第219話 城下町に着く
思ったより順調なので今日から毎日22時に投稿します。
数ある中から読んでいただき本当に感謝感激です。
これからもよろしくお願いします。
わしらは城下町へと続く街道を歩き続け、3日目にとうとう城下町が見える近くまで来た。整理されているとはいえ、なかなかの凸凹した道でカバの背中といえど多少乗り心地はよくない。
今はちょうど小高い丘のような場所で、丘から見える景色は、今まで森で生活していたわしらには見た事のないような牧歌的な風景だった。
城下町は塀に囲まれ、中を伺い知る事はできないが、想像以上の大きさじゃった。塀の中に山のようなものも見える。シスパいわくあの山に王城があるそうなのじゃ。少し楽しみになってきた。
その塀の外に見えるのは一面の畑、視界を遮るものが何も無い一面畑だらけじゃった。青々とした作物が伸びておる。上からみると草原のようにも見える。幼い頃にみたアルプスの少女ハイジに出てくる草原のようじゃ。何か懐かしく感じた。
わしらは両脇に延々と続く作物の間をゆっくりとカバで通る。
城下町に近づくと、わしら意外にもたくさんの行商人なのか、人数も増えて来た。
城下町に入る前に、行商に来た人とその他の一般人とに分けられる。
行商人には検問もしていて、荷物の量によって税金が課せられるようじゃ。一般の人は通行証、身分証があれば自由に出入り出来るらしい。
もちろんわしらは王に呼ばれた来賓じゃからフリーパスじゃろう?シスパ。
「もちろんだ、むしろ俺がいることに感謝しろ!顔パスだ。」
自信満々だったが、お約束通り衛兵に止められていた。
「俺だ!兵士長だ!顔忘れんなよ~~」
「知らん!名前は?名前を言ってみろ!」
「シスパだ!王様付きの兵士長だ!」
「知らん!身分証は?無いのか?」
わしらに顔パスと言った手前恥ずかしかったのか、なにげな~~いそぶりの隙にチラっと身分証を見せたようで、その後兵士が通してくれた。
「さすが、シスパじゃ!本当に顔パスだったのじゃ、すごいな~~」
とセリフ棒読みで褒めておいた。
検問を通りすぎる時、その兵がシスパと少しの間談笑しておったので、知っていてわざといじわるをしたのじゃろう。シスパも本当は慕われているようじゃ。そりゃあそうか、自分の上司に冗談でもそんな事をしたら、普通シャレにならん事になると思うぞ。ヘタしたら首が飛びかねん…リアルに。
ただし、本当にバカにされている可能性もないわけではないが…。
それから、わしらは行商人専用の門を通ってやっと城下町に入る門の前にくる。
城下町を囲む壁は、近くからみたら大小の石を積み上げた壁だった。高さは…わしが1m70cmぐらいじゃから……すまん見栄はりました。1m65cmぐらいだからその3倍以上に見えるな、5、6mぐらい?
この石をジェンガのように抜いてみたらどうじゃろうか?そんないたずら心が芽生えたがビクともしなかった。当たり前か…。石と石の間には粘土のような土が使用されていて、乾くと透明ではないがみえにくくなるそうだ。だからただ石が積み重なっているように見えるが崩れる事はないとの事。
なんて事を話していると、門が開くから早く来いとみんなに急かされた。
カーンとマブシは初めて来る城下町にワクテカじゃ!子どものような目をしておる。リューゴスは…目が腐っておる。なんのワクテカもない無表情じゃ。死んだ魚の目のようじゃ。まあリューゴスは何度も来て…いや、たぶんここの出身なのじゃろう。
リューゴスに関しては何も詮索せずにわしの弟子にしたが、何となくわかるものもある。身分の高い出の者ではないかとな。
それは普段の立ち振る舞い、言動など…リューゴスは本当は普通にしゃべれるのに、ボロが出ないようにボソボソとカタコトしかしゃべらないようじゃがな。
それに今回森を出発する前にシスパが思いっきり「リューゴスお前か?そんなに王城へ帰りたかったのか?」って言ってたし…おい、シスパ!ダメじゃん言っちゃあ。多分シスパはリューゴスの素性をしっておるのだろうが、固く口止めされておるのであろう。
そのシスパの発言の後、なにげな~~くリューゴスの顔を見たら、ものすごい殺気を放っておったぞ。わしはこの道中でシスパはどさくさにまぎれて、ぬっ殺されると思ったよ。何事もなくてよかったわい。
…これから?これから始末されちゃうの?
まあ、わしが王城へ誘った時に断らなかったという事はリューゴスから何らかの告白があるのではないかなと思っておる。
かといって、リューゴスから
「師匠~~好きだ~~~、ジイさんでも関係ね~~~~!」
というBL展開の告白だけは勘弁して欲しい…。
そんなバカな考えをしておるうちにようやく城下町への門が開くようじゃ。大勢の行商人がまだかまだかと門の前に集まっている。高さが3mは有りそうな金属製の両開きの門がゴゴゴッという重厚な音を立てて少しづつ開かれていく。
この門の第1歩がまた新しい冒険の始まりになりそうじゃ。わし達はカバに跨がって、8分くらい開いた門に、足早になだれ込む人たちの流れに乗り、ゆっくりと動き出した。




