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第246話 最後の戦いへ

 どうやらシスパ、いや王城はスペードを前々からマークしていたらしい。予言を信じて、森にも密偵を放って常に監視していたらしい。

 そこに昨日スペードが森に現れ、森の民を襲ったのを確認して王城から兵を少数精鋭で進軍してきたらしい。そのついでにカーンとマブシも途中拾って急行して現在にいたるという事だったのじゃ。


 そして再びわしはスペードと対峙する。


 「もうおしまいじゃな、スペード。お前の手下もやられ、人質も介抱したぞ。それとも…まだ何かあるのか。」


 「………………………………。」

 スペードは黙ってわし等を睨む。


 しばらく沈黙が続いた後、スペードが口を開く。


 「昔…いつだったか…どん底にいた時に手を差し伸べてくれた人がいたなぁ………………だが俺は助かりたくなかった。今思えばあの時に死んでいたんだ、オレは………。」


 そう言いながら、後ろから小さな刃物を取り出した。


 身構える皆を余所にスペードは最後に一言、言い放つ

 「これは、助けなくていい命を助けたお前達の罰だ!」


 スペードはそういうと刃物を自分の胸に突き刺す!


 ブシューーーーーーーという何かが吹き出すような音とともにスペードがスローモーションのように仰向けになって後ろに倒れた。


 シスパがその吹き付けられた何かを拭う…顔を拭う…。

 それは血ではなかった……………………


 ……………それは真っ黒い何かだった。


 それは液体ではなく…いや、液体のような物体といったほうがいいのか。

 空中にうごめく黒い流動的な何かだった…。


 「うわああ、なんじゃこれ!」

 シスパがわめく。その黒い何かはゆっくりとシスパを頭からつま先まですっぽり覆ったのじゃ。


 「ううう…取れない。ヤバイ!」

 「何ダスか…これは。」

 続けてあっという間にマブシとカーンも黒い何かに覆われる。


 その黒い何かは次第に大きく膨らみ、後ろに控えていたシスパの部下やスペードの裏部隊、倒れている森の民すべてに覆いかぶさる。


 ところどころで襲われる喚声かんせいやうめき声が聞こえる…。

 次第に動きが納まり辺りは静寂に包まれた…。


 「何じゃ?これは…」

 

 わし以外のすべての者が黒い何かに覆われ、あたり一面真っ黒になる。

 どうやらわしには神素があるので黒い何かに覆われる事はなかった。


 わしは倒れているスペードに駆け寄り問い正す。

 「何じゃ、お主何をしたのじゃ!おい、おい。」


 スペードは死んでおるのか、気絶しておるのかわからない。先程刃物を刺したように見えたが胸には傷1つもない…。その刃物のような物も消えてなくなっている。


 その黒い何かは空中でどんどん渦を巻きながら大きくなっている。

 時間と共にどんどんと大きく…。


 その黒い何かは1つの意思を持っているかのように渦を巻いて中心へと集まり、空を黒く覆い尽くす…。


 〈…声が聞こえる。みんな死んじゃえって言ってるよ。〉

 リイナがわしに話かける。


 〈強い憎悪なんだけど…小さい子が悲しげに叫んでいるように聞こえるわ。〉


 そう、たぶんこの黒い何かは悪意ーーー憎悪の固まりなのじゃろう。

 意思を持った固まりというのかな…。


 「どうすれば、この憎悪は消せるのじゃ?リイナ」


 〈たった1つだけ方法はあるわ〉

 もったいぶった言い方をする。本当に1つしかないのか?2つぐらいないのか?


 〈まず両手を天に掲げてこう言うのよ“みんなオラに元気を…”〉


 「ぶーーーーっ、元気●?まさかのここに来てDBネタぶち込んできた?」


 〈冗談冗談。〉


 「冗談言っていい時と悪い時あるよね?空気読もう?ねっ?」


 〈えっ、今ひょっとして……〉


 「ひょっとして…じゃなくて今ダメよ!絶対今冗談いっちゃダメな時よ!」


 〈すみません。ちょっと私アレで、コレなもんで…。〉


 「全然伝わらない!アレとかコレじゃ全然伝わらないよ!

