第30話 ヌル族の地へ赴く
今日がゲタンとの約束の5日目だ。朝からヌル族の集落へと向かっておる。
同伴者は…ボディーガード兼族長代理として長男のセコス。まあわし1人でも大丈夫なんじゃが、一応ネル族の責任者扱いという事で。
そして、妹のセイムさんも同行している。婚約破棄を息子のゲフンにはっきり告げてけじめをつけたいとの事で同行を許した。
本当は族長のスブムを同行させるつもりだったが、形だけの族長であったとしても村を空ける事は言語道断とせつせつと、とつとつと、とぅるとぅると毎日わしの枕元で延々と言い続けてうざいのでしょうがなく自宅待機という事にしておいた。
族長ゲタンに会いたくないだけじゃろ!おまえ。
あとは、わしの右腕、レイク。そして左腕にリイナがぶら下がっておる。
本当に2人ともぶらさがっておる…
引率の先生か、幼稚園の引率のおじいさんか、わしゃ!
と心の中でツッコム。
本当はレイク直属のテヘペロ部隊も連れて行くと言い張ったのじゃが、なにぶん幼い子供でもあるし、そんなにゾロゾロ付いてきてもらっても困るし、テヘペロをヌル族で、広められても困るし、
…絶対、流行らせるなよ!
レイクに称号を取り消すぞ!と脅したら、すぐに子供を解散させてくれた。
…使えるな称号剥奪!
称号ひとつで、子供達の中で骨肉の争いが起るな…こりゃ。そうなると恐いので本当に剥奪はやめよう。
あとは色々荷物持ちにセコスの部下5人を含めた合計10人ぐらいの一行で部落に向かっている所だ。結構歩いたつもりが、あと半分くらいだとのこと。だいたい歩いて2、3時間らしい。
ネル族とヌル族はいがみあっていたとはいえ、交流もないことはないらしい。
セコスと部下は獣の協同で狩りや毛皮、食べ物の物々交換などで何度もヌル族の村へ行ったことはあるとの事。
いがみ合っていたというのも一部の者達の意地の張り合いの様なもので、森に住まう者は仲間という意識も強いので、交流こそ進んでしないものも特に嫌っているというほどでもないらしい。
この国では人種は1つと考えられている。ただ、住む場所により区別されているだけで。肌の色、言葉、容姿など一緒らしい。
ネル地域に住むからネル族。ヌル地域に住むからヌル族。東の裕福な地域はナル地域に住むからナル族。ケル地域に住むからケル族。だいたいこの4地域に分かれて
4部族が住んでいる。
唯一、例外が王族の存在である。
ちょうどこの国の中央に石造りの王城を構え、その王城を囲むように城下町が栄えている。彼らにしたら、森に住む民は蛮族なのであろう。
森の民に税などはないらしい。
などと少しこの国のについて歩きながら話していたら、もう村まで1kmもないところまで近づいたようだ。
ふと見ると、村の方からなにやら砂煙があがってきた。目を凝らして見ると何かが走ってくる…砂煙の中心に点のような物が徐々に人の形に見えてきた。
ん〜〜〜と目を細めて見てたがだんだん大きくなるにつれてその外見があらわになってくる。
わしと、セコス、セイムさんは4人同時に、はああああっっっっ〜とため息をついた。どんだけ目がいいんだコイツ。獣か!
「セイムウウウウウウウ〜〜〜〜」
とものすごい髪を振り乱して爆走してくる男…ゲフンだ…。
これはセイムさんじゃなくても引くわ…きもっ!




