第154話 ムーブメント
森の民に ムーヴメントを興す ナウな一番逝けてるヤツ
そう俺!ちなみ逝けてるヤツ って死んでね?
チッチチチチチッチェケラッチョ
・・・出足をラップ調にしてみました。
森の民に数々のムーブメントを興したわし、ジューローじゃ。
第1次ベビーブーム、第2次ベビーブームもわしがおこしたのじゃ。
いや~~頑張った、あの時のわしはめちゃくちゃ頑張ったぞ!
・・・・・すみませんウソです。
見栄はりました。
本当は隠れん坊、鬼ごっこ、ジャンケンなどを流行らせ、
時代をリードする男じゃ・・
・・・・・遊びばっかじゃね・・・
あんまり重要なこと全然広めて無くね?わし。
こうなったらギャグじゃ!ギャグを流行らせるしかないのじゃ!
それが人気者への近道じゃ。ちやほやされる近道じゃ。
むしろこんなジジイにはそれしかない!
そうじゃ!こんな禿げたジジイには毛もない!
いや、すまん、取り乱しました。
今回はそんな事が言いたかったんじゃないんじゃ。
実は今森の民で流行っている遊びがあるのじゃ。
しかもそれはわし発ではなく、子ども達が始めたある遊びからなのじゃ。
※※※※
最近は移動用動物のダチョウとカバをもらったことによって
荷車の需要が高まった。
スペード商会からもらった荷車を森の民で魔改造して性能をアップさせた荷車を
装備させておるのじゃ。
その魔改造部分はタイヤで、いやタイヤじゃないなゴムではないから、
タイヤ部分はただの丸い木なのじゃ。素材が木じゃと、
すぐ削れて形がイビツになったり
割れたりして、耐久性に問題があったので、
外側の木の部分をバッキャム粘土によって薄い輪っかのような金属を作り
丸い木を自転車のタイヤのように金属で覆ったのじゃ。
すると何ということでしょう。
あんなに木のタイヤでは不安定だった走行もこんなに安定しました。
そして何より耐久性が10倍以上に増えたのです。
さすが匠の仕事です。
と、まあこれが前フリなのじゃが、
そこで子どもがこの魔改造されたタイヤを使って遊び出したのじゃ。
回りはバッキャム金属に覆われた木のタイヤの中心に木の棒が
差し込まれておるだけの部品に
子どもが足を乗せて坂道を転がるという遊びを。
分かりやすく言うと、座る所の無い一輪車じゃ。
輪っかだけの一輪車じゃ。
中心に差し込まれた棒の上に立って直立して乗るのじゃ。
森の民の体幹ってすごくね?
坂から下って、ブレーキなぞないからジャンプで離脱というダイナミックな遊び。
恐るべしチキンレースin森の民じゃ。
しかも中心の木の棒は差し込んだだけで固定されておるのでタイヤが回転すれば
木の棒ごと回転するのじゃから、足との摩擦熱はとんでもないことに・・・
子どもに熱くないの?って聞いたのじゃが、
「熱いけど我慢してる。おもしろいことのために我慢してる」
との答えが・・
恐るべし子ども、恐るべし子どもの足の裏。
そこでわしが、熱くないように木の板の上にバッキャム金属を
薄く張り付けて木の棒にはめた。
簡単にいうと下駄のような物をつくり、
その下駄に長い持ち手のような木をつけ一輪にはめ込んで
魔改造したのじゃ。
命名するとすれば“一輪棒”じゃ。
図に表すとこうじゃ!
ごめん、図にあらわせれないのが残念じゃが、
だいたいは想像してもらえたと思う。
そうしたら、今度は大人がくいついた!
もう老若男女えらい騒ぎになってな、一時期は入荷待ちで、
制作部門が荷車を作らずに
朝から晩まで“一輪棒”つくりに精を出していたくらいじゃ。
いまでは、欲しい人ほとんどに行き渡って、仕事の合間、
仕事休みなどに楽しんでおる。
森のちょっとはずれにちょうどいい丘があって、
そこがたまり場のようになっている。
「この丘の土質がよく、いい風も吹くんだ」などと
丘サーファーのようなセリフを吐く若者達も集う。
最初は坂から下って速さを競うぐらいの遊びだったのが、
段々エスカレートしてきて
スノーボード競技のようにアクロバティックのような技を披露する者達も
増えてきた。
さすがは身体能力の高い森の民、やっても楽しい、見ても楽しい競技に
なってきたのじゃ。
そうするとやっぱりそこはスターが生まれるのは常か・・・
一輪棒のスター、マブシが誕生してしもうたのじゃ。
・・・・・・意外な才能があったのじゃ、バカなのに・・・・
今じゃ一輪棒乗りの中では知らないものがいないくらいに
リスペクトされて、小さい子達の中にはマブシ組を作って付き従う一団も・・・
「俺ってビッグでグレイトだぜ!」
とサングラスにガムをクチャクチャさせて言わんばかりのイメージじゃ。
あんなにバカなのに・・・・
だれでも特技があるものじゃのう・・・・
あんなにバカなのに・・・・
そういった盛り上がりを見せる一輪棒に、ある進化が!
自分の一輪棒の差別化をはかるために
各々がカスタマイズし出したのじゃ。
柄の部分に彫刻を施すだとか、
アゴスを取り入れたことによる色を作り出す技術(後に詳しくあるかも)
によって得られたパーツの染色。
あと、ミニ四駆のようにパーツに小細工をするものまで現れた。
まだまだムーブメントは上り坂じゃ。
この後ももっともっと花咲いてくれれば、おもしろいことになるのではと
ひそかに期待しておる。
ただしマブシがちやほやされるのは気に食わんのじゃ・・・
あいつの一輪棒を二輪棒に変えてやるのじゃ!
「うおーーーーめっちゃクールですね!
わざわざ、俺のために・・・うれしいっす。ありがとうございます」
・・・・・・めちゃめちゃ感謝された




