第119話 リイナの才能
わしは、シスパ、ゴスン両名が帰ったのを見計らい、先ほどゲタンに指示して
道具を作る担当の人員を集めてもらった。
その通りじゃ、今買った製品をパクルのじゃ!
だけど、丸パクじゃないぞ、ちゃんと改良部分も指示するのじゃ。
でも、その前にこの製品を完全にコピーできるほどの技術を育てないといかんのじゃ。
「集まってもらって早々じゃが、この道具を作ってもらいたい。
まずは、寸分たがわずでいい。この道具はバラしたりしても型をとってもいいので
自由に使ってくれ。」
●つるはし ●大木槌 ●ノミ ●のこぎり ●スコップ
●斧 ●一輪車 ●ショベル ●はしごの計9品目じゃ。
そうなんじゃ、まずは道具を作る道具をつくらないといかんのじゃ。
言いかたはややこしいが、つまりスコップを作る道具だったり、
大木槌をつくる道具だったり、できればマニュアル化して
だれにでも作れるようにしたいが、まあ、職人を育てる方が早いか。
大工道具専門とかじゃなく、製作部署専門という大まかにな。
近くの老齢の、いかにも職人という人がいたので、話しかける。
「どうじゃ?できそうか?」
「ふん、こんなもん何でもないわい。10日もあれば全部つくれるだろう。」
「おお、すごい。お主に製作部の長をお願いしたい。名前は?」
「おお、いいぜ日頃から作りなれてるからな。名前はイカリだ。」
「えっ長介?じゃあ製作部の長介っていう役職で頼むぞ。」
「はっ?何のことかわからんがまあ、いいぞ。」
イカリ長介は、いぶかしがりながらも、部下を連れて道具作りに取りかかる。
あとは出来上がりを待つばかりじゃ。
あとはヤを付ければ完成じゃ。長介。
※※※※
少し時間が空いたので、
セイムさんとエメリさんが子ども達に教えている学校を見に行く。
学校とはいっても原っぱでやっておる青空学級じゃけどな。
ちょうど子どもたちが真剣に足し算引き算をしているところじゃ。
今は勉強は必修にしておる。この後は大人も混じって勉強じゃ。
今までは地面に棒で書いて計算しておったのじゃが、
今は紙に鉛筆の芯がむき出しのような黒棒で書いておる。
チチパさんとは色々あったが、仕事はちゃんとこなしてくれているようじゃ。
紙の生産も、黒棒の生産もどんどんお願いしておるところじゃ。
そういえば、ゴスンに紙を見せるの忘れてたな。
今度来た時に紙があるかどうか聞いてみよう。
エメリさん、セイムさんに軽く挨拶をして、子ども達を見てまわる。
レイクもみんなと混じって勉強しておる。意外にマジメじゃな。
リイナは勉強からはずれ、原っぱの隅で一人で座って紙に何か書いておるので
後ろからそっと見てみると・・・・
むむむっ書いてなかった、描いておる!
しかも、うまい!
見たものをそのままリアルに。写実的に描いておる。
念話で話しかける
〈リイナ絵めっちゃうまいな!〉
〈アッ、ジューローミチャダメ!ハズカシイ〉
と言ってわしの目から絵を隠す。
〈絵を描くのが好きなのか?〉
〈ウン、アノネ、ハナヲカクノガ、スキナノ。
ジューローニハ、トクベツ二、ミセテアゲルネ〉
今まで描いた絵を全部見せてくれる。
・・・めっちゃうまいのじゃ。
写実的で、本物通り、リアルな絵なのじゃ。
黒一色しかないのに、掛け合わせによって濃淡をきっちり駆使して
遠近法まで・・・いやいやちょっとうますぎない?これ?
日本に持って行っても通用するんじゃないのか、これ。
この絵の技法を自分独自で編み出したとなると、リイナ恐るべしじゃな。
技法うんぬんはほっておいても、見る人皆を唸らせる絵がここにある。
あっこれ・・・・売れるんじゃね?
額縁を用意して、その中にリイナの絵を入れれば素晴らしい。
芸術の誕生じゃ!
絵の安売りはせずに1枚、1丸バッキャ(100万円)で提示して
オークション形式で欲しい人に値段を決めさせる。
芸術家の誕生じゃ!
いやいや、あまりにも高額すぎるとよからぬ奴に
リイナが攫われる可能性があるのう。
金を産む卵じゃから。
1丸バッキャ(100万円)は止めて、
欲しい人に値段を決めさせる形式にするか。
それと、絵を売る事により、芸術を開化させたい!
誰かしらが興味もってくれて、絵を描くということが広がりをみせれば・・・
そのうち絵の具を開発してくれて、モノクロからカラーの時代になるかもしれんしな。
その先陣をリイナが担う!すごいことじゃないか!
という事をリイナに相談してみる。
リイナは・・・恥ずかしいけど、みんなに私の絵を見て欲しいという
思いはあるらしい。誰かがお金を出してまで欲しいと言ってくれるとは
思わないが、売れたらうれしいとも言ってくれたので今度ゴスンに相談じゃ。
とりあえずリイナには合間合間に絵を描いてもらう事にしておいた。
その間わしとリイナはずっと念話で話していたので、
はたからみていたエメリさん、セイムさんには
原っぱの隅で笑いあう、おっさん・・おじいちゃんとその孫という
大層微笑ましい構図だったらしいのじゃ。
・・・10年後の嫁じゃ!




