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第238話 運命の1日のはじまり

 わしらは今日オランウータン村へと旅立つ。

 城下町の門にはわしらを見送ってくれる2人、ゴスンとシスパがいた。


 そんな彼らにわしはお礼の言葉をかける

 「長い事世話になったな、ゴスン。またオランウータン村へ寄った時には何倍にも返すからのう。楽しみにしておれ。」

 そう言ってわしはゴスンと固い握手をする。


 次にシスパと向き合い……地面にツバする。

 「ぺっ、お主にはなにもないわ」


 「なんでじゃ!ジジイ、一緒に旅をしてきた仲だろ。色々と世話もしただろうに。」


 「くそじゃ、お主とはクソみたいな思い出しかないわ!こんな銅像2つももらわされて…持って帰らないといけないんだぞ…重いのに。そうじゃこの門の両脇に置いていったらどうじゃろ…」

 とわしが銅像を降ろすジェスチャーをしかけた時何か悪寒が…。


 辺りをキョロキョロ伺うと…兵士の休憩所の物陰からガッツリ覗いている王…いや、タマちゃんが睨んでおる。


 めっちゃ疑っておったのじゃな。わしらが銅像を置いていくんじゃないかと。

 相手がいらないってわかっているなら渡すなよな…。


 しかたないので置いていくのは諦めて、シスパに王様が来ている事をチクってシスパとは別れた。


 すると別れ際ゴスンがわしに…

 「ジューロー様今日スペード様は地方に用事があって顔は出せなかったのですが、最後にこれを。」

 と言ってゴスンがわしに1通の手紙を渡した。


 「3日後、オランウータン村に着く前に手紙を読んでくださいとの言付けを預かっております。それまで絶対に開封しないでとも。

 それと、またすぐにでも村にも伺わせていただきますので、“ちょこれーと”の増産の方もよろしくお願いします。」


 別れ際“ちょこれーと”を確保するあたりめざといというか…さすが商人じゃな。王様に進呈した“ちょこれーと”を薬として服用した第2王子の婚約者の弟が…続柄がめちゃややこしいな。


 とにかくその弟がたった1日で効果があったそうじゃ。すごい薬だ!とその日にすぐスペード商会宛に第2王子から従者を通じて感謝の言葉があったそうじゃ。


 その婚約者の女性から、ぜひとも直接わしにお礼が言いたいとの事じゃったが、わしらは今日去ってしまうので、軽くお断りしておいた。

 またわしの魅力にメロメロなおなごを増やしてしまったか…罪な男じゃのうわしは。ふっふふふふ。


 って王子の婚約者だからわしの魅力一切関係ないけどね。


 という事でスペード商会でさっそく“ちょこれーと”を扱いたいから少量でも欲しいとのこと。わかった、また森に寄ったときにでもと言い、滞在中の感謝とともに城下町を後にした。


※※※※


 わしはゴスンと別れてすぐ、まだ城下町からゴスンがこちらを見て手を振ってくれている途中でスペードからもらった手紙を破いて中を見る。


 「えっもう開けちゃうんですか?スペードさんの手紙?」

 「絶対開けるな!って言ってなかったダスか?3日後まで」

 マブシとカーンが同時にツッコんでくる。


 「わしはいいなりになるのは嫌なんじゃ、手の上で転がされているようでのう。」

 そして手紙を読むと…


 〈あーっやっぱりすぐ見ちゃいましたね。あれほど言っておいたのに〉


 「えっ?バレてる。」

 わしが驚くとマブシがそれを見てちゃかす。


 「ジューロー殿めっちゃ手の上で転がされてますやん!ぶははは。」

 「これはスペード殿のほうが上手だったダスな…ふふふ」


 確かにわしの行動が読まれてて恥ずかしい…この世をすべて燃やしつくしてやろうか!

 そんな衝動にかられた時、もう1枚の手紙に気付き目を通すと…


 そこにはたった1言……

 〈森で待つ〉

 とだけ書かれていた。


※※※※


 わしらはカバ2頭、ダチョウ1頭に股がり、城下町から森の村への帰り道、2時間ぐらいたった頃だろうか、急に雨が降り出した。


 森にも結構雨は降る。スコールのような激しい振り方をする雨も多く、雨が降る時にはなるべく外出しないようにしてぐらいじゃ。


 川や山肌の近い所では鉄砲水のような、大人でも攫われてしまうような質量の水が襲う事もあるので油断はできない。


 川といっても灌漑工事をしたわけではないので、単なる溝という感じで激しく雨が降った後なんかでは違う所に川が増えたりすることもあるのだ。


 段々と雨脚が強くなり、わしらの視界も4、5mくらいになってきた。

 ちょっと雨宿りのつもりで街道の脇にある林の中に身を置く。


 わしはふと顔を見上げると上空には黒い雲が覆っている。

 その黒い雲の動きは激しくどんどん、わしらが向かうオランウータン村の方に集まっているようにも思える。


 ふと王城であった予言者マジナの言葉が思い浮かぶ。


 “王城を覆う黒い幕は森を覆う白い幕に向います”


 「まさかな…。普通もうちょっと比喩じゃろ。

 そんな見たまんまってことはないじゃろう……。」

 と自分に言い聞かせるようにつぶやく。


 しかし、自分の中でどんどん不安は高まる。


 単なる動悸だけならいいのじゃが…ドキドキが止まらない…


 雨宿りしている時間と比例しているかのようにどんどん不安は高まる。


 止みそうもない激しい雨を見てわしは決心をする。


 「マブシ、カーン、わしはダチョウでこのままオランウータン村へと向かう。

 お前達は後から来い。ゆっくりでいいぞ。」


 「えっちょ、ちょっと」

 「いきなり…どうしたダスか?」


 という二人に1言、2言告げて、ダチョウに股がり激しい雨の為視界が狭い中、

 急いでオランウータン村へとわし一人で向かった。


 








 運命の1日の始まりじゃった。



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