第26話 隠れん坊
「おもしれーじゃねーの」
セコスが怒りの感情をあらわにして、わしの挑発に乗ってきた。
「ジジイの挑発に乗ってやるよ。それで、何で勝負するんだ?勝負を受ける側だか、ジジイにハンデをやるよ。そっちの得意分野でいいぜ。」
と怒りながらも、老人相手に大人げないと思っているのかこちらに有利な条件を振ってくれた。
若いのう…だが素直な若者は好きじゃよ。
「そうじゃなあ、力勝負でもいいんじゃが……ここは“隠れん坊”でどうじゃ?」
「なんだ、その“かくれんぼう”というのは?」
「ふむ、ある国で延々と続く由緒正しい生死を別ける戦いじゃ。
ルールは簡単じゃ。まず、隠れる側の人とその隠れた人を見つける“親”に分かれ、親が100数えるうちに人は隠れるのじゃ。
その人を見つければ親の勝ち。親が見つけれなければ人の勝ちじゃ。
とある国ではその“隠れん坊”により国民全員が隠れてしまい、その間に近隣諸国が攻めてきて国が滅びびてしまった事が有るとか、無いとか…たぶん無いんじゃろ〜な〜ぐらい恐ろしい逸話を持つ禁断の戦いじゃ。」
わしらを取り巻く森の民から口ぐちに
「そんな恐ろしい戦いを…」
「やめた方が良い…」
「その滅んだ国民は全員アホじゃ、アホ以外の何者でもない…」
などと不安の声が聞こえる。いや、最後は関係なくね?
「ふふっどうじゃ、おじけづいたか。今ならまだ断われるぞ。」
と意地悪くセコスに言ってみる。
「何言ってるんだ。俺はこの狩猟部隊のリーダーだぜ。そんな事ぐらい全然
怖くないぜ。上等だよ。その隠れん坊とやらで勝負しようぜ。
ただし、初めは俺が隠れさせてもらうぜ、いいな。」
と不適な笑みを浮かべる。
「よし、わかったそれでいい。早速始めるかのう」
「ジューロー様大丈夫ですか?」
と族長が心配してくる。
もちろんわしの心配ではなく、息子の心配であろう。
セレブさん、セイムさんも同様にわしの顔をのぞき込むが、わしは大丈夫じゃの合図としてウインクをする。
…あっ全く伝わっておらん。…まあよい。
「セコス、わしが100数える間に隠れるのじゃ。“もういいかい”と聞くので、まだ隠れていない場合は、“まあだだよ”と答えるのじゃ。
隠れきった場合は返事はしなくてもよいぞ。まあ細かい事はこれだけかな。何か質問はあるかいの?」
「いや、特にないな。わかったぜ、それでいい。ジジイの鼻をあかしてやるぜ!」
と笑って、仲間を見る。
「よしそれでは、只今よりかの国禁止指定競技隠れん坊を始める〜〜〜。
何人も禁を犯すべからず!」
とちょっと大げさなノリで言ってみる。
ものすごい大歓声に包まれ、その振動で身体が震える。
毎回思うけど、森の民ってノリがいいよね。娯楽が少ないからかな?
「それでは、はじめ〜〜〜い!
い〜ち、に〜い、さ〜ん…………………」
わしは目をつむり、背を向けゆっくりカウントを開始した。
それを合図にセコスたち若者数人が反対方向に駆け出す。
セコスが目配せをした数人がバラバラの方向に散る。
「くっくっくく、これで“まあだだよ”を俺の仲間が違う方向から言ってもらう事によって、ジジイに居場所を悟られないようにごまかせる。まあちょっと卑怯な気がするが別に違反じゃないよな。フフフッ」
遠くから62のカウントが聞こえる。
まず、隠れるのは同僚の家の寝室の上にあるロフトのような場所。ちょうど人が1人隠れには最適な場所だ。ここなら当分は見つかるまい。
そう、まずはなのだ。もし見つかりそうになったら、どんどん隠れ場所を変えていけばよいのだ。
バレなければいいんだぜ。ジジイが泣いて俺を見つけることができないと懇願するまでやってやるぜ。隠れきってやるぜ〜〜〜。
ジジイの吠え面を見るのが楽しみだ。
※※※※
きゅうじゅう〜はち、きゅうじゅう〜きゅう、ひゃ〜く!
“もういいか〜い”
まあだだよと遠くから聞こえる
また、しばらくして声をかける
“もういいか〜い”
まあだだよ。今度は反対から聞こえる。
ん〜〜〜なかなかシュールだな。異世界でかくれんぼ。
また、しばらくして声をかける
“もういいか〜〜〜〜〜〜い”
………………………………………………………
なにも聞こえない。どうやら隠れたようだ。
わしは、成り行きを見守っておるスブム一家に声をかける
「さて、みなさん……そろそろ昼ごはんにしようかの。」
みんな目を白黒させてわしを見る。えっ探しに行かないの?という顔じゃ。
だって探す気全くないもん。わし。




