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第196話 ジューローその後

“オランウータン”村出身、ジューロー60歳(推定) 職業無職。

家なし、金なし。持ち物、ゴミ袋(中身残飯など)


・・・・・・・・・・どうしたらよい?わし


夜中にトイレに起きただけなのに、

これから、そっと1人で森を旅立つ為に抜け出すのだと思われ

明け方近かったのに、皆で見送られたわし・・・・・


どんだけ上昇志向強いねん!そんなんない!

上を目指す気なんてさらさらない!

60歳|(推定)過ぎて・・・・


見送られた後、すぐに言えばよかったって?

できるかいそんな事。

わしはもう膀胱がパンパンじゃったのじゃ。


パンパンすぎて、違う方から固形物も出そうになってしまうほどだったのじゃ。

だから誤解を解く前に出したかったのじゃ。


半分パニックってたのじゃ。

だから、見送られる体で出て、出してから戻ろうと思ったのじゃ。


だってそうじゃろ、あのまま誤解を解こうと長々と説明している間に

出てしもうたら・・・・・

漏らして出て行くならいいのじゃが、

漏らして残らないと、いかんのじゃよ!


漏らしたまま村に残留することになってみい。

みな優しいから、ものすごい気を遣ってくれるじゃろう。


ものすごい気遣いのまま一生を過ごす事になるであろう。

耐えられるか?


それならいっそ、こなきジジイならず、もらすジジイと揶揄された方がましじゃ!

・・・・・・・・ごめんいやじゃ!


だから、出すもの出して村に戻ろうと思ったのじゃが・・・・

朝を迎えて明るくなったら、なにか急に冷めてしまったというか、

我に返ってしまうというか・・・


簡単に言うと恥ずかしくなって、気恥ずかしくなって

今さら戻りづらくなっちゃいましたっていうかんじじゃ。


やっぱり今さら帰れん!


もうわしはこのまま野たれ死ぬしかないのか・・・・・・


※※※※


「いっちまったな・・・・・」

「ああ・・・・」

「振り向きもしずにいっちまったな・・」

「ああ・・振り向きもしなかった・・」


「過去は振り返らないってことじゃないか。」

「俺達はジューロー様に甘えてばかりいたからな・・」

「今度は、俺達が頑張らないとな・・」


「ありがとう~~~ジューロー様!」

「俺達・・俺達ジューロー様に頼らないで頑張るよ~~」

「だから・・だから立派になったらまた会いに来てくれよ~~」


ジューローを見送りながら涙する者達も多かったという。

本当ならずっと一緒に森のためにいて欲しかった。


だけどジューロー様は森の民だけではなく、もっと広い世界が、

もっと多くの人がジューロー様の事を待っているんだ。

だから引き止めなかった。

いや、引き止められなかったんだ・・・。


自分の意思で出て行こうとするジューロー様を、

引き止めたならきっと留まってくれただろう。


しかし、いつまでもそんな優しいジューロー様に甘えていてはいけない。

今こそ、オランウータン村を立ち上げた今だからこそ

ジューロー様がいなくても、みんなで頑張っていく時だったのではないか。


だから、悲しいけど見送った・・・・。

だから、みんなで見送ったのだ・・・・。


「寂しくなるな・・・セコス。」

「なっ、別に・・・さみしくねーよ。ジョコなんて泣いてるじゃねーかよ。」

「ああ、俺は寂しいからな・・。」

「・・そうだな。やっぱり寂しいな・・・」


俺とセコスはいつまでもジューロー様が行かれた道を見ていた。

ジューロー様が行かれた真っ直ぐな道をいつか自分も!いつまでも見ていた。


ジューローの家でたたずむゲタンとセイム、エメリ

「行ってしまいやがったな・・・ジジイ」

「・・・・」無言の二人


ジューローの建てたばかりの家に入る。

「せっかく家が欲しいっていうから、こんなに立派なの建ててやったのに

無駄にしちまいやがって・・・ばかやろうが・・・」


悪態をつくゲタンを二人はなにも言わずに見守る。

本当はゲタン族長が一番さみしいのだ。

ジューロー様とはいつもけんかばかりしていたのだが、

けんかするほど仲がいいとは本当の事だな・・・と二人は思う。


ジューローが出ていった部屋に入る・・・・


本当についさっきまでいたかのような・・・・・

ちらかり具合?

「ねえ、エメリさんおかしくない?」

「ええ・・何かおかしいような・・あっあれ。」


エメリが近寄り拾いあげる・・

「あいつが大切にしていた“卑猥貝コレクション2015”がある・・・」


「あっここには、ジューロー様が大事にしていた木彫りの裸婦像。」

セイムが拾いあげる・・・・


「何で知っておるのじゃ?二人とも・・。まあそれは良いとして、全部置いていったんじゃないのか・・過去を振り返らないという事を込めて。」

ゲタンが推理する。


この部屋はそのままにしておこう。

いつでもジューロー様が帰ってこられてもいいように。

いつでもジューロー様の思い出にひたれるように・・・・


大事にしていた“卑猥貝コレクション2015”

隠していた“木彫りの裸婦像”を見られた事を知らぬまま・・

最も知られたくない大好きな2人に見られた事を知らぬまま・・


ジューローはどこへ・・・・


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