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第202話 カーン来村

 わしの出家しゅっけ話がやっと沈静化されかかった頃(だれがハゲじゃ!)その男は森の村オランウータンに訪れた。


 「おう!久しぶりじゃのうカーン。元気にしておったか?」


 「お久しぶりダス、ジューロー殿。」

 カーンは懐かしく感じさせる訛りを聞かせながら、重そうな荷を引くカバから降りた。


 「積もる話もあるダスが、とりあえず一番絞りをカバに積めるだけ積めてきたダスよ。」

 そう言ってカバ2匹に引かせてきた荷車の布をはがすと、2人がかりでやっと持てそうな大きな樽が8つ、同行してきた顔のブサイクな元盗賊の男達の手で降ろされた。


 「顔がブサイクなのは関係なくね?」

 とツッコまれたが無視をしておいた。


 「ほう、だいぶ集まったのう。全部じゃないのか?」


 「ああ、今まで絞った全部をまず、ジューロー殿に持ってきたダス。灯り以外の使い方の説明をしてもらわなけばいかんダスからね。」


 「そうじゃな、今日の晩餐を楽しみにしておるがよいのじゃ。びっくりするぞ。こ、こんな食べ物今までだべだごどないダズっていうぐらいじゃぞ!」


 「……絶対言わないダズよ。」

 「ダズ言ってるし。」


 そこに族長のゲタンが現れた。

 「初めましてだな。俺はこのオランウータン村の族長兼、ジューロージジイのお目付役のゲタンだ。ジジイが迷惑をかけていると思うが、俺も迷惑をかけられているから、お相子だな。ガハハハハ。」


 と、陽気に挨拶をしながらカーンとハグする。


 「誰がお目付役じゃ!それに迷惑などかけておらんじゃろ。ちょっとイタズラ好きなだけで…人畜無害なお茶目なジジイじゃ!」


 そんなやりとりをハグされながら聞き入るカーンはふっと笑い、

 「初めましてゲタン族長。俺はカーンダス。元しがない盗賊ダス。お互いジジイに振り回される身ダスが、よろしくお願いするダス。」

 と頭を下げた。


 「もちろん、共存共栄の関係ではあるけれども、上下ではなくあくまでも対等、森の民が堕落していくなら、早々と寝首を狩るだけの準備はしているつもりダスから俺達の事をないがしろにしない事を望むダスよ。」

 カーンはわしと、ゲタンをみながらニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


 「がはははは、それこそ俺達の望む関係というものだ!自分で考えず、他者のいいなりになるだけの愚者では、こちらこそ願い下げだ!逆にお前らが堕落していくなら、こちらもすぐに見切りをつけるぞ。」

 そう言ってゲタンはまた大声で笑う。


 それにつられて、わしとカーンも笑いあう。


 カーンもゲタンも今の短いやり取りで、お互いを気に入ってくれたようでよかったのじゃ。


※※※※


 晩餐が始まる日暮れ時まで、初めて訪れるカーン達にわしが村を案内する。いつもは澄ました顔のカーンはここでは目を見開いて驚いてばかりじゃ。


 「あっあれは何をしているんダスか?」


 「ああ、あれは学校という施設じゃ。ここでは小さい時から計算を教えておる。もちろん大人も仕事が終わったり、空いた時間を利用して皆、足し算、引き算、かけ算、割り算を習うのじゃ。」


 「ま、マジダスか?…この国では計算を覚えたいと思っても、限られた職の人しかわからないのでツテを頼るしか覚える機会がないというのに…。」


 「オランウータンでは必須にしておるよ。仕事に関係なくても日常でも使う機会はあるだろうしな。覚えておいて損はないじゃろう。」


 「欲しい…あの先生が欲しいダス。ぜひ俺たちの村に派遣してくれダス!」

 「だめじゃ!断る!全力で拒否する!」

 わしは間髪いれずに、声を荒げて断る。


 「はやっ…ダメダスか…しょぼ~~んダス。」

 「あの二人はわしの嫁じゃ(ウソ)。だから元盗賊などのむさい男達のところなんぞへ派遣させん!」


 「えっジューローの嫁だったダスか?しかも一夫多妻制?」

 「しっ!この村最大のタブーじゃ。他言無用じゃぞ」


 「誰が嫁だ!」

 バシーンとたたかれ振り向くとエメリさんが顔をほんのり赤くして立っていた。


 「カーン殿、紹介します。わしの2号さんじゃ!」

 「だれが愛人だ!」

 ゴスっとグーパンで殴られた。マジじゃ!マジの顔じゃ。


 「みんなに教えておる先生、エメリさんじゃ。いつもはツンデレなんじゃが、今日はプンプンじゃ!」

 わしは言うだけ言って殴られんようにダッシュした。


 「おっコラ、逃げるな!だれがプンプンだ!いつも怒ってないし、デレた事もないし!」

 「初めまして私はカーンと申すダス。縁あってジューロー殿と一緒に仕事をしております。」


 「お噂はジューロー様からきいておりますわ。初めましてわたしはセイムと申します。」

 セイムさんが寄ってきてくれたのを見計らってわしも戻る。


 「カーン、派遣するのはダメじゃが、そちらから勉強しにくるのは歓迎するぞ。2、3人素養の良い、ついでに顔の良い奴をこちらで研修させ、覚えた所で戻って教えるというのはどうじゃ?そのほうが効率はいいじゃろう。もちろんこちらに滞在してもらうからには、他の仕事もこなしてもらうけどな。」


 「それは良いアイデアダスな!ぜひお願いしたいダス!さっそく今日一緒に付いてきた男達の中から希望者を募るダス。」


 よし、そいつらには筋肉ムキムキな先生を付けてやろう。スパルタ教育を施して立派な、なか●ま筋肉君にしてやろう!


 そんな事を考えながら、次の目的へ歩いて向かった。


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