第243話 復活の白
オッス!オラジジイ!前回で復活したのじゃが、どうして復活したか分かりやすくするためにちょっと少し前に戻るのじゃ。
※※※※
目の前のスペードがわしに一言
「最後のお別れです。」
にっこりと笑ったスペードの顔が最後の記憶じゃった。
わしは深い深い闇に落ちていった。
すーーーーーーっと流れるような感じと言えば伝わりやすいかのう。
すっすーじゃないぞ!ずーっとすーーーーーーーーーーっじゃ!
わかるかな~~文字だとわかりづらいかな~~。
(あかん!これヤバイ奴や!死ぬ奴じゃ!)
なんて思っても全然意味なし。だってヤバイも何も死んだ感覚だもの…。
小林十朗で死んだ時も何かこういう感じじゃったな…。
ああ、あの世なんてないんだな…どこまでもつづく闇しかないんだなって。
まあ、そのあとミチとミカの部屋に連れてかれるんだけど…半ば強制的に(笑)。今回はないのかな~~ひょっとしてまた呼ばれるんじゃないのかな~と密かに楽しみにしていたのに、そんな気配まったくない…がっくし。
一応呼びかけてはいるんだよ、さっきから。おーいミチミカ~~~って。そもそも口という器官がないから呼びかけも出来てないけど。この状態は心で思うって感じなのかな?
不思議だ…。
さっきからず~~~~っとわし意識あるけど…どうなってるの?
前回、十朗の時なんかは目をつむった瞬間に意識が飛んだけど…。
今回は少し余韻があるな~~ぐらいにしか思っていなかったけど長くね?
でもず~~と下に落ちてく感覚は止まらないんですけど。もう真っ暗通り越してドス黒いじゃなくて檄ドス黒スという造語を考えてる暇があるぐらいまだ意識あるんですけど?
えっまさかこれ地獄?無限地獄じゃね?一生っていう言い方もおかしいけどずっと意識を保ったまま漂いつづけるんじゃね?それもまあまあ恐怖だな…。
生まれ変わりとかないのか?
今度こそイケメンに生まれ変わって小さい頃からチヤホヤされて育って女の子にモテモテのハーレム展開を望む!直訴中!
なんてしょーもない事を考えていた時期もありました。
〈……ジューロー…ジューロー〉
わしを呼ぶ声が聞こえる。
最初は幻聴…気のせいかと思っていたので無視していたのじゃ。
そうしたら…だんだんと言葉が荒く…切れ気味になってきた。
〈聞こえてるんだろ!無視すんな!ジューロー…ジューロー〉
最後はまた優しくなったので返事を返す。
「誰じゃ、わしに話かけるのは?」
〈やっぱり聞こえてましたね……さよ~なら~~~~~〉
「いや、帰るなよ!謎のまんま帰るなよ!」
〈冗談ですよ。ちょっとボケてみました。〉
「そんなボケいらん!ってあれ?何かリイナの声に似ておるのう…気のせいか?」
〈ピンポンピンポン正解ですよ~~。リイナです。〉
「えっ本当?リイナ。なんか性格が全然違くない?さっきキレておったし。声は一緒なんじゃけど…リイナは小さくておっとりとした可愛い子なんじゃ。そんなはずないよな?」
〈しょうがないですね。そこまで褒められては…事実を言うしか。〉
「えっ何何?事実って何?」
〈実は……リイナなんて存在しないんだよ☆てへっ〉
「……何サラッとそんな重要な事言ってるの?……そんな事はありえんじゃろ?」
〈ムカっ…永い事お世話になりました。さよ~なら~~~〉
「いや、うそうそ。待って!帰らないで。でも…わしがこの星に転生した時から居たじゃないか?セイムさんと、レイクと一緒に。最初っから…。」
〈いえ、最初から存在していませんよ。ジューローにだけは視えてましたけどね…〉
「何その怪談…こわっ!視えてた的な…それシックスセンス的なオチ?」
