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第227話 王とちょこれーと

 6畳ぐらいの部屋にわしらは王様を囲んで、わいわいと宴会をしておる。

 形式ばった形ばかりの祝賀会などよりは全然楽しいから良いのじゃが…これも王様なりのわしらへの配慮なんじゃろう。


 …今わしらの前で横になってケツをかきながら食事をむさぼるおっさんを目の前にすると本当にそんな配慮だったのか疑わしいのじゃが。


 そんな王様の前でわしらは色々な事を話した。

 オランウータン村に至る経緯だったり、カーンが仲間になる話だったり、シスパと共にネズミを退治した話、もちろん森の特産品である品々もアピールしておいた。


 「そういえば、王城でも森の民特製精力効果のある薬草は大人気で愛用者も多いときいたな…おれにも定期的にまわしてくんない?」

 と王様が気楽に賄賂を要求してきた。


 「ふふふっふ、全くお殿様は悪でございますな…わかりました、この越後屋、お殿様の為にとびっきりの精力剤をご用意させていただきますぞ、ぐふふふふふ。」


 「なぜ、悪代官風?」

 王様も困惑顔じゃ。


 「そうじゃ、オランウータン村から王様にお土産があったのじゃ。」


 わしは荷物の中から小さい樽のような入れ物を取り出し王の前の空になった入れ物に注ぐ。

 王にとってそれはドロリという形容詞がぴったりの黒い粘度の高い得体のしれない物だった…


 「何?これ?飲めるの?これ…っていうか黒すぎて怖いんですけど…

 ●んこ?年代物のうん●なの?」


 王はビビって絶対に口に含もうとはしない。


 「いえ、これは決して●んこではございません。私の国では“神の飲み物”と讃えられ高貴な者しか飲めない特別な物“ちょこれーと”という飲み物なんです。」


 「いいや、●んこだよ!絶対にう●こだよこれ!」


と全くわしの事を信じない王にしびれをきらしたわしは…


 「わかりました。それでは毒味にシスパに飲んでもらいますので。それなら大丈夫でしょ?おいシスパ飲め!一気じゃぞ!」

 シスパに液体を突き出す。


 「俺が?まじか…まさか俺に回ってくるとは…」


 しぶしぶ言いながらもシスパは意を決して器に注がれた黒い物体“ちょこれーと”を飲む。ちょこれーとは粘度が高く飲みにくいはずなのだがシスパは咽をゴクゴクならしながら飲み干す。


 プハーっと一息つきながら口のまわりについたちょこれーとを拭う。


 「どうだった?」

 王がおそるおそる聞く?






 「う●こでした!」


 「「「うそつけ~~~~~~~!」」」


 森の民全員でツッコんだ。

 オランウータン村総意で全力でツッコんだ!


 「うそうそ、不思議な味でした。確かに飲みにくいが苦みの中にも奥深い味わいだった。一言で言うなら…まずい!もう1杯かな。」


 シスパがフォローのつもりか、うまいことまとめて感想を言う。

 わしがそれに付け足し王に説明する。


 「この“ちょこれーと”という飲み物は最近オランウータン村で発見されたばかりの薬でもあり嗜好品でもあるのです。」


 もう一度、王の前にある器にちょこれーとを注ぎながら説明を続ける。


 「栄養素が豊富でバランスのよい飲み物である上に、体の免疫効果を上げてくれる…簡単に言うと病気になりにくいのじゃ。

 それに王にぴったりの集中力や記憶力を高める効果、神経を沈めるリラックス効果がある。まさに選ばれし王のための飲料なのじゃぞ。まあ、わしも毎朝飲んでいますけどね。選ばれし者なんで…てへっ」


 オランウータン村でもこれが飲めるのはまだ一握りの民だけじゃ。

 生産量も少ないのもあるのだが、まだ毒味の段階でどんな副作用があるかわからないからという面の方が大きいが。


 「こちらのフリップをご覧ください。約80%の患者さんが体の調子が改善されたと答えています。後、これは少数ですが、奥さんとの夫婦仲が良くなった、娘からお父さんの枕臭いと言われたなどの意見も確認されています。」


 「うん、最後の2つは関係ないな。だがすごい効果だな…よしわかった!飲むぞ、王は飲む!うんうんうっ…」


 意を決して王は器に注がれた液体を飲む。

 ゴキュゴキュと咽を鳴らして飲む。最後の方は苦しそうだったが全部飲み干した後、床にたたきつけるように器を鳴らして置いた。


 シスパと同じようにプハーっと息をついた後、わしに向かって真顔で言った。



 「う●こだな。」


 「「「うそつけ~~~~~~~!」」」

 その場にいる全員でツッコんだ。

 部屋の外にいる護衛の2人からも聞こえた気がする。


 「まあ、冗談だが、これは確かに苦いがうまい。体が元気になる気がする。気に入った!ぜひ譲ってくれ。俺も毎日飲むようにする。そして精力剤もくれ。値段はそちらの言い値でいいぞ。」


 「わかりました。が、私どもはスペード商会に独占的に卸しておりますので、王にはそちらと独占供給契約を交わしていただければと思います。いかがでしょうか?」


 「…ふむ、つまり王室御用達の銘を与えるという事だな。そのスペード商会とやらに?」


 「はい、そのように配慮していただければわしらも幸いです。winwinの関係ですじゃ」


 王室御用達の銘がもらえれば、少なからず大手の商会からの表だっての嫌がらせは減るだろうし、一般の人に知名度も抜群にあがるであろうとの、わしのせめてもの恩返しのつもりで提案したのじゃ。


 王は少し考えた後、

 「うむ、わかった。その提案の通りにとりはかろう。噂通りなかなか策士だな。」


 王様もわしの意を汲んでくれたようじゃ。 

 「さあ、仕事の話はそれぐらいにして盛り上がろう!」

 王のかけ声でまた、無礼講の宴は始まった。


 …あとは銅像授与だけじゃな。

 この調子なら断れるのでは…そんな事を思ったわしがバカでした…

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