第209話 ポルポルの実
これはオランウータン村に合併するちょっと前の話になるんじゃが、ちょっと聞いてくれるか?大発見じゃ!このヌル村で大発見したのじゃ!
今は解散してもう無いのじゃが、懐かしのテヘペロ隊と行動しておった時の事じゃった。テヘペロ隊は暇を持て余した子どもや、年寄りに仕事を与えるという名目で薬草採取の任を与え、こき使って利益を搾取するという部隊じゃったが、(ウソじゃ。子ども達の自主的なクラブ活動のようなものじゃよ、本当は)あの日わしもその子ども達と一緒に薬草採取に同行し、わきあいあいと過ごしていた。もちろん自称ジューロー仙人専任右腕こと、レイクも同行。そして最近出番が全然ないが、めっちゃ可愛いリイナ(推定8歳)も一緒じゃった。
「ジューロー様、今日も薬草のノルマ達成しました。これで10日間連続達成です。」
「…わしはノルマなんぞ課してないぞ。」
「いえ、右腕であるわたくしが、ジューロー様の名により、ノルマを子ども達に課していました。ちなみにお年寄りにはさらに倍を!」
「やめて!わしの名前で何課してるの?課さないで!ノルマを。お年寄りは大事にしてね。さらに倍って…クイ○ダービー以来だよ聞いたの。」
「あそこにいる、シノザというおじいちゃんには、倍率どん!さらに倍で48倍のノルマです。」
「ちょ~~~それ篠沢教授?あのおじいちゃん篠沢教授なの?っていうかこのネタ知っている人いるの?不安しかないのじゃ、わし。」
〈ダイジョウブ、ミンナ、スルーヨ〉
リイナがわしの脳内に話しかけてくる……
フォローなのじゃろうが、それはそれで寂しい…
〈モット、サイキンノネタデ!〉
リイナからアドバイスなのか忠告なのかわからないツッコミをもらい、また次の薬草ポイントへ。ノルマを課しているとレイクから聞いて、こころなしか子ども達の目が気になる…恨まれておるのじゃないか…わし。びくびくしながら端っこを歩いて移動する小心者のわし。
新しい薬草ポイントに着く。無事じゃった…
基本的に薬草は取りすぎないようにしている。なくなった薬の補充分だけじゃ。いくら需要があっても取り尽くしてしまっては元も子もないからのう。もちろん自生だけではなく、栽培できるようなら畑で栽培して、生産量をあげ、輸出するつもりじゃが。
「あっ、ジューロー様こんなところにポルポルの実がいっぱい生えてますよ。」
子どもがはしゃぐ。
「そうか、じゃあみんなここで休憩にしてポルポルの実を食べようかのう。
わしが、そういうとみんな一斉にポルポルの実を取って食べ出す。
ポルポルの実というのはラグビーボールぐらいの大きさの木の実なんじゃ。
やしの実みたいに表面は固い皮で守られておるが、中は水分たっぷりの果肉が甘~~い中にも酸味のあるフルーツなのじゃ。わしはあまり食べないのじゃが、子ども達には人気の果物じゃ。
円座になり、皆としゃべりながらポルポルを食べる。
ふと、見ると子ども達はポルポルの実の種をよけて袋にしまっている。そんな種なんか大切そうにしまってどうするのじゃ?と思ってレイクに聞いてみると
「この種を集め、水で洗って数日間天日干しすると、ぽるぽるの実独特の良いにおいがするのです。それを小袋に積めてにおい袋として城下町などで売っているのです。」
との答えが返ってきた。
におい袋?
…ああっそういえばあったわ。
みんなは忘れておると思うが、「第36話 ジジイの展望」の話の中で、ネズミとの交易品目に「におい袋」があったわ。わしもすっかり忘れておった。209話でまさかの173話ぶりの登場とは、におい袋も気配どころか存在を消す程の消臭袋っぷりじゃわい。…全然うまくない例えじゃな、反省!
なんて事を思いながらボーーーっとして見ておったら
《ヒサシブリ、テヘペロ!》
ものすんごいひさしぶりにアイが話しかけてきた。これもみんな忘れておるかもしれんのじゃが、レベルアップした検解能力のAI機能アイちゃんじゃ。まだまだカタカナでカタコトじゃが、たま~~に忘れた頃に登場してくる。
なんじゃ?アイちゃん?何がテヘペロなんじゃ?いきなり…最近はまった…く…えっ?
「なじゃとおおおおおおおおおおお~~~~~~」
わしは唐突に大声で叫び、その場に立ち上がる。今までわきあいあいとしていた子ども達は唖然とした表情でわしを見る。中にはビックリしたというか「何このジイさん恐い…」というような畏怖の表情を浮かべる小さい子もおった。いつものわしなら
「大丈夫じゃ、本当は怖くないんじゃよ!ほらほら往年のミナミの帝王、竹内力ぐらい怖くないんじゃよ。」
「めっちゃ怖いやん!往年どころか今も強面じゃん!」
ぐらいのやり取りをかわすところじゃが、この時は本当にそんな余裕などなかったのじゃ。
検解能力は“テヘペロ”のポーズを取らなくても、頭の中で思うだけでもその物を検索できる機能となったのじゃが、今アイに言われて心の中で“テヘペロ”と思っただけで、勝手に検索しだしたのじゃ。におい袋の元、“種”を!
その種は驚くべき植物だったのじゃ。
わしは手に入れてしもうた、“神の食べ物”をー
よし、これも思わせぶりで引っ張るだけ引っ張るか。そう思ったわしはすぐに“神の食べ物”が出来るか、試行錯誤をして製作に乗り出したのじゃ。それで今回たまたま王城へ王様との謁見があるとの事で、これをお土産として持っていこうと思い立ったのであった。
それにしてもカーンの時の花の種といい、種がかぶっちゃったな~~あの時も油って言わずに引っ張ったからな~~パターン一緒だな~~ワンパターンだな~~~~。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・カカオじゃ!




