第175話 交流また宴会
夜、森のみんなと集まってご飯を食べた。
その時、昼間の報告を聞く。
「あのね、ボクたちは子ども達と鬼ごっこ、隠れん坊、ジャンケンなんかをして
遊んだよ。みんなおもしろいって喜んでくれたし、ボクもみんなともっと仲良し
になれたよ。」
レイクが楽しそうに、その時の状況を話してくれる。さすが、文化普及担当じゃ。
「ワタシは、ここでもジャンケンの神と呼ばれるようになったわ。・・・
たくさん巻き上げてやったわ!」
とピチュは戦利品を見せる。
食い物ばっかりじゃ。また太るぞ!
森に帰ったらまた激しいダイエットコースじゃな。
「聞いてくれよ、俺なんかもうスター扱いだぜ!一輪棒を
見せたらビックリしてたが、その一輪棒で俺のクールな
アクロバッティックな技を見せたら、そりゃあもう、
顎がはずれるんじゃないかってぐらいビックリしてたよ。
おれをもう、上にも下にも置かない扱いでウハウハよ。」
・・・どっちじゃ?結局どっちに置かれたのじゃ?空中か?
「最初みた時は、イロモノ担当だと思っていたのにカッコいいです。
なんてモテモテだったんですよ。」
マブシが得意満面に言ってくる。
わしは食べていた肉についている尖った骨をマブシの喉元に素早くあてがう。
「許さん!わしを差し置いてモテモテなぞ。お前を、この地の土へと還して
やろうか?」
「こわっ、本気でやりそうでこわっ!」
喉元にあてがった骨が突き刺さり、血がしたたる・・・青ざめたマブシが引いておる。
マジ引きじゃ。
「ジョーダンじゃ、ジョーダンじゃよ・・・」
「いや、全然目が笑ってないっすよ。」
「ジョコはどうしてたんじゃ?」
「はい、わたしは森から持ってきていた魔改造した道具を見せていましたが、
このアルーン村にも、ゴスン殿のスペード商会から少しづつ入ってきているよう
でしたね。」
「そうか、そういえばゴスンの事を忘れておったわい。スペード商会がこの村で
商売をしておるのじゃった。じゃあ、改良された道具があってもおかしくないのう。」
「リューゴスは、どうしてた?」
「・・・・寝てた・・・」
「えっ?寝てたの?」
「・・・・・人見知りだから」
「そうかぁ、もうちょっと頑張ろうね」
優しく言ってあげた。
「それにしても、このブタとニワトリのお肉美味しいわね。
昨日も思ったけどこんなに柔らかい肉、森の獣とは全然違うわね。」
ピチュがバクバク食べておる。
・・・太るぞ!
・・・また丸々と太るぞ!
確かにうまい!うまいが・・・日本の食生活の記憶があるわしには物足りん。
もっと調理方法を教えれば、美味しくなるのに・・・
そこに・・・
「どうですか、リューゴス族長。料理の方は?」
シュトラが伺いにきた。
「すんごくうまいぞ。だが、これを使えばもっっっっとうまいぞ!」
と魚醤を見せる。
「ちょっと台所を借りるぞ。」
とわしは言い、台所で食事を作ってくれていた奥さん達や、
近所の人達を集めて魚醤や砂糖などを使った料理の方法を教えた。
てりやきや、焼き鳥など。
それを携えて食卓に戻り、シュトラに食べさした。
「うまい!うまいぞおおおおおお。
この甘辛いタレといい、料理に砂糖を使うとは・・・それにこの串にさした
鶏肉、野菜、鶏肉なんという発想。うまいです。う゛ばいでず。」
・・・きちゃない。口に頬張りながらしゃべるでない。
奥さん達にも大好評だったのじゃ。
これを機に森の恵みも広めておこうと思って、豆や砂糖棒、
ドングリパンなども振る舞っておいた。いずれも好評なようでよかったのじゃ。
そしてまた、噂を聞きつけてオペロンの家にきた村人達と宴会になり、
さんざん飲み食いして夜が更けたのだ。
あっそうじゃ、その宴会の途中でシュトラが
「そういえば、オペロン、サイロンの親子はどこに・・・・・」
わしは人差し指を口にあてて
「シッ!聞かない方がお前のためじゃ・・・」
「えっ・・・そ、そうなんですか。」
「それでも聞きたいじゃと!欲しがりじゃのうシュトラは。しょうがないのう」
「い、いえ、わ、わたしは・・」
「わかった、わかった、じゃが消されてもしらんぞ。
まあ、わしが消すんじゃけどな。カカカカ!」
「こわっ!その高笑いこわっ、聞きたくない・・」
「実わ・・地下で拷問じゃ・・・」
「へ? 地下?」
「地下に拷問する部屋があってのう。そこで今ごろ・・・くっくくく」
「へっ?へっ?・・それは本当で・・」
「信じるか信じないか?それはあなた次第です!」
トゥルルルルッ♪ トゥルルルル♪ トゥルルルルルッルルルルルッ
どこかで聞いたメロディーを口ずさみ不気味にシュトラの前からお暇する。
残されたシュトラは青ざめた表情でお酒をあおった。何杯も何杯もお酒をあおった。
ず~~っと黙っておったが、実はオペロン親子は
この村から出ていってもらったのじゃ。
他の村で暮らしていける十分な貨幣を持たせて。
親子の罪を村人に裁いてもらってもよかったのじゃが・・・
まあむごいことになるのは目に見えておっるのでな・・
それほど、村人にひどい事をしておったのじゃが、
今まで自覚がなかったのだから困ったものじゃ。
すべて失って、初めてそのことに気づくとは。
だからわしが、お前の罪は村人に裁いてもらうと伝えると、
怯えまくって泣いて懇願したので、わしの勝手な判断で逃がしたのじゃ。
これを機に立ち直るか、落ちぶれるかはオペロン次第じゃ!
宴もたけなわ、寝むたくなり、途中で退席したのじゃ。
寝室に向かう途中にシュトラが何やら、
部屋のあちこちを徘徊しておる。どうやら地下室を探しておるらしい
・・・すまん嘘じゃ!
とは、いまさら本当の事をいえず、そのまま見ないことにしてわしは寝た。
翌日、探し疲れて、地べたで憔悴し切ってうなだれておった
シュトラを見つけて本当の事を教えておいた。
これで今日はぐっすり寝られるじゃろう。
・・まだ朝じゃがな・・・