〈シックスセンス的な映画は見た事はないですけど…まあそんなもんです。〉
「いや、でも、だって、わしあんな事やこんな事もあったで?本当に居なかったの?わしにしか見えてなかったの?。」
〈多少、ジューローにリイナという存在を信じ込ませるために、森の民の意識を変更する事はありましたけど…。だから私、しゃべらなかったし、よく1人でいたでしょ?疑うんでしたら、最初から読み返してみるといいですよ…1話から…チラっ〉
…誰宛に言ってるの?どこ見てるの?…チラっ
しかし言われてみれば…じゃな。でもセイムさんは普通に接しておったと思うのじゃけど…気のせいだったか…。
「ま、まあびっくりじゃけど…それでわしどうなったの?スペードに殺されて、今どこに向かっておるのじゃ?この小説の方向的にじゃよ?」
〈えっ、この小説の方向って言ってる意味わかんないんだけど?〉
「いや、だからわしスペードにやられて死んじゃったじゃない?もしかしてラノベ的にここから復活しちゃうんじゃね?無敵になって蘇っちゃうんじゃね?わし。」
〈いえ、生き返りはしないけど…〉
「えっマジで?本当の本当に?ほんと?じゃあなんでリイナ出てきたの?」
〈本当本当マジだって。だって……〉
〈ジューローは死んでないから〉
「………えっ?何言ってるかわかんないんですけど。死んだからわし暗闇に落ちてるんじゃないの?」
〈やっぱり気づいてなかったんだ…まあだから私が呼びにきたんだけどね。ほら、じゃあいくよ。こっちに来て。〉
リイナの声だけで誰もそばにいる気配はないのに、どんどんと上にあがっていく感覚だけはある。さっきまでのすーーーーーっと下に下がる感覚ではなく、ぐんっぐんっと上に引き上げられているような感覚だ。
「ぐおっっ早い。ってところでお前は誰なのじゃ?リイナじゃないなら誰じゃ?それで、何でわし死んでないの?どうなってるの?」
矢継ぎ早と、思いつく限りの疑問をぶつける。
〈そんなにいっぺんに…。大丈夫復活した後に全部思い出すから。〉
「面倒くさくなってない?思い出せなかったらどうするのじゃ?」
〈まあ、思い出せなかったらボケてんだな~ぐらいで諦めてもらうって事で…。〉
「謎のまんま!謎のまんま生涯を終えそう!NO more ボケ」
〈ちゃんと思い出すから…ジューローはわたしの事も思い出すよ!ほら、もうすぐ、もうすぐだよあそこーーーーーーーーー〉
小さな灯り…水面のようなキラキラがどんどん近づいて来たと思ったら、
ざばああああああああっっと深海から、水面に這い上がってきたようなイメージで這い上がった。
わしのすべてを白い光が包み込む。
這い上がってきたわしの体が次第に若返る。
まるで、蛹から蝶に変身するかのように光の中から若々しい肉体が…
わしの目の前には先端の鋭い中が空洞になっている見るからに殺傷能力が高そうな金属を振りかぶっておるスペードがいた。
ふむ、なるほどこれでわしを貫いたのか…。
本気でわしを躊躇なく殺すつもりなんじゃな…
わしはスペードの肩をぐいと引き寄せ、棒を持った手を軽く握ったつもりじゃったのだが、グシャっと嫌な音と鈍い感触と共に手を潰してしもうた。
えっ全然強く握っていないのに…と自分の仕業に驚いた。
スペードは持っていた棒をその場に落とす。
「ぐっがああ…だ、誰だ…。」
光で目が見えない様でひどく慌てている。
わしはスペードの後ろから近づき、耳元でささやいてやった
「ジューロじゃ。お前さんの殺したがっていたジューローじゃ。」
わしは驚いた。今発した声が、いままでのようなしわがれたような声ではなく、まるで青年のような低く重厚な声だったからじゃ。




