第197話 ミチミカジューローの部屋
【なあ、ひどいと思わんか?ひどすぎるじゃろう?こんな年端もいかない
ジジイをゴミ袋1つで追い出すのじゃぞ。まったく・・・】
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【なあ?聞こえておるのか?】
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返事はない・・どうやら相手はふんばっておる途中らしい。
「「ふんばってね~~~~~」」
【やっと反応があったわい】
ここはミチとミカの部屋。
相変わらず体育館ぐらいの部屋に水槽のような四角い箱がみっちりと
隙間なく敷き詰められておる部屋じゃ。
ミチはその四角い箱のすきまに器用にはさまっておる。
ミカはその四角い箱を机替わりにして、何か考え事中か?
頬杖を付いて口をあけて、あほ面をさらしておる。
「誰があほ面だ!」
「そうよ、ミカはあほ面なんてしないわ。馬づらなだけよ!」
「ちょっと!馬づらよりまだ、あほ面のほうが良くない?
わたしは馬づらよりあほ面の方が良いわ!ミチ」
「何いってるの、お馬さん可愛いじゃない。ワタシは好きよ、パンダの方が。」
「パンダなのか~~~い!あんた、さりげなくわたしをディスってるでしょう?
ねえミチ?」
わいのわいの楽しそうじゃ。
わしの事ほったらかしで楽しそうじゃ・・
【あの~~もうそろそろよいかのう?わしの話も聞いてもらって】
「あら、ジューローまだいたの?」
【ひど!あんたらから呼んでおいて。またわしを弄ぶのか?
弄ぶつもりじゃろう・・・よし、わかったわしも覚悟を決めた!
ひとはだ脱ごう、いや、全部脱ごう!】
「「脱がんでええ!」」
ミチミカ同時にツッコまれる。
そうなのじゃ。実はわしはオランウータン村を強制的に追い出された後、自暴自棄になり森をさまよっておる時に、突如空から飛来したでっかいヤシの実に当たって気を失い、起きたらまたこの部屋に召還されておったのじゃ。まったく、もっと普通に呼ばんか!
【前回の人殺しまくった熊のヌイグミじゃなくて安心じゃが・・何じゃ今回のは?】
前回はある星で大量虐殺をした魔物の剥製に憑依させられていたのじゃが、今回は・・・・何かおじさんの人形のような・・・はて、どこかで見たことあるような・・・
「よくぞ聞いてくれました。今回はある星からの拾い物で、詳しくはわからないんだけど確か・・・スーパーひ○しくん人形って言ってたかな。」
【えーーーっ!詳しくわからないって言うわりには、がっつり名前知っていますがな。地球?地球でしょ拾ったの?】
「え~っと、この白いのがひとし君人形・・・」
【やめ~~い!みなまで言うな。ちゃんとセットで拾ってきてるやないか~い!しかもわしのスーパーな赤い方は、得点2倍やで!】
そんなスーパーひ○しくん人形に入ったわしは、ミチとミカに森を追い出された愚痴を聞いてもらいたかったのじゃが、反応が薄いのじゃ。もっと、同情してくれてもよいじゃろうが、慰めてくれても良いじゃろうが!
「そんなの素直に、ただいま~~って言えばすむことじゃない。」
ミチがあっさり言う。
【うむ、確かにわしもそう思うのじゃが・・・みんなに涙ながらに見送られてはすぐに帰りづらいじゃろ。】
「そんな事言ってる場合じゃないんでしょ?じゃあどうするの?本当に出ていくの?」
【・・・わしは出ていっても、行くところがないんじゃ。かわいそうな、かわいいジジイなんじゃ。だからここに1週間、いや3日でも良いから泊めてくれんかのう。】
「ダメよ」ミカが言う。
【そこをなんとか。あっわし炊事洗濯が得意じゃ。家事えもんって言われてた・・・】
「ダメよ。始めは3日って言ってズルズル1ヵ月、2ヵ月と居座るのよ。甲斐性のない男っていうのはいつもそうよ。」
【えっ、ちょミカさん?なに?】
「何年待たされたと思うの!私がその気になって迫るとすぐにおじけづく!まったく・・・」
【・・・いや、その過去の男の話は置いておいてわしの話を聞いてほしいのじゃが・・】
「ジューロー今回の事はチャンスよ!この機会を利用して、ラノベ展開のチャンスにするのよ!」
【ほほう、じっくり聞きましょうかのう。ミチさん、ラノベ展開とやらを、ふふふふふ】
「ええか、まず1案目や。このまま2年たった後に、オランウータン村が帝都軍に蹂躙されるんや。セイムさんがファルコンに襲われそうになった時に黒王号に乗ったジューローがさっそうと・・・・」
【それ第2部や!北斗の●の2部やないか~い!訴えられるからあかん。それ以上はあかん!】
「なんや、もうあったのか。じゃあ2案目や」
【ちょっとミチさん・・・自信満々だけど頼むよ。もっとオリジナリティある案をよろしくね。】
「失礼ね、私はいつでもまじめに提案しているわ。ただオリジナルをリスペクトし過ぎているだけよ。」
【リスペクトはあかん!パクリと紙一重や!だいたい指摘された奴はリスペクトって言っておけばセーフだと思っている発想自体がちょっと逝っちゃてる感があるのじゃ!】
「大丈夫!これは自信あるわ。まず机の中から飛び出してくるのよ。自分は22世紀からきたと言えばすべて丸く収まるわ、どう?」
【・・・・・ありじゃな。未来からきた設定はありじゃな。】
「ダメに決まってるでしょ!何言ってるの、ミチもジューローも!
一番やっちゃいけない奴よ!机の引き出しから登場するのは!」
「パーマ●?パー●ンだったかしら。」
【ミチ違うわ!オバケの●太郎じゃ!そうじゃろミカ?】
「ボケ?本当なのそれ?わかりづらいわ~~そのボケ・・・世界不思議発●よ!」
【ここで?ここで、スーパーひとしくんか?だからわし、スーパーひとしくん人形なのか?】
すべてがつながりかけた今、急にわしは眠気に襲われる・・・
精神体なのに眠気とはこれいかに・・・。
「どうやら時間のようね。」
「これ以上ここに居すぎると、精神と肉体をつなぎ止めている縁が切れて肉体が消滅してしまうわ。もうお開きね、今日は」
「それでは、最後に1つ教えてあげるは、ジューロー。
あなたが村を追い出されたのは、しくまれた罠だったのよ。」
【な・・・に・・誰が・・・】
「あなたが戻る頃には解決してるんじゃない?あの娘達のおかげで。」
ミカの最後の言葉を聞いてすぐにわしの意識は消える・・・・・
あの娘?・・・達?
またわしは、深淵に沈み込む感覚に身を包まれる同時に、意識も沈んでいく・・・・・




