつくが、わし達を驚かすためだけに貴重な砂糖を使ってくれたのじゃ、奴なりの歓迎の意味もあったのじゃろう。
「さあ、じじい今度はそっちがわしを驚かせる番じゃないのか?」
「そうじゃの〜〜驚いてくれたらいいんじゃが……」
もったいぶってしゃべる。
「どんな提案を聞かせてくれるんだ!あんなに自信満々だったんだ、わしが…まっまさか〜〜〜〜、っていうぐらいだろ。それとも…へっへぴょ〜〜〜んっていうぐらいか、がははは」
ゲタンはわしがとんでもない提案を持ってきたと信じて疑わず、おどけてみせる。そんなゲタンにわしは…わしはあああああああああ
「そんなに期待してもらってて恐縮じゃが…なにもないんじゃ…」
頭を垂れて悲しそうに言う。
ゲタンはポカーンとした顔をみせて、聞き違いかなと思い
「は?、聞こえなかったわい。もう1回。なんて?」
「何も提案、思い浮かばなかったんじゃ…わし……」
ゲタンに上目づかいで言う。
ゲタンの目が点状態で10秒間の沈黙…
「まっまさか〜〜〜〜うそだろおおおおおおおおお」
予想だにしてない答えに絶叫する。
「うそじゃ」
「へっ………へぴょ〜〜〜ん」
「びっくりしたじゃろ」
わしはドヤ顔で言ってみる。
砂糖でびっくりさせてくれたお返しじゃ!ぐらいの軽い気持ちだったのだが…
「ジジイイイイイイイイ表にでろおおおおおおおおおおおおお」
ものすごいご立腹のようじゃ。鬼の形相じゃ。般若の面をグウでたたき割ったかのような顔じゃ。セイムさん、レイク、リイナはガクブルじゃ。
わしは思った、もうこれは殺るしかないな…殺られる前に、殺るんじゃ!
そう天からのお告げの幻聴を聞いて、まさにゲタンに殴り掛かろうとした時、
入口から3人の男がズカズカ入ってきた…
1番前のえそうな奴は、身長が低くく顔は醜い…まるでネズミのようじゃ。よし、こいつの名前はねずみだ。そうしよう!服もネズミ色だしな。
そのねずみの横にいるのは…多分ボディーガードか。体格のいい、いかにも戦闘に長けていそうな感じじゃ。
その後ろにひょろい若い男は…なんというかチャラそうじゃ。
入ってくるなりそのネズミが
「族長、なにを怒り狂っておるんだ、外にまで聞こえるぞ、大きな声がチュー」
ごめん、チューはわしが脳内で付け足しました。その方が会話がわかりやすいと思って。
「なんでもないわい。そっちの積み下しは終わったのか。」
ゲタンはまだ怒り修まらずっという感じだが、どかりと音を立てて座った。
「まあだいたい終わったが、ひとこと断っておくことがあるでチュー。今回からこちらの交易品は今までよりも少なめになるでチュー。」
「なに、物々交換の比率は最初に決めてあっただろう、何で少なめになるんだ。理由は?」
「わざわざこちらが出向いてやってるんだ、輸送費、盗賊対策の護衛の人件費などなど、お金がかかる事がいっぱいなのでチュー」
「けっ、だんだん人の足下みるようになりやがって、これだから城下町の商人は信用ならねえんだ」
「いやいや、私達商人も慈善事業じゃないんでね、利益を出さないと行けないんで、申し訳ないですチュー」
全然、悪いと思っていない態度じゃな。ニヤニヤ笑いながら謝るネズミに嫌悪感が走る。
「まあ、それでいいわい。後の細かい事はジャコと決めてくれ。ところで、後ろの優男はだれだ?見ない顔だな。」
「ああ…まあ、見習い商人って感じでチュー」
「見習い商人のスペードと申します、以後お見知りおきを。」
ニコリと人懐っこい笑顔を見せた男は、見た目は華奢だが、どこか品のある佇まいじゃ。
あっ冗談ばかりで忘れてたが、例の準備をしないといかんかった。目配せでセイムさんに用意を促す。セイムさんがわしの合図に気がついて準備に立ち上ろうとすると…
スペードが目を見開き、いきなりセイムさんの前に立ちふさがった。
「あの…あなたは?あなたのお名前は?」
「えっあの、その、セイムと申します」
とまどいながらも、答える。
スペードはいきなりセイムさんの手をにぎり、凛とした表情で言い放つ
「セイムさん、わたしと結婚してください!ひと目ぼれしました。ピピピときました。」
「「「「ええええええええええええええ」」」」
一同驚いた。
「へっ…へぴょ〜〜〜ん」
族長ゲタンからは本日2度目のへぴょ〜〜〜んいただきました。




