第157話 出発だ
「よ~~し、みんな集まったか、並べ~~い。
従順なカルガモのごとく、そこに並べ~~い!
それでは、番号!」
「1」「・・・・2」
・・・・・・全然集まってね~~~~~~~!
まあ、本当は見えてたけどね。
ジョコとリューゴスしかいないの・・・
現在時刻は朝6:00ぐらい。
マブシ、ピチュ、レイクは遅刻か・・・しょうがないもう少しだけ待つか。
するとレイクはすぐにやってきた。
昨日の夜あまりにも楽しみでなかなか寝付けなかったのとの事。
うむ、かわいいから許すぞ!
そして次にピチュ。兄に引きずられてやってきた。
引きずられてるのに寝てる!
低血圧っぽいのう、ピチュは。じゃあしょうがないか・・・
残るはマブシか・・・・。
あの野郎・・・昨日あれほど言っておいたのに。
アイツがバカだということを忘れておったわ。
しょうがない、迎えに行くか・・・・と腰をあげると、
昨日、荷物をたんと積んだ荷車から人の足が出ておる・・・
上の布をめくると・・・
マブシじゃった。マブシが寝ておった。
こいつ・・・・・かわいい寝顔しよおって・・・
「よし、レイク、マブシの足をくくれい!
そしてダチョウにつなげるのじゃ。」
「はい!」いい返事で足に縄を巻く。
もうすでにジョコはダチョウの上でスタンバイ!
わしは万感の思いを込めて、
「ごおおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~」
はりきって号令をかける!
ダチョウがスタードダッシュをかます。
ものすごいいきおいでピーンと張る縄。
体を真っ直ぐに伸ばして引きずられるマブシ。
伸びる両手、弾む背中、重厚に響く引きづり音、
巻き起こる大爆笑の渦。
絶叫がこだまする、森。
爽快な朝の目覚めである。
「爽快じゃね~~~~~っすよ。全然爽快じゃないっすよ。」
マブシが全身すり傷だらけでボヤく。
あの仕打ちですり傷だけって、丈夫やねキミ。
往年の寝起きドッキリを彷彿とさせる映像だったな~~
いや~~久しぶりにいいものを見た。
「よし、揃ったのう。ではシュッパ~~~~~ツ!!」
わし達は2頭のカバでそれぞれ荷車を引き、
マブシとピチュ、ジョコとレイクがそれぞれカバの背に乗り、
わしとリューゴスはそれぞれのダチョウに乗って村を出た。
朝早いこともあり、見送りはいない。
それに昨日のうちに、皆には一応挨拶はしておいた。
まあ、そんなに長い旅でもないしな。
すぐ帰ってくるし。
カバの歩きは人と同じくらい、だいたい時速3kmくらいじゃ。
だから結構ノロノロゆっくり歩いておる。
まあ、ゴスンの話しを聞くと、アルーン村へはここから5日間くらい
かかるそうじゃ。ダチョウで飛ばせば1、2日くらいでいける
みたいなのじゃが・・・まあ荷持も多いし
ゆっくり行こうという事になったのじゃ。
一応エメリさんとセイムさんには昨日挨拶をしたのじゃが・・・
結構あっさりしておった。
「へ~~じゃあ何かお土産買ってきてくれよな。」
っと気軽な感じじゃったなエメリさんは。
はっ、ひょっとして・・・
お土産を買ってくる→買ってこなきゃ許さない→生きて戻ってきて
→あなだのごどがずぎだがら!ということじゃないか。
そうか、そうだったのか・・その時に気づいてやれなくてスマン。
わしはきっっと無事で帰ってくるぞ。
その時は一緒に暮らそう。
・・・・勝手な妄想じゃ。
「よ~~し、みんなこういう時には楽しく歌を歌いながら行こう!
わしのあとに付いてくるんじゃ!」
♪ ♪ ♪
ドナ ドナ ドナ ドナ~~~~~ 子牛を 乗せて~~~~
ドナ ドナ ドナ ドナ~~~~~ 売られてゆ~~く~~よ~~~
「売られてるじゃねーかよ!売るなよジジイ!
どこが楽しくだ!気分が沈むわ!」
ピチュがツッコンでくれた。
ピチュはまだ少女じゃ。
だいたい11、12歳くらいかな。
なかなか有望じゃぞ! 有望なツッコミじゃ!
1時間ほど経った時、森の中でセコス達に会った。
狩りの途中だったらしい。
「久しぶりじゃのう、セコス。」
「おう、今からか。レイクお前も気を付けてな。
ジジイ、ジョコ、レイクを頼むぞ。」
「ああ、任せておけ。」ジョコが答える。
その後少し談笑して、狩りのメンバー全員でわしらを見送ってくれた。
セコス・・・本当はわしは迷ったのじゃゾ。
お前を連れて行こうかどうか・・
いや、許されるなら本当はセコスに来て欲しかったのじゃ・・・
わしの専属ツッコミとして。
だって、みんなわしのボケにツッコンでくれんのじゃ!
みんなボケばっかりなのじゃ!ボケが多過ぎるのじゃ!
そんなことで、多忙な村の中心人物であるセコスを連れて行く事は叶わず・・・
まあ、ツッコミ役としてピチュの才能を手に入れた今となっては
セコスは用済みじゃがな・・くっっくくくくくく~~~
結局その後だいたい、ご飯や休憩をして7、8時間くらい移動した所で
陽も暮れたので、その場で野宿する事になった。
だいたい20km~30kmぐらいか、移動したのは。
まだ森の中じゃ。結構広いのう、森も。
今までのわしの生活範囲も狭い範囲でしかなかったのじゃな~と思い、
これから広がる新しい世界にわくわくした。
もちろん不安もあるが、それ以上に好奇心もあるのじゃ。
多少はこの世界の知識について聞き及んだりはしておるのじゃが、
やっぱり自分で経験するという事と知識とは別物じゃろう。
しっかり、見て、聞いて、触って、匂って、味わって
五感を通すことによって何倍も何十倍にもふくれあがって
蓄積されていくであろう。
そう思うと子どもの頃の様に楽しみで楽しみでしょうがない。
ふとみんなをみると、皆も子どもの様に顔がいきいきしておるのじゃ。
相変わらずリューゴスは表情を出さないが、わしにはわかる
これからの旅が楽しみで楽しみでしょうがないと。
そういう顔じゃ。
まだまだわし達の旅は始まったばかりじゃ!
この地平線に向かって行くのじゃ~~~~~~
未完
大口真神先生の次回作にご期待ください!
(笑)