 …さっきからわしオネエみたいなしゃべりになってるから!

 ジューローだよ。カギカッコはジューロのセリフだよ!」


 〈冗談冗談。さっきから貯めてたの。もうちょっとでいけるよ!〉


 「何を?何貯めてたの?説明してくれないとわかんないのじゃ。」


 〈“神素”つまりジューローのエネルギーを使って、あの負の物体を打ち消すの、相殺よ。簡単に言うとプラスマイナスゼロみたいな。〉


 「ほほう、そんな手があったのか。なかなか良い手じゃないか。」


 〈でも使いきっちゃうとジューロー死んじゃうの。〉


 「えっ死んじゃうの?え~~ゼロってそうい事?ゼロ=死ってこと?

 プラス=神素で、マイナス=憎悪で、ゼロ=ジューローの死って言う事?……なかなかうまいこと言ったなお前」


 〈死ぬっていうのは極論だけど、負けるとそうなるよ。〉


 「えっ戦うの?わしが?今から“神素”をこうババ~~ンとぶつけて、眺めているだけで終わるんじゃないんだ…ふ~~ん。」


 しばらくわしは考える。

 そして出した結論は…


 「貯めるのやめ~~い!このまま見なかった事にするのじゃ。」


 〈ダメだよ、このまま散ってもらわなくちゃ!〉


 「こわっ今散るっていったじゃん。散る=死ぬってことでしょ!こわ!」


 〈今はまだ大丈夫だけれど、このまま放おっておいたら、黒い憎悪に包まれたみんなは次第に浸食されて死んじゃうんだよ!いいの!〉


 「…わかった。別に死ぬと限ったわけじゃないんだろう?勝てばいいんじゃ!勝てば!のう?」


 〈……うん。〉


 「なに、その間?今間があったよね?なになに?気になる~~」


 〈…ん~詳しい事はやってみないと分かんないんだけど、私の予測では“神素”使いきっちゃたら、今の若い姿ではいられないかもね…多分。うん、またお爺ちゃんの姿になるぐらいだから大丈夫!〉


 「よし!諦めよう!今回戦うのは潔く諦めよう!」

 わしは堂々と胸を張って答えた!


 〈…………なに言ってるの?〉


 「わしだってモテたいのじゃ!やっと念願叶って若い体…イケメンになってこれからブイブイ、エイエイ、プスプス言わせたかったのに…せめて1度だけ1度だけでも…。」


 〈何言ってるの!このままジューローが戦って勝たなかったら、この国全てが黒い憎悪に覆われてみんな死んじゃうんだよ!モテるどころじゃないでしょう!〉


 「うう~~ん、確かにそうじゃ。そうじゃが…欲望に正直なのじゃわし!」


 〈威張って言うことか!むしろ恥ずかしいセリフ!〉

 などと二人で…まあ脳内でじゃけどもわいのわいのやっていた。


 黒い何かが大きくなるのが一段落したのか、動きが鈍くなってきた。

 わしはリイナに声をかける。


 「…もう貯まったか?」


 〈うん、いつでもいけるよ。〉


 本当はもう心は決まっていたのじゃ…。

 怖く無いって言ったら嘘になるのじゃ。だから少しでも紛らわそうとアホな事を言って緊張をほぐしていたのじゃが…


 わしは黒い憎悪に覆われて倒れているセイムさんに近寄り、頭をなでる。

 そして、セイムさんの頬を左手でそっと添えて触る。


 温かい…こんな時に不謹慎じゃが、最後になるかもしれないからセイムさんの温もりを感じておきたかのじゃ。

 さすがに今はどさくさにまぎれて、あんな事やこんな事をするつもりはない…

 がっつりセクハラをするつもりはない。

 正直したくないっていったら嘘になります!


 セイムさんから離れ、黒く覆われた上空をみやる。


 「よし、それじゃあパッパッとやっつけてみんなを取り戻すかのう。」


 わしは最後の戦いに向かう。


次は20時予定です

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