第225話 王との謁見
その謁見の間は石造りの縦長の部屋で、真っ直ぐと伸びた豪華な敷物が王様の座っている椅子へと続く。
もちろん王様の椅子の両脇には屈強な男が脇を固めている。そして豪華な敷物に沿って左右に3人ずつ、エライ役職の方達であろうか、年配の貫禄のある人達が並んでわしらを出迎えた。
王様までの距離が10mぐらいと、そんなに長くない距離をわしを先頭に歩くのじゃが…何か違和感を感じた。
敷物の中央を通り王様に近づく時に並ぶ大臣、貴族達の口元がこころなしか笑っておるように見えたのじゃ。
正面の王様は、これぞ王様という感じで、太っていて顔も丸々とした口ひげをたくわえた40代のおっさんにみえた。
“これがこの国の王様…?”
わしは王様の手前3mの所で立ち止まる。
すると回りがざわつく。そんな事はおかまいなしにもう1度両脇に並んでいる貴族、大臣の顔を1人1人見直した。
その中の1人に何というか…気品を感じさせる男がいた。鼻は鷲鼻で眼はするどく、頭はおでこからてっぺんまでが禿げておるが、あご髭と口ひげを蓄えて地球で例えるのなら、ショーンコネリーのような顔立ちじゃ。
わしは回りの不安をよそに、その人の前まで行きじっと眼をみつめる。
しばらくして回りも静寂につつまれた後に
「初めてお目にかかります。オランウータン村から来たジューローと申します。今日はお招きいただき大変嬉しく思っております。以後お見知り置きを」
と挨拶をした。
周りがわしの奇行にびっくりしておる中、その男はいきなり笑いしだした。
「わはははははははははっ…いや大変、失礼した。」
男はそういうと自分の服を脱ぎ去り、王様の椅子に向かって歩き出す。それに呼応するように今まで座っていた太っている王様が脇に退いて階段を降り跪く。
その男が椅子に座りこちらに向き直ると、まさに玉座と言うにふさわしい品格が携わったように思えた。改めて男はわしに声をかける。
「わたしが現ペラスゴス国の王、アルゴス二世だ。試すような事をして悪かった。許してくれ。」
王様は軽く頭を下げる。中尾彬のような重低音ボイスに、周りの家臣達も襟を正し直したようだ。
わしは…この国に名前あったんじゃな。ペラスゴス国って言うんだ…225話にして初めて聞いたな~などと思った。
「しかし、どうしてわかったのだ?初めて会うというのに。」
王を当てたカラクリが知りたいらしい。
「はい、実は……大変言いにくいのですが…シスパ兵士長に事前に王様の容姿を聞いていたのです。」
周りはなんだ、そんな簡単な事だったのかと安堵の笑いがおこる。
王様がチラリとシスパを見る。シスパは困惑顔だ。
「今日はオランウータン村の歓迎の宴がこの後に控えているので、ぜひとも楽しんでいってくれ。」
と笑顔でわしらに話しかける。
「ありがとうございます。楽しみにしております。」
その後も色々と偉いさんの話だとかなんとか…色々と長々とくどくどとあったのじゃが、一通り終わった後に兵士の1人がわしらに近づき、別室の案内を申し出た。
やっと謁見が終わったようじゃ。あー緊張したのじゃ。とりあえず1つ終わったと安堵すると、後ろから声が聞こえる。
「リューゴス、1カ月ぶりになるか、元気にしていたか?たまには顔を出すように!母さんが寂しがっておるからのう。」
「はっ、元気にジューロー様の元で日々修業しております。自分には森の生活が性に合っているようですので、このまま森の民として生きようかと…。」
「ふふっ、大人しかったお主がそこまで言うとはな…まあ好きなように生きろ。しかし定期的にちゃんと顔は出すようにしろ。」
めっちゃ対等に王様と話すリューゴスにマブシ、カーンが驚く。そんな2人にシスパが小さい声で
「リューゴスは王様の3番目の子どもだ。つまり王位継承第3王子だ。」
と教えてくれた。それを聞いて一番びっくりしたのは…マブシじゃった。
「はーーーー?リューゴスが王子?ええええ…ウソでしょ?」
と大きな声で驚いた。
それを聞いて王様は
「マブシ君だったか、リューゴスから話を聞いておる。なかなかの奴隷根性でいじりがいのあるナイスボケチェアマンだとな。これからもリューゴスのシモベとして誠心誠意頑張ってくれよ!」
「ひどっ奴隷根性丸出しって!リューゴスお前俺のことそんな風に…ひどっ!だけどナイスボケチェアマンっていうのは褒め言葉だよな?」
もちろんリューゴスに向けてじゃ。王様にタメ口きいたらぬっ殺されるよ。
「…………マブシは暇つぶし。都合の言い女ポジ…。」
「ひどっ!都合の言い女って…そんな事一度もないけど?そんな扱われ方一度もされた事ないけど?オレそんなポジションなの?お前の中では」
やいのやいの言い合っているが、なんやかんや言って仲がいいのじゃろう、この2人は。そんな2人を見て王様も少し笑っておる。不器用なリューゴスに友人が出来て安心したのじゃろうか。そんな笑みにみえた。
それから、わし等は別室の控え室でこれから始まる宴の準備を待った。
「ジューロー殿は全然驚いてないようにみえましたけど、知っていたんですか?リューゴスの事。」
マブシがわしに聞いてきた。
「いや、わしもリューゴスが王子だと言う事は初めて知ったぞ。」
「それにしてはリアクション薄かったですね…歳?」
「だれがおじいちゃんだから感情乏しいねじゃ。違うわ!はっきりとは知らんかったが、何となく王城関係者ではないかなとは思っておったからじゃ。たまにシスパがぽろっと言っておったしな。定期的にリューゴスに接触しておる者たちもいたし…気づかなかった?マブシ。」
「えっ……し、知ってましたよ。もちろんリューゴス…なんだったかな~第3王子っていうTシャツ着てた事あったし、パンツに第3王子って名前書いてあったかな、確か。」
「無いわ!Tシャツとかパンツ無いわ!元モーニング娘の高橋○がI am a whore(訳/私は尻軽女)っていう英語のTシャツ着ていたぐらい無いわ~~~~」
「………えらい具体的ですね…」
「………実話じゃ………………」
そんなたわいもない話をして、これから始まる宴の準備を待った。




