第220話 城下町の中へ
カバに跨がり開かれた門をくぐるとそこはーーーーそこは……
どこ?ここ?
入ってすぐに、雑多な裏路地のようなゴミゴミとした場所だった。
何か…全然華やかさがない…本当に城下町かここ?
「ああ、言ってなかったか?ここは業者、行商人専用の門ですぐに問屋や商館に行けるようになっておるのだ。」
得意満面に言ってくるシスパにわしは…
「やり直しじゃ…もう一回正規の門から入り直しじゃ!返せわしの万感の思いを返せ!そして前回の終わりのナレーション部分もわしに返せ!」
「はっ?ナレー…ってよくわからんけど…」
「見るのじゃ、初めて城下町にくるマブシ、カーンのあの目を!コレジャナイ感たっぷりの死んだような目を!そして、わしのつぶらな瞳も。」
「ジジイ目つぶってるじゃん!どこがつぶらやねん!はっおもわずツッコンでしまった。だけど荷物もあるし…。」
と、そこへわしらを見つけたゴスンが喜びいさんで駆けつけてくれた。
「ジューロー様、よくお越しくださいました。長旅お疲れでしたでしょう。ささ、こちらです。私が案内します。」
そうなんじゃ、王城を訪問するという情報を聞きつけたゴスンが、スペードに許可を取り、わしらが滞在する間、スペード商会で世話をしてくれる事になったのじゃ。
「ゴスン殿久しぶりです…といっても10日前ぐらいには会っていたかのう。わざわざお出迎えありがとうございます。」
「いえいえ、普段ジューロー様にはこちらがお世話になっていますから、今回の滞在は私たちスペード商会が全面的にお世話をさせていただきます。これで多少日頃の恩返しが出来ればと。」
「すまんのう。しばらく世話になるわい。よろしくな。」
「はい、こちらこそ。それでは荷物等こちらでお預かりいたしましょう、ささ」
「そうか、じゃあ荷物は先にスペード商会の方へ頼むかのう。わしらはもう1回正門から入りたいのでのう。」
「えっ正門…ですか?」
「ああ、ジジイは業者用の入口が気に入らないとの事だ!もう1回ちゃんと入り直したいんだとよ。」
シスパがゴスンに説明してくれる。
「そうでしたか、それでは私も一緒に付き添いますので、荷物は部下に先に持っていってもらいますか。」
ゴスンは一緒にきていたスペード商会の部下らしき者に指示をし、荷物を預かって先に行ってもらった。
「それでは行こうかのう。あっシスパお前はもういいぞ、お疲れさん」
「えっ冷た!せっかく寝食共にして城下町目指して一緒に旅してきたのに、別れ際冷た!」
「そうじゃ、わしも昔はよく言われたものじゃ…付き合う前は情熱的なのに、付き合った後は冷たいのね、あなたって」
「何の話?それ、男女間の話?いつの時代だジジイ。」
「わしは釣った魚にはエサはやらんタイプじゃ!」
「胸を張って言うなよ。まあまあなサイテーな奴だなジジイは…。絶対に女にもてんだろう。」
「今、そんな男女の話は関係ないのじゃ!まったくシスパは…」
「ジジイが先に言ってきたんじゃないか!こっちがまったくと言いたいわ。オレも一緒に付いて行くぞ。王城に連れて行くまでがオレの仕事だ。」
「えっ王城に行くのは2日後じゃろ?それまでいるの?シスパも一緒に泊まるの?」
「ああそうだ。」
「いや、そんな胸を張って堂々と言われても図々しい奴じゃな…ゴスン殿言ってやってやったほうがいいぞ、来るなこのデアゴスチー二野郎!と」
「なに?デアゴスチー二?アゴ出てないよオレ、全然アゴ特徴的でないのに?」
「まあまあジューロー様シスパ様からは実費もらっていますから…それに特別な配慮も…。」
とゴスンが悪そうな笑みを浮かべる。
「何じゃ、配慮って何じゃ?汚職的なものか?見逃してもらっておるのか?」
「まあ、そのへんはゴニョゴニョ。」
「うわっごまかし方ヘタ!ゴニョゴニョって言っておる奴初めてみたわい。イラッとする!シスパの恥じらいイラッとする!」
「まあまあジューロー殿、そんな事より早くいきましょうよ。俺も待ちきれないっすよ。」
さっきからわしとシスパの言い合いにシビレを切らしたマブシがわしを急かす。
「そうじゃった、まあよいシスパも付いてきていいぞ。じゃあ行こうか。」
何かいいたそうじゃったシスパを後にわしらは、もう一度行商人用の門を抜けて外にでる。また、門兵とシスパが色々と話しておったが、面倒くさい説明はシスパに任せて、わしらはゴスンの案内で先にすすむ。
そして、一般の入場者と同じ入口に並び、先程とは違い、簡素なチェックを受けて門を通る。今度は先程のように門が閉まってはいなく、先に両側が開いておった。ゴスンによると日暮れと共に正面の門は閉められるらしい。
夜間は基本的に自由に往来出来ない用になっておるそうじゃ。もちろん夜間用の入口出口田口もあるようじゃが、今は置いておく。田口も置いておいて。
わしらは今度こそ正面の扉をくぐるそこにはーーーーーーーー
幅広い石が敷き詰められていた大通りが真っ直ぐに伸びている。1km、2kmはあるだろうか真っ直ぐにのびている。その両脇にはレンガを積んだような建物が並び色彩豊かな、色々なお店が並んでいる。
わしらはそれを珍しそうにキョロキョロ眺める。
さっきから、はーーーーっと感嘆の声しかあがらん。マブシ、カーンもわしと一緒じゃ。感嘆の声をあげながら口を常に開けながら見て回る。
アルーン村でもそうじゃったが、城下町も石の文化のようじゃ。レンガのような物が作られているという事は焼物の技術も盛んなんじゃろうか?見るもの見るものが全て珍しい。
しばらく歩くと大きな広間のような所があり、そこは露天の活気のある市場のような所だった。城下町に住んでいる人たちばかりではなく、他の地域から来た旅人のような人たちも多かった。
すばらしい!これぞファンタジーじゃ。どこかのアジアで見た事のあるような異国情緒たっぷりの風景じゃがわしは素直に感心した。色とりどりの布、服、食べ物、道具、見るもの全てがエキゾチックじゃ。
リューゴスは相変わらず無愛想じゃが、ゴスンとシスパはそんなわしらを見て微笑んでくれておる。どうだ、珍しいだろうと。
よかった…恥ずかしい!この田舎者が!などという目で見られておったら、わし暴れちゃうよ。暴れちゃうところじゃったよ。
などとジジイげのない事をおもいつつ楽しんだ。




