第224話 王城へ
「いや~~その店のお姉さんがわしを離してくれんかったから、参った参った、デラ参ったわ~。」
昨日に引き続き夜は部屋で宴会じゃ。まあ昨日と違うのは踊り子さんやスペードの姿がなかっただけかな。
わしは朝帰りをして眠かったのでそのまま寝てしもうた。起きたらもう夕方じゃったので結局1日寝て過ごした。
カーンはゴスンと2人で報告のあったリーンを朝早くから調べに出かけたらしいが違ったみたいだった。その後また捜索に出かけたようじゃが有力な情報は得られなかったとか。
他の者はシスパの案内でまた町に繰り出して色々と観光をしてきたらしい。色々と珍しい動物や美味しいものなんかを堪能してきたとマブシが延々と自慢してきよおったので、わしもそれに対抗したのが、冒頭じゃ。
「いや~~もう途中からわし、ちぎっては投げ、ちぎっては投げてたもんな~。」
「投げちゃダメでしょ、投げちゃ…っていうか嘘でしょ?その話。」
マブシがツッコンできた。
「いや、本当じゃよ、昨日の夜はくんずほぐれつ酒池肉林じゃったよ。」
「酒池肉林って…どこにあるんですか?そんなお店?」
「ほら…そこを右に曲がって、右に曲がって、右に曲がったところじゃ。」
「元に戻って来ちゃってるし…嘘でしょ?その話。」
「ほれ、ここじゃここを見てみい!この首もとにキスマークがあるじゃろう?」
「えっキスマーク?ってこれ青アザじゃないですか、殴られてアザになってるのでわ…どんだけポジティブなんですか。」
「……………あくまでも信じないというのかお前は。」
「じゃあ言いつけますよ、エメリさんとセイムさんに言いつけますよ!」
「ウソじゃ。ウソの中のウソじゃ。キングオブウソじゃ!」
「はやっ、ウソの肯定はやっ!」
という事で今日の宴会は早めに終了して、明日に備えて早く寝る事にした。
どういう事じゃ?
※※※※
次の日の朝早くから、わし等オランウータン村一行は王城へと向かった。
城下町の突き当たりに大きな門がそびえ立つ。高さは3階建てのビル並みの大きさの城壁のようだ。門の前には兵士が両脇に5人づつ微動だにせずにらみをきかせている。
先頭に立つシスパがその中の隊長のような男に一言二言声をかけるとそれを合図に両脇の男達が門を押し出す。見たままの重厚な門は両脇5人づつ計10人の屈強な男達でやっとジリジリと動き出す。なんともアナログな感じじゃが、まあそんなものかと徐々に開く門をのんびり眺める。
ガゴーーーンンンン!
と重々しい音が響きわたると同時に隊長にうながされ、わしらは門の中に入る。すると内側ににも屈強な男達が10人いて、わしらが全員中に入ったのを確認し、開いた門をまた押し出す。
入ってすぐの所にまた小さな門があり持ち物のチェック、身体チェックも受ける。
シスパは顔パスじゃ。わしらは色々なところをまさぐられる。ちょっと感じる…。
全員のチェックが終わりやっと王城へと続く門が開かれるとそこはーーーーーー
あたり見渡すかぎり綺麗に裁定された木々、芝生、池のようなものが整備されていた。城下町のように石を組み合わせて舗装された道が王城へと延々と続く。
王城は石畳の道を500mぐらい先にそびえたつ、ピラミッドのような形であった。エジプトのピラミッドのようではなく、マヤ文明のピラミッドのような頂点が平になっている。
その頂点へ続く階段の1段1段に兵士が槍を立てわしらの到着を待ち構えていた…。ものすごい威圧的じゃ。
もちろん微動だにしない兵士を見てわしは…おしっこしたくなったらどうするのじゃろうと、心配になった。おしっこだけならまだしも、大きいほうをもよおしたらどうするのじゃろう…と心底心配した。
あまりにも心配だったので、王城へ近づく前にシスパにそっと聞いてみたら怒られた…。
気にする所そこ?何の心配してるの?今から王様に会うからそっちの心配してね。
と優しく怒られた。
わしらは1段ずつゆっくりと昇る。石段の上に並ぶ兵士にわしは1人1人声かけた。
「尿大丈夫?尿漏れしてない?」
優しく声をかけた。
シスパに怒られた…。しつこいなジジイと怒られた…。
来賓なのに怒られた…。
入口にたどりつくまで、まあまあの苦行なのじゃ…いったいこの階段何段あるのじゃ…ざっと300段ぐらいあるような…。毎日昇り降りしておるのかな?王城で暮らす人達は。
そして長い苦行の後、やっと頂上の入口に辿り着いた。そこにはどうやらシスパより階級が上の偉いさんが待っておったようじゃ。シスパが跪いて挨拶をしておる。団長と聞こえたような…。兵士長の上じゃな。
その団長の後に続きわしらは入口を通る。短めの暗い石造りの廊下を通り、謁見の間の扉の前に待たされた。
やっとこの扉を開ければ王様とご対面じゃ。せっかく異世界に来たのじゃから1度は見てみたいベスト10には入るじゃろう。少し楽しみじゃ。心なしか、わし以外の他の者達は緊張しているようにみえる。シスパでさえも。
目の前の扉が、少しづつ低い音を立てて厳かに開かれる!




