第201話 ジューロー尊大
「ほほう…それでお主はそれを信じた訳じゃな…」
今わしは、ゲタンの家の居間におる。その居間の真ん中に1つぽつーんと、王様椅子のような豪華な椅子があり、肘掛けに片肘をつけ、足を組み、目の前で頭を下げる族長のゲタンを見下げ、尊大に話かける。
「そうか~~~ゲタンだけはわしを信じてると思ったのにな~~。まさかな~~~、お主がわしの事をそんな風にな~~~~~。」
「い、いやだから違うんだ。信じてるよ、もちろん俺は100%ジューローの事信じてるよ。ジューローが痴呆老人になったら介護する気まんまんだったんだよ、俺。マジでマジで。」
「介護なんかよりな~~、わしにひとこと声でもかけてくれればな~~。5日間も土の中で過ごす事にならなかったんだけどな~~~~、はぁ~~~」
深いため息をつきながら組んだ足をほどき、ゲタンの頭に足を乗せる。
「ぐっ、す、すまん。」
お、足を頭に乗せてもまだ怒らんとは…まだまだいける?
「そういえば、わしが持ってた荷物中に何が入っていたか知ってる?」
「ああ、そういえば荷物を持っていたな…食料か?着替え?」
「ゴミじゃ!」
「えっ?ゴミ?なに?」
「部屋を片付けた時に出たゴミじゃ!わしゃゴミを持って旅に出させられようとしていたんじゃ!まあ、実際は土の中だったのじゃけれども…」
「夜中にゴミを捨てに行くなんて思いもしんかったから…旅立つつもりだったと思われてもしょうがないんじゃ…。」
「しぇからしか!まだ言うか!反省が足りんようじゃなお前は。ゴミをいつ出そうがわしの勝手じゃ。酔いつぶれて、尿意で深夜に起きた時がゴミを捨てにいきたい時じゃったのだ。そういう年頃だったのじゃ!」
「年頃って…ジューローいくつ…」
「まだ逆らうか!このグズが!ペッ。」
「まだクズだったらわかるけど、グズ(愚図)は意味違うだろう…」
「もういい、お前は膀胱4ℓの刑じゃ。今から明日の朝までおしっこを我慢するのじゃ。わしの苦しみを存分に味わうがいい!」
「な、なんという無慈悲な…かお前は。前世はおしっこ漏らした鬼なのか?」
「…あの~もういいですか?二人とも。」
あまりのしょうもない応酬にあきれ果てたジョコが口をはさむ。
ゲタンの家の居間にはわしとゲタンの他にわしが戻ってきたという噂を聞いた者達が仕事の手を休めわざわざ来てくれたのだ。
「まあ、なんだジューローに出て行く意思がなかった事だし、戻って来てくれて喜ばしいことじゃないか!なあ、みんな。」
セコスがいきなりまとめだす。
そのセコスの問いかけに他のみんなも
「ああ、そうだな」
「セコスの言うとおりだ」
などとぎこちない…
………………………みな後ろめたいのだ。そりゃあそうだ、不確かな噂を信じてわしをゴミと一緒に追い出したのじゃ。
よし、これはチャンスじゃ!セイムさんとエメリさんを所望するチャンスじゃ!幸い今は二人ともいないしな。
「ありがとうなぁ、みんな。そんなにわしの帰還を喜んでくれてありがとうな。それで、物は相談なんじゃがなセコス、いやセコスお兄さん。セイムさんとの結婚を許してくれんじゃろうか、どうじゃろう?」
「何馬鹿な事いってるんだ!そんな事はゆるさ…」
「あいてててて…身体が5日も土に埋まっていた身体がああああ…」
みんな下を向いてうつむく。
「この傷を癒すにはセイムさんとエメリさんの優しさだけだと思うのじゃが?どうかのう?みんな。」
「ぐっ、くく」
セコスが苦しい表情をしておる。
「異論はないようじゃな。それでは話をすすめさせてもらうぞ。まずはーーーーーー。」
「そういえば、ジジイを送り出した後だったかな…」
ゲタンが急にしゃべり出した。今までわしが頭に足を置いてもピクリともしなかったのに、その足を払いのけてしゃべり出した。
「ジジイの部屋に俺とセイムとエメリで入ったんだ。」
「何じゃ?急に何を言い出すのじゃ、ゲタン。」
「まあ、最後まで聞け。」
何がいいたいのかわからんが、言われた通りに話を聞く。
「そこで、セイムがおかしいと言い出したのじゃ。ジューロー様は本当は出て行く気などなかったのではと言い出したのだ。」
ほー、そんな事があったのか…ん、わしの部屋…
「ジューローが大切にしていた“卑猥貝コレクション2015”がある、そう言ったのはエメリだったか。ジューロー様が大事にしていた木彫りの裸婦像がある、と言ったのはセイムだったかな…ふっふふふ」
がーーーーーーーーーーん
わしは目の前が真っ暗になった。なぜじゃ…なぜその事が…必至に隠し通してきたわしの趣味全開のコレクションが…
あっそう言えば、宴のあとでなんかこう~酔っぱらっていてムラムラ~~~ときてしまって部屋でこっそり眺めておったのじゃた…
ええじゃないか、わしは見た目はジジイじゃけど中身は健全な20代なんじゃぞ!こんな所には娯楽もないし、そういう発散できるところもないし、勇気もないし…だからつい、出しっぱなしで寝てしまったのじゃ。それが二人に見られてしもうた…
「うおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~」
わしは今まで尊大に椅子にふんぞり返っておったが、まっ赤っかになった顔を両手で覆うように抑え、椅子を転げ落ちて、床を端から端まで転げ回った…気の済むまで転げ回った…
恥ずかしい…これは恥ずかしい…
今まで絶対ばれていないと思って、隠していた物が、モロばれしてた時の心境は、心が破壊されかねない威力じゃ…
それが性的なものであればあるほど威力はハンパない…
そんなわしをニヤニヤしながら見ていたセコスが話かけてきた。
「どうする?そんな恥部をみられたまま、告白するのか?“卑猥貝コレクション2015”なんて持っているのに、結婚してください!って言うのか?」
「やめてええええええええええ、わしのHPはあと1よ~~~~~~~」
こうして長きに渡って一悶着のあった「ジューロー旅に出る」は何事もなかった事にされ終わりを迎えたのだった…




