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第253話 浄化

残り6話

 「最後にいいか?モベ。もしわしが、このシステム…山田卓の世界で有資格者が試練を合格したら、この世界はどうなるんじゃ?」


 「…全部消えるだろうな。この世界は山田卓の創造した世界だから、次に任された有資格者が新しく自分の世界を1から創造することになるから、すべて無に帰すだろうな。」


 「何じゃと…」


 「そんな心配しなくても合格者なんて頻繁には出てこない…100年、1000年、もっと先かもしれないし…。だが、合格者が出なくても創造主なんだから自分の気分次第でいつでも消せるぞ。」


 「気分次第でか…………」

 ジューローは考え込む。それを見てモベは


 「…………しょうがねえな。本当はこんな事言いたくないが…ジジイ、お前はもうとっくに超えてるよ。」

 「は?何が超えてるだと、そうじゃわしはもうとっくに生理はあがっておるぞ。」


 「女子か!ジジイと思っていたらバアさんだったのか!」


 お約束通りツッコミを入れてくれたモベが話を続ける


 「ジジイはとっくに山田卓を超えてるよ。単なる1、資格者でしかないのにな。」

 モベは黙ったままじっとわしを見つめる。


 「もう時間だ。最後にジジイとのおしゃべり楽しかったぜ。次はもう無いだろうが、今度会った時には日本酒でも飲みながらじっくり話したいもんだな。」


 モベの体が透け始める。


 もともと本体から切り離された残留思念のようなものじゃからここらへんが限界か…。


 モベが薄く透けていく………全て消える寸前にモベは

 「ジジイお前の好きにやってみろ。それだけの力がもうお前にはある!」


 それだけ言い残すと一瞬弾けるようにフッと輝きすぐに消えていった。


※※※※


 森の中は激しい雨が降り続く。

 

 長い事雨に打ち付けられたからであろう、所々でこぼこになった地面に大きな水たまりができる。


 広場のような場所に森の民が100人以上、黒い服装をまとった男達が50人、王城からの兵士が50人以上、計200人弱の人々が、泥にまみれて水たまりに浸かっても身動き1つしない。


 その上空には黒い霧の様なものがとぐろを巻くように渦巻き、倒れている人々は黒く濁った膜のようなものが覆いかぶさっている。


 その異様な光景の中1人の男がゆっくりと立ち上がる。


 その男は身長180cm位、すらりとした痩せてはいないが程よい筋肉がつき、腹筋も8つに割れている。その男が両手に持つ縄のような物は次第に光を放つ。段々と段々と神々しいばかりの光を放つ。


 その縄は倒れている森の民、黒服の男達、兵士分け隔てなく1人1人に繋がっておりよく見ると意思を持ったヘビのように高速に動いて、流動している。そのスピードが早くなるにつれて光も増しさらに発光しだす。


 すると人々の体から、覆われた黒い膜がボロボロと剥がれ落ちていくのと反対に白い幕が体を覆ってだんだんと発光していく。

 やがてその発光も勢いを増し1人1人が光輝き半透明にみえていく。


 どんどんどんどん光が大きくなり、次第にその広場全体を覆い尽くし、上空の黒い霧の様なものまで達したと思ったその時!


 今までどしゃ振りだった雨雲がふっとび、天からまばゆいばかりの陽が差し込む。それはあたかもその黒い霧を優しく包み込むように、下からの発光と重なり黒い霧が蒸発していく。


 その光は1つに繋がって成層圏から…いや、もっと上から降り注いでいるのではと思うぐらいの神々しいまでの陽がオランウータン村の広場にだけに差し込む。


 しばらく差し込んだ陽がフっと瞬時に消えたと同時に、その広場で唯一立ち上がった男が膝から崩れ落ちて地面に突っ伏した…。


※※※※


 「うっうう、い…いったい…。」

 一人の男が目を覚まし起き上がった。


 その男は現ペラスゴス国の王、アルゴス二世だった。


 王の格好のままでは目立つので一兵卒の格好をしてスペード討伐にシスパと共に同行したのだ。スペードの最後をこの目で看取るために。


 アルゴス二世は後悔していたのだ…スペードを助けた後、何も構ってやれなかった事を。あの後先代の退位とともに自分が王に即位するという事で忙しいあまりに構ってやれなかった。もちろん金銭面での援助はしていたが…7年間地獄を見続けて来た姉の息子を3年の間、他人に任せ、ないがしろにしてきた事を後悔していた。


 怠惰な生活をおくっていたのも報告で聞いてはいたが何もしなかった。このまま地獄の傷を癒す為に生涯を閉じようと何も言う気などなかったのだ。


 それが、商会を開きたい。森の民との専売を許可してくれるだけで他の支援などはすべて断ると言い出した時には驚きはしたが、傷を克服してくれたのだと内心は喜んでいたのだ。


 わしが現実から目を背き、勝手にそう思い込もうとしていただけだったのかもしれない。


 こんな怪物になるまで見抜けなかったのだから…。傷を克服するどころか国家転覆を計る程に病んでいたスペードを…。ただ愛情を欲していだけだとしても。


 俺は10m先に仰向けで倒れているスペードを確認して、まだ思うように歩けない体を引きずり近づく。

 そして眠っているかのような穏やかな顔を見せるスペードの頬に右手でそっと触れる。

 

 姉の面影を残すスペードの顔を見てふっと昔を思い出し笑いった。

 そして頬に添えた手を離し、腰に手を伸ばし短剣を強く握りしめた。

 そしてスペードに跨がり短剣を両手で握りしめて頭上まで振りかぶる。


 そして最後に一言…

 「生きたく無い者を助けた、愚かなわしを許せ」


 と、つぶやいて短剣を胸に振り下ろした。


 

 

次は21時投下します

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