第160話 森のめし
「どうだ~~~~ババ~~~~ンンン」
と、自信満々で効果音付きで出された料理は・・・・
とももろこしを挽いた粉で焼いたパンと、
クレープのように薄く焼いた皮に野菜のようなものが詰めてある春巻き的なもの。
それに、水が入った木のコップ。
「あまりにも豪華すぎて、びっくりしたか?
いきなり6人も来たから量はそんなに多く用意出来なかったが、
特別な物を出してやるぞ! とりあえず水を飲んでみろ。」
わしらは皆黙って水を飲む。
ーーーーーー甘い。
砂糖水か。
「どうだ~~~びっくりしただろ。
お前等、森の民なんて一生かかっても砂糖なんて口にできないだろうしな。
まあ砂糖は貴重品だから、俺たちにもそんなにはないのだが、
それでも5日に1回は砂糖水を飲めるんだぜ、すごいだろ!」
自信満々にオムラが言う。
それをわし達は無表情で黙って聞く。
皆、打ち合わせしたかのように一言もしゃべらずに無表情で黙って聞く。
優しさじゃ!
「さあ、食えよ!うまいぞ~~~~」
皆、黙って食べ出す。
黙々と食べる。
その間もオムラは延々と料理の自慢をする。
その味付けはどうだ、今、城下町で流行ってるだとか、
森の民ではないだろうとか延々じゃ。
もちろんその間も皆、黙って食べておった。
優しさじゃ!
「旨すぎて声もでね~~か!けけけけけけ」
ムカつく高笑いじゃ。
さて、少ない料理も全部食べ終わった事じゃし・・・・・・
「のう、ちょっとわしらには量が少なかったようじゃ。
わしらが持ってきた食材を調理させてもらってよいかのう?」
あきらかに不満顔をしたオムラじゃが、
シブシブ了承してくれたのでマブシに指示を出して料理してもらいに行ってもらう。
マブシは親と離れて一人暮らしが長いので意外に料理はうまいのじゃ。
※※※※
しばらく・・・というか1時間以上かかってるのじゃが、出来たようじゃ。
「どうじゃ?オムラも一緒に食べてみんか?」
「は? どうせ、じゃがいもだけだろ。
昔さんざん嫌というほど食べたさせられたから別に食べたくね~よ。」
嫌そうな顔じゃ・・
じゃあ、しょうがないな。
「ジョコ、リューゴス、マブシと一緒に料理を運んでくれ。」
そこに運ばれてきた料理は・・・・・
どんぐりを挽いて作ったパン、
じゃがいもをふかして、つぶしたマッシュポテト風サラダ、
豆をふんだんに使った塩スープ、てりやき風獣肉、砂糖飴棒など
どれも森の民で毎日食べておる物ばかりじゃ。
「さあ、それではもう一度いただくとするかのう。」
わしが声をかけて、また皆で食べ始める。
先ほどとは、うって変わって、皆でわいわい歓談しながら食べる。
和気あいあいじゃ!
しばらくすると・・・
「・・・・・・ってよ。」
「はん?」
「ちょっと待てよ~~~~~~おおおお」
大きな声を張り上げるオムラにわしらは話を止め注目する。
「なんじゃ?」
「なんじゃ?じゃなくて、何これ?」
「なにが?」
「なにが?じゃなくて!何これ?」
「何これって言われても・・・食事じゃ。わしらの日常の」
「うそつけえええええええいいいい。」
目玉飛び出そうじゃな・・オムラ。
血管の2本は確実に切れておるんじゃないだろうかと思うほどの顔。
「こんなんじゃない!こんなんじゃなかった!食事は!
じゃがいもなの!ふかしたじゃがいもオンリーだったの!」
だだっ子か、こいつは。
こいつのあだ名は、だだっ子三世に決定じゃな。
「まあ、そんなに興奮するな。お前も食べてみい。うまいぞ。」
と、わしが言い終わる前に手あたり次第に食い出す。
「なんだ、このパンは!とうもろこしとは違う味だが香ばしくて旨い!
それにこの丸いものがいっぱい入ったスープ。何、豆?ものすごく旨い。
ほくほくして塩だけの味付けだがうまい~~~。」
口にほうばりながらしゃべるな!
飛び散り放題じゃ。
「この野菜が入ったサラの白い柔らかいのがじゃがいもだと・・
ぜんぜん違う食感でうまい!」
しゃべりながら、ご飯をかっこんでおる。
鼻水出ておるぞ。
わかったからふけよ、鼻水。
「ないより・・・・・それよりなにより、
なんじゃこりゃあああああああああああああああああああ。この肉は何だ?
というかこんな味食べたことないぞおおおおおおおお。
うまいぞおおおおおおおおおおおおおお。」
もう、感想というか単なる絶叫じゃな。
どうやら、てりやきが気に入ってくれたようじゃ。
大絶賛じゃな・・・・わしも好きじゃ。
「この木の棒みたいなのは何?何何何なに?
あまあああああいいいいいいいい。何これあんま~~~~いいい。
砂糖なのこれ?こんなに砂糖をふんだんに?どゆこと?」
散々食い散らかして、しゃべるだけしゃべって最後は質問か。
気持ちはわからんでもないが・・・。
わしらも、さっきまで散々、森の民の悪口、蔑げずまれておったが、
ここまで誉められると悪い気はせんのう。
わしが、食料、調味料などの他、道具、ダチョウ、カバなどの動物など、
今現在の森の状況をわかりやすくオムラに教えてやったら、
口を開けてポカーンとしておった。
「本当にこれが、日常的に・・・」
「ああ、別に特別な事ではないぞ!魚醤はまだ手に入りづらいけどな。
それ以外は、砂糖なんかも一定量毎日採れるしな。」
「これが・・・・毎日・・・・」
以前の森の状況を知っておるだけに、
わしの説明も、にわかには信じ難いみたいじゃ。
「みんなジューロー様のおかげだ!」
「ジューロー様が来てからだな!」
「まあ、確かに。そこは同意」
「おれの姉ちゃんが好きなんだぞ」
「・・・・・・・うまい」
皆、わしを良いタイミングでヨイショしてくれる。
若干2名は関係ないけど・・・
しばらく黙ったままのおとなしかったオムラがすっくと立ち上がって
「・・・悪い、この料理少しもらってもいいか?おれだけじゃなく、
家族にも食べさせたいんだ・・・。」
と言い、一通りの料理を板の上に乗せ、トボトボと出ていく。
「よっぽどショックだったみたいね。」
「さんざん森の民の事をぼろかす言ってたからな、ザマーミロだ!」
マブシが悪態をつく。
「まあ、わしも森の民の悪口には腹もたったが、
オムラもいろいろとあったのじゃろうな・・・
森を出ていくほどにな・・・」
その後、みんなで黙ってご飯を食べだした。
もう食事も終盤、皆のお腹が落ち着いた頃に
アイがわしに話かけてきた。
《サケビコエ キコエマス》




