第155話 ピチュ新薬成功
「走れ~~~い。ダチョウのごとくな!」
わしは少女にハッパをかける。
「ぜーぜーぜー・・ひどくない?」
「ひどくないぞ! お前はわしの奴隷じゃ!いや、奴隷以下じゃ!」
「えっそんな約束だった?違うよね?ねえ」
「もう、わし歳じゃから覚えておらん!」
「ボケてる~~~やめてよね~~ぜーぜー。」
今わしは、神の左手をもつ少女ピチュと森の中を走っておるのじゃ。
もちろんわしはダチョウに乗ってじゃが、
二人並んで激走じゃ。
この間のジャンケン勝負でわしが勝ったことにより
ピチュには毎日ゲタンの家に来てもらい、とある新薬の実験をして
もらっておるのじゃ。
その新薬とは・・・・・痩せ薬じゃ。
今まで散々グーダラしておって、食っちゃ寝、食っちゃ寝して
丸々と太っておるピチュでその効果を試そうという事で来てもらっておる。
その薬は真っ黒なピンポン球くらいの大きさの薬じゃ。
20倍大きくした正露○みたいな感じじゃな・・・
まあ、見た目はあからさまに怪しいのじゃが・・・
「これ人糞じゃね?ジューローの人糞でしょ?」
と最初はピチュに疑われたものじゃ。
・・・・失礼な!
実は痩せ薬と名付けてはいるものの
中身は・・・・栄養素の高い食べ物を保存食用にできないか?と
いうことで開発された代物じゃ。
これ1個食べれば1日の最低限の栄養は摂取できるという
大変優れた保存食なのじゃが・・・・・・
クソマズイんじゃ。
いや、クソではないぞもちろん。
見た目もマズイのじゃが、めちゃめちゃマズイのじゃ。
これを食べると当分胸焼けというか胃がもたれて何も食べたくなくなるのじゃ。
そこでわし閃いたね!
これだ~~~~~~~~っと。
それでこの薬は痩せ薬として世に送り出そうと考えて
森の太っている人に協力してもらおうとしておるのじゃが
なかなか協力してくれる人がおらんくてな・・・
そりゃあそうじゃろ、渡された人にとっては
「あなた太っていますね。」
と言っているのと同じ事なのじゃ。
「あなた太ももと太ももの隙間ないですね」
と言っているのと同じ事なのじゃ。
「あなたの前世は・・豚ですか?」
と言っているのと同じ事なのじゃ。
しつこく言いました。しつこく3回もいいました。
そこでがっつり太っているピチュに目をむけたのじゃ。
奇跡的にジャンケンで勝ち奴隷契約を勝ち得た今、
合法的に毎日ピチュで試しておる。
もちろんそのまま食欲が落ちて痩せていくと体によくないので
毎日適度な運動もさせておるんじゃ。
森のまわり10周ぐらい。
「どこが適度だよ、くそ!」
と悪態ついても、できる所がすごいのう。
もう1週間ぐらい経つが・・・・・
身長155cmで体重100kgオーバーだったピチュが
なんという事でしょう。
体重が50kg・・2分の1、半分、50%ぐらいになってる・・。
しかも痩せたので結構かわい・・・くはない。
髪はボサボサで顔はそばかすにすきっぱで顔パンパンだったのが、
髪はボサボサで顔はそばかすにすきっぱで顔シュっになったぐらいなので
かわいくはない。
だけど、ものすんごい効果じゃ・・・
ものすごい痩せ効果でライ○ップも真っ青じゃ。
わしもあまりの効果に・・劇薬か!毒物が交ざってるのか?
それとも、わしの人糞が入っておるのか?(笑)
と疑ったくらいに驚いたのじゃ。
これを機にピチュを使用前、使用後の広告塔にして
森の民で太っているがくいついてくれれば良いのじゃが・・・
少しでも肥満を減らす事ができれば、病気の心配も減るしな。
あまり太りすぎるのも健康面で心配じゃから・・
わしの思いやりじゃ!
そんなこんなでピチュの新薬投入は2週間ぐらいつづけ、
毎日適度な運動をしたことで痩せた事はもちろん
筋肉もバッキバキについて基礎体力もあがったようなので
これにて終了した。
※※※※
そんなこんなで2週間ぐらい過ぎた頃
スペード商会の社員、ゴスンから思わぬ申し出を聞く事となった
「ぜひ、ジューロー様にケル地方のアルーン村に来て欲しいと
村長からの申し出がありました。」
ゴスンがいい笑顔で言う。
「ケル地方?」
「はい、ケル地方とは、森と隣接している地域の1つで、
主に東側の下半分を差す地域です。」
「そこのアルーン村とは何じゃ?」
「はい、ケル地方は広大な為いくつもの村に別れております。
農業に勤しむ者、鉱山に勤しむ者、畜産に勤しむ者と役割も別れておりますが、
このアルーン村は農業と鉱山の真ん中あたりの地域で畜産業が盛んな村ですね。」
「いや、そんな村がなぜ森の民のわしに来て欲しいのじゃ?」
「そ、それは・・・ちょっといいづらいのですが・・」
ゴスンは口どもる。よっぽど言いづらいのか・・
「私どもスペード商会はそのアルーン村とも取引を始めまして、
そこの村長と親しくなった私が、宴会に呼ばれた時についポロっと・・」
「ポロっと何じゃ?出したのか?出しちゃったのか?」
身を乗り出して聞く。
「いえいえいえ出していませんよ、もちろん。
ポロっと出したのはジューロー様の事です。」
「何でそこでわしのことなんか・・。」
「実は・・大変言いにくいのですが・・ケル地方、ナル地方は
森の民を蔑ずんでおります。
自分たちより貧しい筋肉バカばかりだと下にみているのです。」
「なんじゃと~~~~。だが筋肉バカは本当じゃ。」
ちらっと族長ゲタンを見る。
うなづいておる・・・怒るところじゃろゲタン・・
「そこで、ついムキになってしまい。ジューロー様の事を・・」
「わしの事を何と言ったのじゃ?」
「ジューロー様はそのアルーン村どころか、ケル地方、ナル地方に及ぶ者が
いない程の唯一無二の存在だ。豊富な知識はもちろんカリスマ性は
誰にも敵わない!っと」
わしは鼻の穴を思いっきり広げた。
鼻の穴をこれでもかといわんばかりに広げた。
そしてゲタン、リューゴスを鼻息荒く見る。
みな、見てみぬふりじゃ。下向いておる。
「そこまで言うなら連れて来いと、後は売り言葉に買い言葉で・・・つい」
「連れていくと約束してしもうたのか・・」
「はい・・・すみません。
なんとか、ジューロ様一緒に行ってもらえませんか。」
床に手をついてお願いするゴスン。
「いいよ!」
あっさり了承するわし。
こうしてわしはアルーン村に行く事になったのじゃ。
次回アルーン村へ行く編始まるぞ~~~~~!




