第31話 ちょい悪ノリ大会
暑苦しい…ああ暑苦しい…
あの髪を振り乱して走ってくるブサオ…もとい、族長の息子ゲフン…。
横を見るとリイナが眉間にしわを寄せ、わしの左腕にぎゅっとしがみついている。
可愛い…ああ可愛い…
さすが“カワイーナ”の称号を持つ女の子じゃ。まあ、わしがつけた称号じゃけどね。
ちなみにわしはロリコンじゃないぞ。孫を慈しむような可愛いじゃからな。勘違いするなよ。
などと思っているともう30mぐらい間近に迫る。
当事者のセイムさんは兄のセコスの背後におびえながら隠れる。ガクブルじゃ…。
セコスは両腕を組み、露骨に嫌そうな顔をしている。
わしとセコスは、目が合うとにっこり微笑みながら手を繋ぐ。恋人つなぎのように指を絡ませてじゃ。その繋いだ手を、向かってくるゲフンののど元めがけてラリアットのように全力でかます。
ゲフンはのど元を支点として、まるで鉄棒で逆上がりするかのようにぐるんと1回転した。
「ぐぼおおおおおあああああうう」
と獣のような声をあげ1回転した。
倒れず、そのままのどを支点としてもう1回転した。
2回転だ。
連続逆上がりだ、逆にすごい。なにが彼をそうさせるのか。
もしこれがN○Kのプロフェッ○ョナルなら、エンディングのスガシカ○さんの歌を聞きながらスローモーションでコメントがあることだろう。
「ん〜僕にとってのプロフェッショナルは絶対にあきらめないことかな」
ゲフンかっこい〜〜〜〜。
いや、悪ふざけはこれぐらいで、泡ふいてるし。ちょっとひっぱりすぎたかな。このくだり…目がさめたゲフンがセイムさんに向かってすっくと立ち上がり
「おで、待ってた。セイム待ってた。」
周りを気にせずセイムさんに一直線じゃ。彼の目にはセイムさんしか見えていないようじゃ。見かねたセコスがスブムの前に立ち、妹の代わりに言う。
「お前の親父に聞いてね〜のかよ。セイムとの婚約はなしになったんだ。いや、なしになっていなくても、妹がこんなに嫌がっているんだ、兄としても絶対に賛成しないけどな。」
「おで、聞いたけど、セイムのこと好きだ。嫌がられても振り向いてくれるまで好きだ」
「ごめんなさい」
スパっと言い放つ。
ゲフンがしゃべっている途中でも
「お断りします」「無理です」「嫌いなんで」「キモ」
スパパ、スパパ言い放つ。切りまくりじゃ!
普通なら3枚におろされているだろう切れ味にもゲフンは気にしない。メンタル神話級だなこいつ…何を言ってもへこたれないゲフンに周りもうんざり諦めモードじゃ…
それを見かねて、わしがゲフンに声をかけた
「上等だ!勝負じゃ〜〜〜〜〜〜〜」
いきなり、
唐突に、
おもいっきり叫びました。
コピペじゃないよ。
そう言ったわしに初めてゲフンがこっちを見た。
「あっ、おまえあの時の…」
今気づいたのかよ。どんだけ猪突猛進だ。アウトオブ眼中なのか。つまり、見えてななかったという事か、このわしをおおおおお。
「クリリ○のことか〜〜〜〜〜」
と大声で吠えた。
みんなにポカ〜〜ンされた。
悪ノリし過ぎたか?
ちょっと恥ずかしい。




