第161話 交流村の民
《サケビコエ キコエマス》
「何?どこじゃ。」
《ココカラ200m ハナレ》
「ジョコ、リューゴス付いてくるのじゃ」
いきなり独り言を言い出したかと思えば、自分たちを呼びつけて何を言い出すのだ
このジジイはというリューゴスの顔を無視して、わしは外に走り出す。
《アト30m》
家の周りに村人が集まっておる。
その家の中から叫び声がきこえてくる。
近づくにつれ叫び声がはっきり聞こえてくる。
「大丈夫か!おい、ユイン。」
そこには・・・・倒れた女性に声をかけるオムラがいた。
オムラの傍らにはさっき持っていた食事を乗せた板が落ちておる。
どうやら、嫁の実家にわしらの料理を運んでいった時に倒れていたようじゃな。
「どうした?オムラ。」わしが近づく。
「ユイン・・おれの妻がお腹が痛いと急に倒れたんだ。」
「どれ、わしに見せてみい。」
「はん?お前みたいなジジイがみても・・」
オムラの罵声を無視して嫁さんに近づく。
「ちょっとすまんよ。」
と、一言断ってからお腹のあたりや、下腹部を押さえたが、痛くないという。
ふむ。
「オムラ、今から嫁さんの口に指をつっこんで、
食べたものを吐き出させてやれ。たぶん食中毒かのう。」
「なっ食ち・・・なんだそれ?」
「あと、薬とかもあるのか?」
「そんな高価な代物なんかあるわけない。」
「・・・そうか、ジョコ荷車から取ってきてくれるか。」と指示を出す。
オムラは半信半疑ながらも、他に対処法がないので、わしの指示に従って吐かす。
吐かした所で地べたに布を敷かせて横になる。声を掛けるとまだ、少しお腹が痛いと。
ジョコが戻ってきた、薬を取り出す。
「これは毒消しの薬じゃ、水をたっぷりで飲ませるのじゃ。
それと、この後、下痢になる場合は全部出させるように。それが治る早道じゃ。」
「これが薬?信用できね~な。そんな高価なものどうして、
貧乏な森の民なんかに・・」
「これは森の民で製造しておる薬で、城下町にも卸しておる。
王族御用達の薬じゃ、安心せい。」
王族が使っておるのは精力増進剤だけじゃが、この際それはどうでもいいじゃろう。
オムラは嫁に多めの水とともに薬を飲ますと、
しばらくしたら痛みがおさまり、少し落ち着いたようじゃ。
周りの村人達はそれを見て安堵の表情を浮かべた。
すると今まで、遠巻きから見守っておったうちの1人、
歳は50過ぎのなかなか貫禄のある老人が近づいてきた。
「わたしはこの村の村長ですが、あなたがたは?」
「はい、わしは森の民で名前はジューロと申します。
私たちは、この先のアルーム村へ行く身なのですが、オムラが元森の民という事で、
一同で今晩だけやっかいになっておった所でです。」
「そうでしたか。一応オムラの方からは森の民を家に泊めるとは聞いておりました。
ところで・・アルーム村へは何しに?」
「まあ、商談のようなものですかな。村長に呼ばれましてな。」
「そうでしたか・・商談に・・・。実は私もご相談が・・・
ぜひ、あなた方の薬を譲っていただけないでしょうか?」
「それは・・・かまいませんが・・・私どもは一応スペード商会を介して
城下町で売っていただいてますので、商会を通してか、
城下町でお買い求められてはどうですか?」
「いえ、そうではなく、私たちの村と森の民にて直接取引をしたいのです。
どうでしょう。」
「それは、お金を介さずに物々交換でという事でしょうかのう?」
「お望みであれば貨幣でもよいですが・・。といっても私たちも貨幣が潤沢なわけでは
ありませんので、物々交換の方が助かります。」
「そうですか、それはありがたいですな。しかし私の一存では決めかねますので、
一度族長と相談したいと思います。」
「わかりました。」
「すぐにご返事できないお詫びと言っては何ですが、この薬類は置いていきましょう。
ジョコ、リューゴスに指示して薬を用意させた。森で作っている薬が勢ぞろいじゃ。
1つ1つ説明する。傷薬、解熱薬、腹痛薬、痛み止めなどなど。
もちろん精力剤は渡さなかった。まあ嗜好品に近いからな。
族長はたいそう驚き、そして喜んでくれた。
これだけでも、十分村人を助ける事が出来ると。
そして対価というか、お礼としてわしらはとうもろこし粉をもらった。
その後、村の人が集まり、わしら6人と外で宴会になった。
村からはとうもろこしで作ったお酒や、サトウキビで作ったアルコール度数が
強そうなお酒をいただいて、飲んで騒いで仲良くなった。
森の民は粗暴だという事でこちらではいみ嫌われていると聞いていたが、
どうやらこの村の人は全然そんな事はなかったらしい。
初めは、よそものを警戒していただけで、別に森の民だから嫌いだという事はないらしい。
オムラが一番嫌なやつじゃ。
宴会でまた、わしらの食材を振る舞い大好評を得た。
皆、目を白黒させて驚いてくれた後、どれだけ美味しいかを絶叫&喜びの舞で
いっぱい表現してくれた。
正直うるさい・・・
族長がまた、その食材類を直接取引で扱いたいと、興奮気味でぐいぐい押してきた。
また、相談しますと言葉をにごしておいたが。
・・・こう・・ぐいぐい来られると暑苦しいのじゃ。お互いジジイだしな。
もっと若い子がぐいぐいくるなら大歓迎じゃ!
と思ったら推定20歳くらいの女性がわしにぐいぐいお酒を勧めにきた。
・・・・・・えええいいい!離れんか!暑苦しいのじゃ!
えっ女性なのにひどいって?いや、大丈夫。太っておったから・・・
わしは可愛い子には優しいのじゃが、太っている子には厳しいのじゃ!
・・・こう文字で書くとものすごい嫌な奴じゃな・・・わし。
自分に素直なんじゃ・・わし。
もういりません。遠慮なんてしてませんと断ったのに、またぐいぐい押してきたので、
思わずガブリ四つに組んでうっちゃってやったのじゃ。
「とりゃあああああっっ」と。
ごろごろと転がっていきました。
丸いから転がりやすかったんかのう? 結構転がっていったんじゃ。
そうしたら思いのほかシーーーーンとしてもうた。
仲間の森の民もしーーんって。
おい、仲間じゃよわし。
フォローしてくれよ。
「こ、これは森の民の親交を深める儀式のうちの1つで、うっちゃりの舞といいます。」
おおーーーっと歓声があがり、次々とわしに投げられに村の人達が集まる。
他にも5人いるのに、なぜわしに・・
それをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、うっちゃっれまくってまくった後、
息も絶え絶えにわしは一言・・・
「・・うそじゃ。この儀式は、うそじゃったんじゃ」
素直に謝った・・・・
わしはうっちゃって、地面に砂だらけに転がる村人を見下ろしながら
素直に謝った・・・・




