第33話 甘い水
ヌル族の村の入り口には両脇に槍を構えた若い森の民が片側10人ずつ計20人が待ちかまえていた。
「ほう、すごい歓迎ぶりじゃのう。わしらの為にか?」
その一番前に待ちかまえる青年を見て、セコスが走り寄って声をかけた。
「よう!お出迎えご苦労さん、ジョコ」
「おうセコスか、誰がお前を出迎えるかよ。お前が来ることさえ知らなかったぜ。」
「そうなんだ?じゃあ誰を待ってるんだよ」
「それはだな…いや、もうすぐお客が来るんでな、ちょっとどいててくれ」
ジョコとセコスは仲がいいのか、歯に衣を着せぬ物言いじゃ。
「ちぇわかったよ。また今度な、いい道具が手に入ったんで見てくれよ」
「そうか、それは楽しみだな。お互い暇な時にまたゆっくりな」
と言って別れ、わし達はそのまま村の中央に進んだ。
歩きながらセコスが語る
「あいつは、ジョコっていうんだ。俺より1つ年上だけど、話のわかるおもしれえやつだ。
同じ狩り部隊のリーダーとして気があって親しくしている。」
本当に現場同士は仲が良いみたいじゃ。部族同士の交流が無かったのが不思議なくらいだ。
それより、お客って誰じゃろう。わし達以外ということは…
と考えているうちに、中央広場前の奥の大きなログハウスに到着した。
ここが族長ゲタンの家らしい。
「おおい族長ゲタン、ネル族の副族長、ジューローが来たぞい!」
と礼儀もへったくれもなく、友達のように呼びかける。
家の入り口に奥さんらしい女性が現れ、出迎えてくれた。
「どうも遠路はるばるお越しくださってありがとうございます。生憎、主人は用があり出かけておりますが、すぐに戻ってくると思いますので、中にておくつろぎください。」
上品そうな奥様だ。息子のゲフンは誰に似たんだ…
あっゲタンしかいないかwwww
中に入る時に奥さんはセイムさんに声をかけた。
「セイムさん…この度は息子が迷惑をおかけしました。母親としては、ぜひともセイムさんのような娘さんに来て欲しかったけど、それも叶わず終わってしまって残念だわ」
セイムさんは申し訳なさそうに頭だけ下げた。
中の部屋は広かった。10人と荷物が入ってもまだ広々だ。
部屋にはゴザのようなものが一面敷き詰めてあり、
しばらくごろごろ寝たり、ごろごろ寝てみたり、ごろごろ寝てみたりしていた。
20〜30分ぐらい待ったか、
「がはははははは、待たせたな」
豪快笑い声と共に、ゲタンが笑顔で悪びれもせずに入って来る。
「待った、待った。待ちくたびれて、ジジイになってしまったわ」
と冗談で返す。
「何を言う。元々墓場に足つっこんどるジジイのくせに!」
と2人で見合って笑う。
アットホームや…アットホームな会話や…
「すまんな、ちょっと所用で家を出とったわ。疲れたやろ、この水でも飲んで体やすめるといい」
すると奥さんや女性2人が出てきて、1人1人に水を配る。
その水を飲むと…ほんのり甘い。
他のみんなを見ると驚愕の顔をしている。
驚いた顔をひととおり見渡すとゲタンは満足したように言う。
「どうや、驚いたやろ、水が甘くて」
確かに、この世界に来て甘いものは果物の甘さぐらいで、他にはないな。
もしかして、この甘さは…
「この水にはな、砂糖が入ってるんだ」




