第147話 セイムとエメリ
今わしの新築の家には嫁にしたいランキング同率1位の
セイムさんとエメリさんの2人がいるのじゃ。
偶然鉢合わせしてしもうたのじゃ。
予期せぬ出来事に心臓がバクバクじゃ・・・
まさか・・・・
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「おじゃましま~~す。木のいい匂いがしますね。
あら、・・・・・エメリさん・・どうして・・
今日はジューロー様から2人きりで会おうと言われて来たのに・・。」
「セイムさん、これはじゃな・・・その・・あのじゃな・・・・」
「ええっおれもジューローから2人きりで新築祝いでもどう?
って誘われてたんだけど・・。」
2人が同時にわしを見る。
「そ、そうじゃったか?最近物忘れが多くてのう・・・」
「そうか、じゃあしょうがねーな。
本当はわたしと2人きりになりたかっただろうに
セイムはお邪魔かもしんねーけど、気にしないでわたしとイチャイチャしようか、ジューロー。」
「違いますー。ジューロー様は私と一緒にいたいんです。
いつも私だけ、私が1番だよって言ってくれますもんね。ジューロー様。」
「へっあああ、そう・・かな。」
わしの心臓がきゅーーーーっと締め付けられるように痛いのじゃ。
「は?ジューローいつもおれの事が1番だって言ってくれてるよな。
セイムは2番どころか圏外だって言ってたじゃねーか。」
「何ですって?ジューロー様はそんな事言いません。」
「言いました~圏外決定です~~~。」
女性の言い争いを聞いていると背筋に冷たい汗が・・・
今まで言い争いをしていた2人の矛先がとうとうわしに・・・
「「いったいどっちなの?ジューロー」」
わしに最終決断を迫る2人・・・・
「そ、それは・・・・・それはじゃな・・」
「エメリ・・ごはんをくれんか・・・・」
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まさかのスブム! 2人きりで住んでるの? 同居?
2話にまたがってのオチに登場!
以上妄想劇場でした。
もちろんこんな妄想になることなど微塵もなく、
「あら、エメリさんも一緒だったのですか?」
「セイム、久しぶり。」
お茶を出して3人揃ってしゃべると思いきや、
セイムさんとエメリさんが2人で女子トークを始めた。
まあ、今はお互いに学校の先生をしてもらっておるのじゃから、
必然的に仲良くなるわな・・・
なんか、学校あるあるや、生徒あるあるで2人は盛り上がっていてわし、
ポツーンしてる。
・・・・みんなといるのに寂しい。
・・・・ジジイ寂しいのじゃ・・・・。
それを察した2人が声をかけてくれる。
「ああ、悪い悪い久しぶりだから盛り上がっちまって」
「ええ、ジューロー様の事忘れてたわけじゃないですよ」
「ジジイ・・・寂しい・・・」
「悪かったって。機嫌直せよ。」
「2人の手料理を食べたいのじゃ。」
「あっそうでした、もうすぐ昼近くになるのですね。
では私がご飯の用意しますよ。」
「そうか、じゃあ私も手伝うよ。」
「本当か!言ってみるもんじゃのう。まだ本格的に引っ越してはいないので、
道具や食材は少ないのじゃが、あるものは何でも使ってよいからの。」
「「はーーい。」」
2人の元気な声が響く。
・・・・しもうた・・・結局ひとりでポツーンじゃ。
2人して料理を作りに行ってしまったのでポツーンじゃ。
向こうからはキャッキャウフフ声が聞こえてくる。
楽しそうじゃな。わしも交ざりたいな。
と思ったけど邪魔をせずにじっと1時間程待ったのじゃ。
・・・ひとりぼっちで・・・・
「お待たせしました。魚醤と砂糖をふんだに使ったテリヤキ風肉炒めです。」
「おお~~~いい匂いじゃ。食欲をそそるのう。」
「この間ジジイに教えてもらった料理法で作ってみたけど、どうだ?」
そうなのじゃ、今村で流行っているのは“てりやき”なのじゃ。
魚醤と砂糖が手に入るようになったが、
まだまだ量が少ないので、たまにしか食べれないのが
ご褒美的な贅沢な料理になっているのじゃ。
「それでは、みんなで食べようかの・・・・うっ?」
食べようとしたわしに、いきなり背後から
リューゴスがわしの手をガッと掴む。
「なんじゃ・・リューゴス、いきなり現れて。
やらんぞ、この飯はやらんぞ。わしのじゃ。」
「・・・・ちょっともめ事。来て欲しい。ゲタンが・・」
「えっじゃあ食ってからでいい?今から食べるところじゃから・・」
リューゴスがグイグイわしをひっぱていく
「だめ・・・・今すぐ。」
「いや、ちょっと、待って、ねええええええええ」
結局強引に引きずられていってしまった、ジューローを見送るセイムとエメリ。
「まあ、しょうがない私たちだけでも冷めないうちに食べようか。」
「はい、そうですね。」
