第142話 総括
「いや~すごかったね~~ミカ」
「・・・・・・・」
「まさか“神素”だとはね~。
“重力無限”ってめっちゃ中二設定やんか。
無限やったら普通インフィニティーやのに、メビウスって。
まあメビウスの輪からの連続性っていう意味やと思うけど。
今度またジューローの中二をからかってやろ~、な、ミカ」
「・・・・・・・」
「なによ~さっきからずっと黙り込んだりして。ミカ」
「あなたはお気楽ね、ミチ」
「なに、そのあなたは馬鹿ねみたいな言い方は。」
「あなたはおバカさんね、ミチ」
「うわ、本当に言い直した。意外に傷つく。」
「そんなお気楽な事言ってられるのも今のうちよ。
“神素”なんていう未知の要素が確認された今、
これからどのような影響があるか本当の未知数よ。」
「影響なんかあるの?、ミカ」
「あなたはおバカさんね、ミチ。いえ、おおバカさんね、ミチ。」
「ささる~~~~」
「初めて“魔素”が発見された時も楽観視してたわよね、あなた。
今の現状を見てそんな事が言える?
ありとあらゆるものに影響を与えた“魔素”。
生きとし生きるもの全てを異形へと換える要素。
その登場と共に神が創りし万物の常識を覆した“魔素”。
この“神素”も生きるものに、どのような影響を与えるか
はかりしれない可能性を持っているのよ。」
「そうだったわね・・・ミカ。」
「ひきつづきジューローを監視してね、ミチ。
介入者ラ・メーンの様子も気になるわ。」
「いや、もうラ・メーンなんてジューローの敵じゃないでしょ。
圧勝だったもの、まだまだ未完成の今の段階で。」
「何言ってるの、ミチ。忘れたの?ラ・メーンは私たち以上に
能力を持っているのよ。
それが、なぜか自分ルールで能力を縛っているだけなの。
それにどういう意味があるかわからないけど、
もし、その縛りを捨てて本気を出して来たら・・・・」
「わかったわ、ミカ。」
そう言うとミチ・ミカはまた、通常の業務に戻る。
また、いつもの日常へ・・・・・
※※※※
実はわしはキレた時のことをあまり覚えていないのじゃ。
頭に血がのぼりすぎていたからなのか・・
いや、もちろんどういう事があって、どういうセリフを吐いたか
というのは覚えておるよ。でもなんというか・・・
第3者的な? 別のだれかがわしの体を使ってというような感覚だったのじゃ。
“重力無限”なんていうのも、そんな単語が
ぽっと出たというか頭に浮かんだという感じでなんとなくじゃ。
わしの能力アップしたっていってもどれもショボアップだったのに・・
何かすごい事になっていない?わし。
とりあえず“重力無限”と今つぶやいても
何も起らない・・・・厳密に言うと、あの時だけじゃ、出来たのは。
怒り限定なのじゃろうか?謎じゃ。
怒りと言えば、わしがジョコがやられてド頭に来てて、
もう、怒って、怒って、怒りくるおうと言う時に
頭の中に声がしたのじゃ
〈ダメ、レイセイ二ナッテ、ジューロー〉って。
う~~ん、怒り狂っておったので、本当に聞こえたかどうかも
今となっては自信がないのじゃが・・・・
なぜか、その後は少し冷静になれたのじゃ。
なにかリイナの声に似ていたような気もするが、
そもそもあの場に居ないどころか、遠く離れたネル族の集落に
いたわけだし・・・・
そういえばアイもしゃべれたなと思って聞いてはみたけど
《シリマセン、キケン、ボケシンコウ》
と言われる始末・・・殴るぞ!
まあ、今回の事件は不思議な事ばかりじゃったわい。
※※※※
ここは陽が差さぬ真っ暗な部屋・・・・
床も壁も石を積み上げられた何の装飾も無い部屋・・・・
石のひんやりとした冷たい感覚しか伝わってこない・・
真っ暗で何の色彩もない空間・・・・
男の笑い声が壁を反射してこだまする・・・
「あはははははははっははっっーーーーーー」
男は冷たい石畳の上で仰向けになり笑い続ける・・・
「あはははははははっははっっーーーーーー」
「はーっはーっぐっぶふぉふぉ。」
「あ~おもしろかったね~。ずっと見てたよ。
キミのやられっぷりといったら・・・・最高だね。」
〈・・・うるさい〉
「あんなに自信満々だったのに、ザ・雑魚って感じで笑えるよ。」
〈・・・うるさい〉
「俺様と対等だと思うなよ、ジューロー。だってさ。
お前が反対にやられてれば世話ないよな~ラ・メーン。」
〈うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい〉
「あはははははははっははっっーーーーーー、うける~~~」
〈やってやるよ、もうゲームなんてクソくらえだ・・・〉
「おっ、とうとうキミの本気見せてくれるの?楽しみだな~」
〈俺の制限を解除してやるよ、少しな・・・・・〉
「・・・・キミには期待しているよ。ボクを憎悪で満たしてくれると」
その言葉に対しての返事はない。
しばらくすると、また、いつもの静寂な闇にもどる・・・・




