第233話 予言者マジナ
わしは今までの事を正直に全部王にしゃべるかどうか迷った。
だって生まれ変わったなんて信じるか?しかも外見ジジイじゃし…。
そもそも前世とか生まれ変わりなんて宗教的な言語が、こちらにあるかどうかもわからんのじゃ。
この世界ーーー森の民にはそんな宗教のようなものはなかった。森自体を崇拝というか、感謝するぐらいはあったのじゃが…。
まあそれでも、この国の最高権力者の後ろ盾があれば今後何かあれば優遇してくれるかもと思い、とりあえず話してみようと思う。わしの事で森の民に迷惑をかけるといかんからな…。
「実はわしの名前は小林十朗というのじゃ。この星の産まれではない。地球とい星で産まれ78歳で死んだのじゃ。死んだ後、縁があってこの星に飛ばされた。ジジイのまま空から飛ばされてきたのじゃ…。」
王とシスパはポカーンとしておる。
えっわかりづらかった?わしの説明。
「…何言ってるのこのジジイ?キモッ!逝っちゃてるよ~~。」
王様におもいっきり引かれた…。
本気でひいておる…。どうしよう?
「逝ってる!逝ってる!」
とりあえず、往年のギャグをアレンジしてみた。
あっポカーンとしてる。
読者もポカーンか?
その後もわしは2人をポカーンとさせながらも、この星に来てからの出来事を話した。厳密にはミチ・ミカ、何者でもない人の話はカットしておいた。わしもわけわからんのに、話された方はもっとわからんだろうと思って。
だが、ラ・メーンに襲われている事などや、ミチミカにもらった能力などは話せる範囲で話しておいた。
「………というわけじゃ。信じるか信じないかはあなた次第です」
最後はビシっとキメポーズで!
「う~~~~ん。にわかには信じがたい話だが…。もしこれが作り話ならかなり妄想癖の強い寝たきり老人となるが…。だが、今までそれなりの結果、実績も残していることだし…あながち妄想男子ならぬ妄想ボケ老人とは言えんな。」
王はわしの話を聞いてとまどいつつも、自分の中の常識と照らし合わせて葛藤しているようにみえる。
「わしは信じているぞ、ジューローを。」
シスパはいい笑顔であっさりわしを信じる…。
たぶん考えるのが面倒くさくなっただけじゃろ…お前。
その後も王とわしで色々話し合った。その中でわしは1つの疑問をぶつけた。
「何で王はわしを仙人ではないと思ったのじゃ?仙人に会ったとはいえ大分昔で顔も覚えておらんと言うのに。」
「ああ、その事か…実はわが王室に代々使える予言者がわしに進言をしてくれたのだ。ジューローは仙人ではないのだと。そういえば、隣の部屋にその予言者を控えさせていたの忘れていた…シスパ、マジナ殿を呼んでくれ。」
えっ予言者?めっちゃウソくさいんですけど。わしの転生の話より胡散臭く無い?
しばらくするとシスパが女を連れて来た。
その女はスラリと背が高く、頭にベールのような薄い布を被せて、口元にもレースのような薄い布をあてている。だから顔は目だけしか伺いしれない。
服装はアラブの昔話にでてくるようなヘソだしルックのトップに、ボンタンのようなズボンを履いておる。…今どきボンタンって、わかる人おるかのう。
ベリーダンスの衣裳みたいじゃと言ったほうが伝わるか…。
「マジナ様をお連れしました。」
「チョリース!も~~控え室で何分待たせるんだっつーの。眠た~いふああ。」
……ギャルじゃった。予言者は単なるギャルじゃった。
しかも驚く事にスタイルはいいのじゃが…何というか言いづらいのじゃが、推定35歳位でギャルだった。
…見ていて痛々しいのじゃ。
いや、いいんじゃよ。別に個人の自由だからいいんじゃけど、身の回りでもいい歳をしたおばさん(おばあちゃん)が、めちゃフリル振り振りの服を来ていると引くじゃろ?
50歳過ぎたおばさんが自分の事名前で呼んでいるのを聞くと引くじゃろ?
そんな感じなんじゃ。
「あたし王室お抱えのマジナっていう予言者で~~す。笑える~~。んで最近ビビッて来たのね。あっこれはヤベ~ナって事で王様に伝えたの。」
そんなマジナをじっくりと上から下まで動物園の生き物をみるように見たわしは…わしは思い切って聞いてみた。
「……ご結婚は?」
「それが~~やっちゃうと~能力が失われるからやっちゃダメなんだって~ひどくね~。ドクターストップならずキングストップ的な?」
「王さまひどくね~~~~」
わしもつい、釣られて王にギャル語で言ってみる。
「…いや、俺に言われても…それ以外にも問題もあるんじゃないかと…。」
「うける~~~、そんな事言うなら、マジナすぐに玉の輿見つけて予言者止めちゃうぞ!プンプン!」
「…王、こいつ殴っていいか?」
わしは、つい本音が漏れ出す。だだ漏れ出す。
「…一発だけだぞ。」
わしは王の許可をもらって2発殴った。




