第140話 神素(しんそ)
「「ジョコおおおおおおおおおおおお~~~~~~~~~」」
わしと、ゲタンが同時に叫びながら
倒れておるジョコに近寄る。
ラ・メーンはわしに照準を合わせ剣を突き刺す。
とっさに右に飛び、かわした先に落ちていた棒を投げつける。
ラ・メーンはいとも簡単に剣で棒をなぎはらう。
その間にゲタンはジョコを抱きかかえ距離を取る。
「す、すみません。族長・・油断しました。」
「しゃべらんでいい。」
ゲタンがジョコの血を拭う。
「ゲタン、ジョコの手当を頼む。」
「何を言ってるんだ。ジジイこそジョコを頼む。
族長としてこのクサレ野郎をタタキのめさんと気がすまん!」
今まで見た事もないような形相でラ・メーンを睨む。
ゲタンも爆発寸前じゃ。
しかし、わしも爆発寸前なのじゃ。
「ゲタンすまん。こいつの標的はわしなんじゃ。
だから今回だけはわしに譲ってくれんか?」
「ぐっぐぐっっ、くそっ、わかった。そのかわり俺の分までぶちのめせよ、
ジジイ。ジョコのことはわしに任せろ。」
すごいのうゲタンは。
自分も怒り狂う寸前のくせして、感情を押し殺して族長として冷静に
判断しておる。頼りになる族長じゃて。
「あ~~~もうダメかもな~アイツ。結構深く刺しちゃったからな~」
邪悪な笑みでおちゃらけた口調。
ブチッ
「崩れ落ちていく時のあの絶望感漂わせる顔・・・ぞくぞくしたぜ」
ブチッブチッ
「あの族長とやらとお前の必死な顔も見れて楽しかったぜ~~」
ブチーーーーーーッッッッ
「・・・・・だまれよ。」
「はっ、何だってーーーー?」
「だまれよ、このクソ野郎が~~~~~~。」
「何だ、仲間を侮辱されて憤っているのか?
しょせん生きる価値のない雑魚じゃないか。俺にとっても、お前にとっても。
あいつだけじゃない、この国、この星に住む者達全てが雑魚だ。
生きる価値のない生命なんだよ!。」
「お前の価値観なんて関係ないんだよ。
お前の汚らしい声を俺に聞かせるな・・・・・」
「ん・・・何だ?いつものジジイ言葉はどうした?
こころなしか、声まで若返って聞こえるようだが・・・・・?」
「お前のクソっぷりを歓迎してほんの少しだけ俺が相手してやるよ。ラ・メーン」
※※※※
「うわあああああああーーーー」
「どうしたのミチ」
「こ、これみてよミカ・・・ジューローが、ジューローが。」
言われてミカが惑星ドリスの水槽を覗く。
そこには・・・・・・・光の柱のようなものが立つ。
その中心にはジューローが。
「何?これは・・・・光柱?」
「ラ・メーンが現れたんや、それで仲間がラ・メーンによって
剣で差されてブチ切れたジューローからいきなり・・・」
普段のジューローは夜中に直径2~5mぐらいの光の円は観測されているが、
今回のように光柱のような形状は初めてだ・・・・
正確には1mぐらいの円の柱で高さは10mぐらいにも及ぶ。
「・・・・絶対領域。
誰にも犯す事のできない不可侵、不干渉の空間。」
ミカがつぶやく。
「別名・・・神の領域・・・やっぱりあの白い光は“神素”
だったのね・・・」
ミチが応える。
光の中心のジューローはいつもの年寄りの形態ではなく、20代ぐらいの美男子だ。
いつものごとく、他の誰にもこの光は見えていない。
介入者であろうラ・メーンの目にも・・・
「・・たぶんこれが本当のジューローの姿なのだろう。」
「絶対領域だけでしか、あらわすことができない本当の姿・・・・」
「「・・・・・神々しい」」
ミチ・ミカが意図的ではなく、各々の感想を言っただけなのだが、
セリフがかぶる。
「ジューローが動くわね」
※※※※
「なんだ、その上から目線は」
ラ・メーンがジューローの言葉に苛ついたのか。
先ほどまでニヤついていた顔が真顔になる。
「俺様と対等だと思うなよ、ジューロー。
お前ごときが俺様と対等に戦えているのはな、わざわざ俺が力を封じて・・・」
「“重力無限”」
ボソリとジューローが低い声でつぶやく。
ブーーーーーン
ラ・メーンに耳鳴りと共に負荷がかかる
「ぐっ何だ、たったこれだけの負荷か。口ほどにもないな。
くっくくくこっちはお前の能力なんて調べ済みなんだよ。
最大600%だったか?その能力を打ち消す対策は・・・・」
ブブーーーーーン
「殺しはしない」
「ばっばかな・・なんだ・・・・こ、くっかっか」
「最大600%? いつの話だ?それ。」
ら・メーンは地面に突っ伏してめり込んでいく。
普通の体なら、もうとっくに圧迫されてつぶれてしまっているのだが、
対策をとっているのだろう。まだ体の原型はとどめている・・・
「ぐっが・・げっ・・・」
「借り物の体だから手加減しておいてやろう。
お前が気絶すればアゴスも正気にもどるだろうしな。」
「げげげっっずごお」
「ラ・メーン、もうお前は気絶するまでしゃべれないだろうから、
最後の言葉を俺が言ってやるよ」
ジューローは這いつくばったラ・メーンをするどい目付きで見下しながら言う。
「お前ごときは俺の敵じゃない。」




