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第173話 族長就任

「だっだめじゃ・・・セイムさん。うそじゃ・・・まさか、そんな事まで・・

そうじゃったのか。目から豚汁じゃ・・・」


はっっっっっっ

目が覚める・・・

夢じゃったのか。すごく生々しい夢じゃったのじゃ。

まさかそんな風になっておるとは。


寝床から起き上がり、他の部屋に行くが誰もおらん。

「あれっ、皆どこへいったのじゃ。」

ジョコ、マブシ、リューゴス、ピチュ、レイクを探すも誰も部屋にいない。


しょうがないので外に出るのじゃ。


うわぁっっっっっびっくりしたのじゃ。

家を出てすぐの所に男達8人がしゃがんで、わしを待ちかまえておったのじゃ。


「お待ちしておりましたジューロー族長」

一番に声をかけてきたのはシュトラじゃ。

声をかけたと同時に皆頭を下げる。


「早速ですが、昨日この8人で村の将来の事について話し合いをしました。」


ああっそういえばわしが話を詰めてこいっていったけな確か。忘れてはおらんよ。

ちょっと寝起きじゃからぶっくりしただけじゃよ。


「では、私が代表してその意見を発表させていただきます。」

シュトラがまとめ役として、昨日の夜から徹夜で話し合った概要を説明しだした。


暴力への対応、村人のするべき事・役割、などを話し合ったが、

やはり朝までにという短い時間では多くを詰めれなかったのか、

まだまだな部分が多かった。

しかし、わしはそれをあえて指摘せずに全部黙って聞いた。


シュトラが全部話し終えた時、

「どうだったでしょうか?ジューロー様」

と、わしを伺うように答えを求めた。


「シュトラ、それ以外の者達も、存分に話しあったか?肯定も否定もあったか?

そこに喜びも怒りもあったか?邪な考えは無かったか?

私利私欲を優先していなかったか?」


皆黙ってわしの話しを聞く。


「その話しは村人、村を心から想っての考えじゃったか?」


みなお互いを見合ってうなづく。


「それでは、わしの言う事はなにもない。

おまえ達が村の事を想い、考え、話し合って決めた事に

わしが言う事はなにもない。」


みな、驚いた顔をするも、すぐにいい笑顔になり笑いあう。


よし、このへんで・・・・・・

わしゃトイレに行こう!

寝起きで膀胱パンパンじゃ!

わしゃトイレに行きたいのじゃ!

さっきからず~っと。


そっとその場を離れようとすると

「ジューロー様こちらへ」

シュトラに呼び止められる。


えっマジで?わっわかった。

わかったから、あまり乱暴しないで・・・

もれちゃうから・・・

シュトラに連れられ敷地内を通り外に出ると・・・


村人が待ち受けていたのじゃ。

大勢の村人がこのオペロンの屋敷の前にずら~~っと。


その光景に、一瞬襲われるんでは・・・

たこ殴りのぼっこぼこにされるのでは・・・と

よぎってしまったわしは恥ずかしい。


村人全員がわしが来たと同時にしゃがみ親愛のポーズをとる。

そしてシュトラ以下8人もしゃがみ、

「我らアルーンの民、ジューロー殿を族長としてお迎えします。」

と宣誓したのじゃ。


えっ、マジで。いや、そりゃあ昨日はノリで族長って言っちゃいましたけど・・・

あくまでもノリで全然そんな気ないよ。

それに・・今わし内股よ。

おしっこしたくて内股なんじゃよ。

膀胱パンパンなんじゃよ。


それでもよいのか?と問いかけたくなったが・・・我慢じゃ。

おしっこも我慢じゃ!


早く終わらせたいのもあって、返事を返す

「わかった。族長を引き受けよう。」


わあああああと歓声があがり、村人が喜ぶ。皆笑顔で抱き合う。

歓声も落ち着き、辺りが静まりかえった時、わしが改めて発言する。


「それでは族長として初めての命令じゃ。

族長代理はこのシュトラとする。そして族長補佐としてこの7人を任命。」


シュトラと7人は驚いて顔をみやる。


「この村の運営はすべて、この7人が行うこととする。よいか?」


「そ、それは実質私が族長・・という事になるのでは・・・」

シュトラが驚きわしに聞いてくる。


「族長のわしは、ほとんど森の民の運営に関わり

この村に滞在できるのは少ないであろう。だからこの8人に村を任せる。」


村人が皆わしの話しに聞き入る。


「しかし、この族長代理は約500日で任期終了じゃ。また選び直すことにする。

もちろん村人の合意があれば、シュトラがまた族長代理となる事も可能じゃ。

その逆に、村の為にではなく、私利私欲の為に不正を行った証拠があれば、

500日を待たずに解任する事もできる事とするぞ。」


村人がわしの提案を聞きザワつく。


「しかし、ジューロー様達がこの村に滞在していただけないとすれば、

もし暴力にさらされたら・・・どうすれば・・」


村人の中から不安の声があがる。


「うむ、その事については、この8人に昨夜話し合ってもらった。」


シュトラが前に出る。

「その件だが・・村を場所で区切り、その区切りから一定の人を交代で出し合い

防衛する自警団のようなシステムを作り上げようと思う。」


「自警団?」


「ああ、まだ詰めはこれからだが、戦いを学び、村人が自分達でこの村を守っていけるように。

1人1人がこの村を守っていけるようにがんばろう!」


シュトラが声を荒げると、

興奮した村人たちが歓声をあげる!


その歓声にわしの膀胱も悲鳴をあげる。

やっやばい、この歓声のビミョーな振動が

パンパンの膀胱を刺激するのじゃ。


やめてくれ~~~~~~。

とは言えん・・・・

この盛り上がりに水を差すことは言えん。

そっとじゃ、そっと離れよう。


内股ですり足でそっとその場を離れようとしたら・・・

「どこに行くのです?ジューロー様、最後に皆を勇気づける言葉をお願いします。」

とシュトラに後ろからガッと肩を捕まれたのじゃ・・・・


やっやめて、今揺さぶらないで・・・・


もう一度ゆっくり村人達の前に出る。


みな期待のまなざしでわしを見る。

わしの言葉を待っておる。

さあ、早く!早く族長のお言葉を!

とシュトラが急かす。


わしは深呼吸をし、気持ちを落ち着ける

そして静まりかえった村人の前で

厳かに、それでいて、しとやかに言った。


「トイレいっていい?」


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