第245話 スペードの切り札
今日は3話投下します
「それがお前の本当の姿だと……また俺の能力で貴様を…」
スペードが潰されていない方の腕で指をパチンと鳴らした。
しかし、わしには彼の能力“幻想偏頗”は効かない。
スペードはパチン、パチンと何度も指を鳴らす。
「くそっ、なぜだ!なぜだ!なぜだ!くそっくそっくそーーー」
スペードは声を荒げ、落ちていた金属の棒を拾い、わしに向かって鋭利な先を突き刺したり、柄の部分で殴打してりしてくるが…もちろんわしには効かない。
今のわしには、物理的な攻撃はもとより精神的な攻撃も全て効かない。
まるでスーパー○リオのスターを食べた時のような無敵状態なのじゃ…。
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ええええええ~~~~なぜここでマ○オで例えた?唐突すぎない?
他に例えようあったじゃろうに…まあ、分かりやすいからよいか。
わしを殴り続けていたスペードが、息をきらし棒を投げつける。
落ち着いた所でわしは声をかける。
「森の皆をどこにやったのじゃ?殺してはいないのじゃろ。」
「うるせえ…これは使いたくなかったが…しょうがねえ。ピィーーーーィイ」
スペードは隠し持っていた笛を吹いた。
すると、顔を布で隠した男達がバラバラに森の奥から出てきた。
1人1人森の民を人質に従えて…。
前にエメリさんやセイムさんを襲った男達の集団じゃ。スペード商会の裏部隊…約50人ぐらいおる。いつの間にこんな人数を…
「ゲタン、ジョコ…エメリさんに、セイムさん!」
呼びかけても誰1人として返事はない…。皆、目が虚ろで体もダラリと垂れ下がっている。たぶん皆スペードの幻術の中なのであろう。
「お前に攻撃が効かないのならしょうがない…村人をお前の目の前で1人1人殺していく。いくらその神素とやらに包まれてあらゆる攻撃が効かないお前でも、親しい人が殺されていくのに耐えられるかな?」
「…なにが目的なんじゃ…お主は。」
「初めに言った通り…俺の目的は、お前の悲しむ顔、苦しむ顔が見たいだけだ。」
「……どうしてお主はそこまで執拗に…まっまさかわしを…好きなのか?性的に?
小学生の男の子が好きな女性をいじめる的なやつか?」
思い切って聞いてみた。
こんな状況で勇気を出して聞いてみた。
「ふん、こんな状況で…随分余裕なんだなジューローは。俺が本当に殺さないとでも?残念だったな、今まで殺さなかったのはお前が死んだ後、1人1人いたぶって殺すためだ。しかし先にお前を絶望に追いやる為に利用できるんだ…殺さなくてよかったよ。」
そう言うとスペードは1人の男に目配せをしてわしの前に連れてこさせる。
セイムさんじゃ…セイムさんを連れてこさせた。
セイムさんは両手両足を縛られ、幻術にかかっておるのか目が虚ろで、生気のない顔をしておる。
そんなセイムさんの首もとには刃物が突きつけられており、いつでもスペードの合図で殺せる状態を取られていた。
「…お主はセイムさんの事を好いておったのではないのか?」
「だから殺すんだろ。当たり前じゃないのか?好きな人を殺すのは。」
「逆に生きていて欲しいと思うものじゃないのか?普通は。」
「…じゃあ、俺は普通じゃないんだな。どうせ生きていてもいずれ死ぬんだ、早いか遅いかだけの違いじゃないのか?まあジューローを殺した後には、結局皆殺しにする予定だけどな…。」
「…その予定はあくまでも予定じゃ。キャンセルも出来るぞ!」
「じゃあ予定を確定してやるよ!やれっ!」
怒気を含んだスペードの命令に、男は躊躇なく刃物をふりかざしセイムさんの胸へーーーーーー
「ぎゃああああああーーー」
その男が悲鳴をあげる。
地面に突っ伏し、苦悶の声をあげるその男の手の甲には矢が突き刺ささっている。
その男の悲鳴を合図にスペードの手下に、森から現れた男達ーーー統率された男達が襲い、森の民を1人1人解放していった。
もちろんセイムさんはすぐにわしが確保し、介抱した。
スペードの裏部隊を取り押さえながらその真ん中を1人の男がこちらに歩み寄ってくる。
「待たせたなジューロー。」
シスパだった。
王城の兵士長シスパは今まで見た事もない立派な防具を身に纏い、右手には量産型ではない荘厳な飾りのついた剣を持っていた。
仲間が捕らえられておるのにスペードは逃げもせず、その場で苦々しい顔して立っておる。
シスパが近づきスペードに話かける
「やはり貴様だったかスペード…。なぜジューローを…ジューロー?…誰お前?」
あっ、そうじゃったわし神素の影響で若い男の状態じゃった。
今の今までわしを年寄りのジューローじゃと思って話しかけてきたシスパが二度見した。
なあ、ジューローっえっ誰?あれ?誰?恥ずかし~~わし今までジューローだと思って話しかけてたのに全然知らない人だった…わしめっちゃ恥ずかしい!
という顔をしていた。
わしはさりげなく声をかける…
「初めまして。」
「……とうとう追いつめたぞスペード。」
あっわしを無視した。今までのは独り言だったという体で逃げた。
顔が真っ赤じゃ。そういう不器用な所は変わらんな…。
すると遠くからカーンとマブシも走って寄って来た。
「ジューロー様~~~~~。」
二人もわしの近くに寄って来て声をかけてきたが…
「ジューローさ…えっ?誰?」
ジューローだと思って声をかけたら見知らぬ男だったので二人は…
「ジューロー様~~~?どこ?どこに隠れているんですか?」
物陰や、木の下、穴の中など、居るはずもないような所を探すフリをする二人。
それでも何も言わずに二人を観察していたら、すぐに探すフリを止めて
「スペード…まさかお前だったダスか…。」
わしを無視するパターンに変更じゃ。
まさかのかぶりじゃ!シスパとリアクションがかぶってしまったのじゃ。
シスパをみると…あっめっちゃ笑いこらえておる。
吹き出しそうなのを堪えて顔まっ赤かじゃ!
ついさっきまで自分もああだったのに…。
しょうがないのでわしから名乗り出る…
「カーン、マブシ、シスパ、わしじゃよ。ジューローで合っておるよ。」
3人は驚いた顔でこっちを凝視する。
目をひんむいて凝視する。
口もパクパクして何かいいたそうじゃが…
「まあ、詳しくは後で。その前にやらんといかん事があるしのう。」
そして再びわしはスペードと対峙するのであった。
次は18時予定です




