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第214話 ラ・メーンのこと02

 女性達の後を男が1人ゆらゆらと不自然に歩いていた。男は身長がだいたい170cmぐらいで痩せている。頭から布一枚を腰まですっぽり被っているので表情は伺いしれない。


 その男は、わし達の横を通りすぎる時に急に立ち止まり、ボソッと…

 「腰付きが溜まらんのう。あのふともも、ちらっと見えるふとももが辛抱たまらん!」

 つぶやいてニヤリと笑った。


 それを聞いたカーン、マブシは

 「うわっ、危ねーやつダスな~、口に出して言うなんて…。」

 「頭の中で思うだけにしろよ。」

 とゲスな発言に驚いたようだ。


 わしは青ざめた……。なぜならその男が発した言葉は、わしが思った事だったからじゃ。わしが女性達を通り過ぎる時に前から3番目のムッチムチな女性を見て“この女子、顔はマズイが十分いけるのう”などよりも、もっとゲスい事、次の4番目に見た女性について心の中で思っていた事だったからじゃ…

 パッツンパツンの太ももを見て、つい魔がさしてもうたのじゃ…。


 まさか3番目の女性の事はあまりにもゲスすぎて、4番目の女性のコメントを発したとしたのだとしたら…相手は恐ろしい奴じゃ。その気づかい…恐ろしい奴じゃ。


 その後すぐに振り返り、その男を探したのじゃが、もうどこにもいなかった。


※※※※


 その夜、たき火を囲み皆で食事をしていた時にダイレクトではなく、だいぶボカして皆に話をしてみた。


 「えっそれって…人の心が読めるという事ダスか?」

 「そんな事ないでしょ~、偶然でしょ。」

 「しかし、一言一句わしの考えていることを当てたんだぞ、それしか考えられんのじゃ。」


 「いや、そんな事だれでも思いますって、俺は絶対前から3番目の女性でしたね。ムチムチ加減がたまらんですばい!」

 とマブシが言えば…

 「……前から2番目、一択。」

 と珍しくリューゴスも参戦。

 「いや、俺は4番目ダスな。顔はとにかく、あの腰と尻はたくさん子どもを産んでくれそうだったダスな。」

 とカーンもノリノリだ。みんな普段クールじゃけどやっぱり女性に興味あったんじゃな。その後もわしを含めてああでもないこうでもないと言い合っていると、そこに怒声が響いた。


 「お前等、何浮かれているんだ!まだ森を離れて1日も経っておらんのだぞ!」

 シスパじゃ。今まで全然話しに加わってこなかったシスパがいきなり大声をだした。びっくりした顔でわし達4人はシスパに顔を向けると…


 「さっきから聞いておればなんだ!お前達の目はふし穴か!1番先頭を歩いておった娘の話が一回も出てこなかったじゃないか。俺のイチオシは先頭の娘だ!そうだろ?おまえらも?ん?」


 わしらは一同その意見を聞き黙った。うつむいて黙った。できることならその娘の話題には触れたくない…。だって…………ものすごいブサイクじゃったんじゃ…。

 いや、顔が悪いとか良いとかいうのは人の好みだから全然いいのじゃ。例えわしがブスだと思っても、本人がブスだと思っていないならのう。

 だが、彼女…いや、女性だったかも定かではないのだけども、まあまあ小太りじゃった。…ごめん本当は小じゃなくて、太ってた。丸々太ってお相撲さんぐらいで、さらにブサイクじゃった。2重苦じゃ。

 たぶん性格はすごく良い娘だと思うよ、わしは。だって性格まで悪かったら3重苦じゃないか!そんなに度重なる苦しみなんぞあるはずがない!昇らない太陽なんぞない!わしはそう思うのじゃ…。


 脱線しました…すまん、話を戻そう。

 みんな思った…シスパはデブ専どころか、ブス専でもあるなと。そんな男と談義をしても無駄じゃ。話が噛み合ないのじゃからな…、永遠に平行線じゃ。強引に話を切るか…


 「さて、夜も更けた事だし、もうそろそろ寝るかのう、ふあああっあふ」

 と出たくもない欠伸を出しつつ、みんなもそれに同意する。

 シスパは全然談義し足りないという表情を見せるもシブシブそれに従った。


 その夜はたき火をしたまま、皆で取り囲むように寝る。時折たき火の木が大きく弾けるパチーンという音にびっくりする時もあるが、それ以外の小さい小気味良いパチパチと弾ける音は心地よかった。

 森の奥遠くで鳴く獣の遠吠えのような声も聞こえるが全然心配なぞしていない。いざとなったら、マブシをエサにしよう。食い付いているうちに逃げ出そう。その為に連れて来た人員じゃ。


 「ひど!オレ人身御供要員?ひどいっすよ~~、ぐ~~。」

 と、ちょうどわしの思いに連動してマブシが寝言を言ったのにはビックリした。

 わしの思いがちゃんとマブシに届いているのに満足し、わしも眠りに入る。


 みんなが寝静まった深夜わしはふと目を覚まし、体を起こす。

 わし以外はみなスヤスヤと眠っておる。


 すると、たき火に一陣の風が吹き上がり、火の粉が上空へと幻想的に舞い上がる。

 わしは嫌な予感がした…。


 すると、森の静寂を破る轟音が響く。

 「ぶうううううぅぅぅぅぅ~~~~~~ぶっぶっぶっ……スッ」


 …………………………………………屁じゃ。


 わしの嫌な予感はシスパの屁じゃった。長い屁を聞かされたあと小刻みな屁…最後はとどめといわんばかりのすかしっぺ。

 オーケストラじゃ、屁のオーケストラを荘厳な森の中で深夜に聞かされたわし。


 その夜ラ・メーンは襲ってこなかった…。


 何の話じゃった?襲ってこんのか~~~~い!


次は深夜2時に投稿します

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