第165話 カーン
丘の上にマントをなびかせて、格好つけて立つ男が1人おるので、
ひきずりおろすべくわしらは、ゆっくりとダチョウに乗って近づく。
すると丘の脇、両側からむさくるしい男達がわんさかわんさか沸いて出てきた。
各々武器を持って、わしらの方に向かって歩いてきた。
おい、50人どころか70、80・・・へたすると100人ぐらいいないか?
なにげにピンチじゃ。よし逃げよう!すぐ逃げよう!
と考えたのを知ってか知らずか、丘の上の男が叫んだ。
「俺がカーンダス。ジジイお前か!俺と話したいというのは!」
えっカーンダスって・・聞き間違えかな・・・カーンじゃないの?
「わしは森の民ジューローだ!お主と直々に話したい!」
「わかった!だがジジイ一人でこちらに来るダス!」
えっダスって・・なまり?
「わかった、今からわし一人で行く。」
「ジューロー殿、せめてわたしがお供を!」ジョコが進言する。
「いや、わし1人で大丈夫じゃ。打ち合わせ通り、お主達は森に向かってくれ。」
と伝え、ダチョウに乗り、1人で丘に近づく。
近づくわしを、むさくるしい男たちが取り囲んで威嚇してくる。
メンチじゃ、この世界にもメンチがあったんじゃ。
そんな彼らを優しく諭すわし。
「くさっ、くっさ~~~~。あ~~くさ、くっさいわ~~こっちに向かって
息を吐かないでくれんか?くっさいでのう。」
とりあえず、遠慮気味に言ってあげた。
わしは優しいのじゃ。
鼻毛が出ている人に向かって、面と向かって
「鼻毛がハッスルしすぎじゃぞ!もうちょっと落ち着くのじゃ!」
とは言えないタイプじゃ。
それなのに・・・
「じじいいいいい、ふざけんなよ。今すぐ殺してもいいんだぞ~~」
と脅してきたわ。あ~~こわ。
「くっさ、ドブの匂いじゃ。1週間便秘の時のおならの臭いじゃな。
お前の口の臭いは。良く見たらお前、尻みたいな顔じゃな。」
顔、真っ赤かにしてぷるぷるしだした男は、信じられん事に
こんなか弱いジジイに向かって剣を振り上げたのじゃ!
やっやられる~~~~~と思った時、
上からわしに近づく人の影が見えた・・・・
わしと口の臭い男の前にカーンが着地する。上から飛び降りたのだ。
カーンは身長180cmぐらいのがっちりした体型。
顔はananなんかで、抱かれたい男2年連続1位を取っていそうなイケメンだった。
男からみても格好よかった。
もっと男っぽい毛むくじゃらなムサイ男だと思っていたのに
裏切られた気持ちじゃ。
いや、むしろわしの心を踏みにじったのじゃ。
敵じゃ!このイケメンは敵じゃ!
口の臭い男を制止してカーンは
「ジイさんは俺たちを挑発しにきたダスか?それとも話し合いにきたダスか?」
・・・この訛りはわしの、いや、世界の全ての男を安堵させる要素じゃ。
せっかくカッコイイのに台無しじゃな。
・・・ダスってwwww
「すまないのう。あまりにも臭くて本音が出てしまったのじゃ、すまない。」
紳士に謝る。
カーンは周りを囲むムサい男達をアゴで場所を開けるように指示を出し、
その場にイスを2つ用意させた。
「どうぞ、座ってください。」
わしを座らせたカーンは部下に指示を出し、
半径10m以内に近づかないように指示を出した。
「今の所はあなたに危害を加える気は無いダス。今の所はね・・・
で、話したい事とは?」
わしはあご髭をさわるジェスチャーをして目の前のカーンをじっと見る。
遠くの方から、ジジイあご髭ないだろ!というツッコミが聞こえるも
目の前のカーンをじっと見る。なかなかの好青年じゃ。
「なぜ盗賊に?」と、つい聞いてみた。
「それが、ジイさんの話したいことダスか? なら話す事は何もないダス」
カーンは面倒くさそうな顔になり、イスを立ち上がろうとする。
「わしの部下にならんか?」
は?という顔になる。
「正確には、わしの仲間にならんか?」
は?何言ってるんだジジイという顔になる。
「お前やお前の仲間、カーン一味をすべてまるごと丸っと面倒をみよう。どうじゃ?」
「何言ってるんダス、ジジイ。」真顔になってイスに座り直すカーン。
「今、ざっとみたところ全員で100名弱か。これだけ食わしていくのは大変だろ。
どれだけの村を襲えば満たされるのじゃ?ん。」
「・・・・・・・・」
「しかも、今までのように村を襲ってばかりでは、警戒されるし、へたすると
王城から討伐命令がくだされるかもしれん。100名の大所帯では遅からず暴徒と
化すかもしれんしのう。まあお主なら500人ぐらいはまとめれそうじゃがな。
おせじじゃよ。ふふふ。」
「・・・ジイさんは俺以上だっていいたいダスか? ジイさんがトップになれば
もっとうまく盗賊がやれるっていいたいダスか?」
「わしなら、千、万、国ごとまとめる事も容易じゃよ。」
「・・たいしたホラ吹きジイさんだ・・口だけなら何ともいえる。」
奥からぶっさいくな屈強な男2人が現れる。
「頭、この大ぼらふきのジイさんなんて俺がタタキ切ってやりますわ。」
「俺たちなら1発だろ、こんなジイさん、へへへ」
え~~~力づくかよ~~~面倒くさい。
ジョコとか、リューゴスにやらせたいが、今ここに居ないしな~~
「お前等下がっているダス。このジイさん強えええぞ。
たぶん俺と互角ぐらいダス。」
「えっ頭に・・そんな事ないでしょう。」
少しビビったか、後ずさりする。
「いい、お前等は下がっていろダス。まだ話しの途中だ。」
二人はすごすごと後ろに引き返す。
「俺たちが、お前等の仲間になったら何をすればいいんダスか?」
「やってもらいたい事がある。」
「やってもらいたい事?」
「ああ、しかもお前達みたいな荒くれ者がちょうどいい!」
「なに?暗殺や殺人じゃないだろうダスな? あんなのは頭のおかしい奴らがやる
人ではない所行ダス! 俺は絶対やらないダスよ」
「そんな物騒な事やらせるか!」
「じゃあ何ダスか?。言ってみるダスよ!」
「農業じゃよ!」




