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第203話 カーン来村2

 次に向かった先は紙の製作現場じゃ。


 カーンも紙は初めて見るようでこれまた驚きの顔で現場を見学していた。

現場監督のチチパさんに声をかける。


 「チチパさん、こちらがカーンじゃ。」

 「あら、いい男じゃない。よろしく~~~ん。」

「 母さんに近づくな、この野郎!あっ負けたぜ…父さんって呼んでいいか?」


 ……セットなのか?手当たり次第か!この親子は。もはやこの世界初の当たり屋だな…。この間、再婚したって聞いてたのに自由奔放じゃな。詳しくは99話の「ジューロー結婚?」を読み返すのじゃ!


 カーンに紙の用途について説明すると…

 「ぜひ欲しいダス!俺達の村にもぜひ欲しいダス」


 「いや~ん積極的な方。わかりました、すぐに身支度をすませます。」

 「はっ?いや、紙のことダスよ…あなたの事じゃないダスよ。」


 「うむ、カーン、チチパさんを頼むぞ。お主だから頼むのじゃぞ。返却不用じゃ!絶対返すなよ!絶対じゃぞ。」

 何度も何度も念を押しておいた。


 何回断ってもしつこく迫るチチパさんにキレたカーンは男らしく、チチパさんを右上手投げにてしとめ、

 「断る!だが断る!」

 と宣言した。


 こうしてカーンは紙を手に入れた。


※※※※


 次に向かったのは製作部門のイカリ長介の所だ!


 今では村の製作物はすべてこの部門で作ってもらっている。生活用品から大物まで全部じゃ。


 各家庭で使用する椀だったり、家具、ござ、かまどなど細かいものまで全部じゃ。生活必需品など沢山必要なものは、ここで一括で製作したほうが個人個人が作るよりも効率が良いからそうしただけで、もちろん個人個人で作ってもよい。


 本当はそのほうが、色々な形、模様など個性が出ておもしろいのじゃが、人によっては得手不得手があるのじゃ。


 不器用な人や、面倒くさい人など、どうしても作りたくない人などもいるので製作部門で作ってもらっている。


 あと大物は必要な物、受注があった物から順に作り、受注はないが必要になるであろう物は空いた時などや新人教育の為に作られる。荷車だったり、一輪棒だったりがそれじゃな。


 親方の機嫌がよい時はオーダーメイドなども可能じゃ。ゆくゆくは製作部門を増やし、派閥を3つぐらい作り競わすのも良いかもな。


 ここでもカーンは感心しながら見ていた。どん欲にパクろう…参考にしようと紙に書き留めていた。


※※※※


 次は薬草部門じゃ。薬草採取から薬の製造まで、我がオランウータン村の最重要部門じゃ。

 自分達が使うのはもちろん、交易品でも絶対に売り上げ上位に入る稼ぎ頭でもあるのじゃ。

 何より森の中にしか自生しない草もあるので、実質薬草は私たちの森の専売品なのである。


 カーンがわしらの仲間になる最大のメリットの1つが薬といっても過言ではないじゃろう。


 「こうやって作られているんダスか、感謝ダス。」

 と言って、作業をしている小さい子や女性にお礼を言って回っていた。


 薬を使える有り難みを、ちゃんと態度で示す素直な所は好きじゃゾ!


 その他にも、農業、畜産、ドングリパン製造など村の施設を余すとこと無く存分に見学してもらった。


 そして、カーンの見学に便乗してわしもそれとな~~~く新しいオランウータン村の現状を読者に伝えれたのじゃ。あくまでもそれとな~~くじゃぞ!


 そして最後にカーンをわしの家へ招待したのじゃ。


 「どうぞ、楽にしてくれ。横になってもよいぞ。」

 わしの部屋ですでに寛ぎ、横に寝そべってカーンに声をかける。


 「では、遠慮なくダス。」

 そういってカーンはズボンを脱ぎ、横になる。


 こ、こやつ…ズボンまで脱ぐとは本当に遠慮なしじゃな…

 などと思ったが、口には出さずに話をする。


 「カーン達の方はどうじゃ?仕事は順調か?」

 「ああ、言われた通りにやっているダスよ。あれから、近隣の花は刈り尽くしたダスが、元々どこにでもある雑草のような花ダス、各村々の畑などを回って、刈らせてもらったりもしているダス。」


 「ほう、そうなのか。」

 「ああ、村人たちは雑草を刈ってもらって助かり、俺達も油の材料が手に入る。一石二鳥ダスな…いや、そんな損得だけの話ではなく、俺達のような元盗賊、人様に害をなす存在だった俺達が、雑草を刈る事によって、村人に感謝されるようになった事の方が一番の喜びダス。」


 嬉しそうに話すカーンを見てわしも嬉しくなった。


 「仲間達は活き活きしているダスよ。ジューローに会う前と今では大違いダス。みんなジューローに感謝しているダス。人間のクズだった俺達が人間になったってな。」

 カーンはわしに憂いを帯びたなまめかしい目線を送る…


 「だ、ダメじゃ!そんななまめかしい目線を送っても、わしにそんな毛はないのじゃ!」

 「だれが、そんな毛ダスか!俺にも無いダス。なまめかしい目線も送ってないダス!これは…汗が入って潤んだだけダスよ!」


 ほんのジョークじゃったのじゃが…


 「花の種を絞り切ったカスはどうしておる?」

 「ああ、言われた通り一応とってあるダスが…」


 「それを村人にあげると良い、カスとはいえ、まだまだ豊富な栄養素を含んでおる。堆肥にはもってこいじゃて。それでまた肥沃な土地になり、良い作物が育つじゃろう。」


 「そうダスか、それは良い事を聞いた。早速実行するダス。」


 「あの花は生命力が強い雑草並みじゃ、1ヶ月もしたらまたすぐ生えてくるじゃろう。村の花を刈る→油を搾る→搾りかすをあげる→作物が育つの無限ループじゃ。お前達と村人の無限ループでもあるな。これからも人の縁を大切にな!」


 「ふっ、ジジイと知り合ったのも縁ダスしな。」

 「あたり前じゃ、ただし切っても切れない腐れ縁じゃぞ!」


 二人は笑いあった。

 いつまでもいつまでも笑いあった。

 あごがはずれるまで笑いあった。

 最後の方は意地で笑いあった………


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