第170話 オペロン登場
わしらは周りを屈強な男達2、30人に囲まれた。
最初はこの村にも、警察のような治安維持部隊のがいるのだったら、
おとなしく従ってもよいかなとも思ったのじゃが・・・・
さっき、リーダーらしき奴がサルロンにまっ先に近づき、
「坊ちゃん大丈夫ですか?おケガはないですか?」と言っておったのじゃ。
なんじゃ、治安部隊じゃないのか?
「お前等は何じゃ?何の集団だ。」
「ふん、下賤な森の民か。俺達はこの村の治安を維持しているオペロン隊だ。」
「オペロン?族長の名前じゃないのか?それは。」
「ジジイ!様を付けろ!オペロン様だ!俺達はオペロン様に雇われた私兵だ!」
なんじゃ、全然村の治安関係ないじゃん。
いや、ある意味オペロン一族だけを守っているのだから関係なくはないか・・・
「ジジイ、暴れるのはやめて大人しく俺達に付いて来い!」
「嫌だと言ったら?」
「ふん、無理矢理力づくでも連れていくに決まっているだろう。」
「やってみろ!と言ったら?」
「なに~~~調子に乗るなよジジイ。」
しばらくその場で睨みあう。
すると、横から部下が・・・
「隊長、サルロン様の横に直撃したであろう石がありました。」
あっあれわしが投げた奴じゃ・・・アイにそそのかされて・・・
また、横から違う部下から、隊長に耳打ちをされる。
「ほう・・・・つまり・・バサ、ドゴッ、コン、キン、カーンと
するとここかな?」
と、隊長はサルロンに当たった擬音を逆再生で順繰りに指差していき、
最後にその指はわしの前で止まった。
やば、完全に誰かに見られていたのじゃ。
見た人がチクったのじゃ!
「よし、付いていこう。皆、抵抗するなよ、おとなしく付いていこう!」
わしらは捕まった。
※※※※
連れて行かれたのはデカイ石の家じゃ・・・
城まではいかないが、そこそこ大きい家じゃ、敷地も広い。
まわりは壁で囲まれて隔離されておる。
わしらは、外の中庭みたいなところの真ん中に集められた。
その後ろに男達は並ぶ。
しばらくすると、50歳代とおもわれる、太ったおっさんと、
サルロンが家の中から出てきた・・・
コイツがオペロンか・・・・顔はちょびひげに、サイドのみ髪を残した
どこからおでこで、どこから頭皮なんじゃという難題をもった頭じゃった。
サルロンそっくりじゃ!いや、サルロンがオペロンに似ておるのじゃな。
DNA鑑定をしなくても、親子とわかるレベルじや。おそるべしオペロン遺伝子!
そのオペロンの第一声が・・・・
「何じゃ、このこ汚い連中は?この場にいる事自体吐き気がするわい。」
「父さん、こいつらが俺に襲いかかってきたんだ・・無抵抗の俺に・・」
サルロンがあることないこと父親に吹聴する。
まったく、村のなかであれほど、傍若無人な行いをして
よく平気で言えるものじゃのう?
あきれてしばらく、このバカの話に聞き入ってしまったわい。
「こんな汚い下賤の者に、このオペロンの息子が侮辱されたと・・・許せんな。」
「そうだ、この俺が侮辱されたなんて、口惜しいよ・・・・・」
二人とも嫌な顔じゃな・・・ブッサイクじゃ・・・
身も心も醜く歪んでおる。さて、どうするか・・・と思ったら、
家の奥のほうから声が聞こえる。
「オペロン、オペロン、どこだ!族長!」
歳はサイロンと同じくらいか、20代前半といった感じの好青年に見える。
段々近づいてきて、オペロンを見つける。
見つけるやいなや、オペロンに詰め寄り
「どういう事だ!また税を徴収するとは!この間上げたばかりじゃないか!」
「また、お前か・・・シュトラ勝手に入ってくるな。」
「それだけじゃない、今日もこのバカ息子が商売の邪魔をしてきた。」
「税をはらえないような村人なんかが商売をするんじゃない!あたりまえの事だろうが?」
「お前の前回の増税で払えなくなった村人がどんなに多い事か!」
「そんな奴はいらん!出て行ってもらうだけだ!」
なんか、この会話だけでもオペロンがどんな族長かわかるのう。
村人からしぼれるだけしぼって、息子の半グレ集団で嫌がらせをして
問題を起こさせて、私兵で無理矢理押さえつけるか・・・・
どうしようもないクソ親子じゃな。
「ええい、たたき出せ!二度とくるな!お前が前族長の息子じゃから
会ってやっているが、これ以上逆らうなら始末するぞ!」
シュトラといわれる男は私兵に両脇を抱えられてつまみ出されたが、
最後まで苦情を言い続けた。
「いまいましい奴じゃ、まったく!」
怒り修まらずといった感じでイスに座り直す。
その怒りの矛先がわしらに・・・・
「だいたい、何で森の民なんて下賤な者達が、わしの村に自由に出入りしておるんだ。
村人以外はいれないようにしてしまえ。」
「オペロンと言ったか、わしは森からわざわざやってきたジューローじゃ。
スペード商会のゴスンの依頼でやってきたのじゃ。」
「ゴスン・・・ああ、あいつか。ふん、そんな話忘れたわ!」
あっそ、まあ忘れたなら別にこっちからは用はない。
一応ゴスンの義理は果たしたからのう。
「森の民がわしにたかりに来たか!まったくおまえらの乞食根性にはあきれかえるわ。
わしが逆の立場なら恥ずかしくてこの村には入ってこれんぞ。」
と言い、下品に笑い出す。
するとそれに呼応したかのように、周りのわしらを囲んでおる男たちも
軽蔑の眼差しで笑う。
怒りの形相で立ち上がろうとしたジョコをわしは手で制し、座らせる。
「そうか、じゃあ用がないようならわしらは、これで失礼するぞ。」
わしがそう言うと・・・
オペロンは高笑いしだした。
「わははははははは、おもしろい事を言うなジジイ。
騒ぎを起こして用がないから帰るとは、さすがに礼儀知らずの田舎者だ。」
手に持っていた、器の液体をわしらに盛大にぶちまける!
べちゃ~~!
かけられた服からアルコールの臭いが立ちこめる。
酒か・・・こんな時間から酔っておるのか?
わしが、オペロンを睨みつける。
それを見て、まわりの私兵がざわつく。
いざとなったら押さえつけようと身構え出す。
オペロンが声を発する・・・・
「死刑!」