ジューローがいないまま、セイムとエメリは楽しくおしゃべりをしながら
小1時間ほど昼食を食べる。
「は~~食った食った。おいしかったね。」
「ええ、とっても良く出来てましたね。」
「・・・あのさ、セイムはその、だれかいい人いないの?」
エメリはちょっと恥ずかしそうにセイムに尋ねる。
「えっいきなり何?」
「いや、普段ならこんな事聞きづらいんだけど、
セイムは男衆から結構告られたりするじゃん、
だけど全部断ってるらしいから、だれか他に好きな人いるのかな~~って」
「それを言ったらエメリもかなり男衆に告白されてるって聞いてますよ。」
「いや、わたしの事はいいんだよ、わたしの事は。」
「え~~自分の事は言わないのにずるくないですか~エメリ。」
「ん~私の場合は、親が親だったからさ、つい最近までそんな事考えた
ことなくてさ、それがいきなり男衆から告白されても戸惑うっていうか
どうしたらいいかわかんないっていうか・・・
付き合うって事が考えられなくってさ。」
「わたしも、今のところは好きな男衆は居ません。
でも告白されて嫌な気持ちはないですよね。
正直うれしい気持ちと申し訳ない気持ちの半々ですけど。」
「わかる~~。わたしも複雑なんだけど、告白されるとうれしくなるよ。
でも断るからその後はすごく気分がへこむわ~~。」
「一緒なんですね。」
お互いにフフフと見合って笑う。
「でも、気になる人はいるんです。エメリさんになら話してもいいかなと
思うんですけど」
「えっ誰々?わたしの知ってる人?」
「いえ、名前は知らないのですが、私は光の人って勝手に呼んでいます。」
「光の人?」
「ええ、実は・・・お恥ずかしいのですけど夢の中で会う人なんです。」
「夢の話?・・・・光の人・・・・」
「ええ、いつもその人を見かける時は、夢か現か、
わからないものですから。
その人はいつも光の中でほほえんでいらっしゃるの。
すごく背が高くて髪は肩より少し短いけど
とてもりりしいお顔立ちで・・・」
「えっ・・・・」
エメリが驚きの顔をする。
「どうしたんですか、エメリさんあまりにも素っ頓狂な夢の話で
あきれてしまいましたかね。」
「いや、そういう事じゃないんだ。実はわたしも見た事あるんだ。
その男性を・・・」
「えっどこでですか?」
「いや、わたしも実際は夢じゃないかなと思って確かではないんだけど・・」
「そうでしたか・・エメリさんも・・・」
「わたしもその男性に惹かれているような気がする。
その光をみているとなんていうか、
あたたかいんだ。親の愛情ともちがう・・・
ん~何かあたたかい気持ちになるんだ。」
「私もです。わたしもその光をみているととてもあたたかい気持ちになるんです。
ジューロー様のような・・・」
「ジューロー・・・確かに言われてみればそんな感じかな。」
「ジューロー様はいつも私たちの前ではふざけていらっしゃいますけど、
誰にでも優しく接してくれて、皆を見守ってくれている父母のような存在
なのですよ。」
「父母は良い過ぎじゃない? 私にはいつもふざけてばっかりでそんな所は
一切見せないけど
確かに優しいし、あたたかく感じる事もあるよな。」
「そうですね。」
「まあ、かなりスケベジジイだけどな。」
「えっ私にはそんな性的な嫌がらせはないですよ。下ネタも」
「えっマジか!私にはガッツリ!じゃあ今度ジューローに言っておいてやるよ、
セイムもスケベネタOKだって言ってな。」
「や、やめてくださいよ、私じゃあうまく返しが出来ませんから。
エメリさんはツッコミがお上手ですからジューロー様も平気でボケれるのですね。」
「そんな理由でセクハラまがいの冗談はやだな~~」
などと食後の女子トークをしていたら・・・
「ぜーっぜーっただいま~~~なのじゃ。」
ジューローが息を切らせて、疲れた顔をして帰ってきた。
後ろにはリューゴスも一緒だ。
「おかえり~~お疲れさん!」
「おかえりなさい。私たちはお先にお昼いただいたので、
ジューロー様とリューゴスさんの分も今温め直しますね。」
「いや、リューゴスはもう帰らせるから、
わしら3人でキャッキャウフフするから。」
「だれがするか!キャッキャウフフなんて。」
「・・・俺も食う。帰らない。温めて。」
「ちょ、リューゴスお前わしの楽しみを、
せっかくの両手に華を。邪魔すんな帰るんじゃ!」
「・・・いやだ。今日泊まる。ジューロー離れない。」
「嫌がらせ満載じゃ~~~~~。」
「フフフ、じゃあ温めてきますね。」
「俺も手伝うよ。洗い物もな」
こうして嫁にしたいランキング同率1位のセイムさんとエメリさんが
せっかく新居に2人来てくれたという贅沢なシチュエーションにも係わらず、
まったく活かしきれなかった事を悔やみつつ、
今日も何事もなく夜が更けたのであった。




