第12話 初めての検解
わしは今、村から少し離れた森の中にいる。凛とした木々の間から漏れ出る明かりに幻想的ですらある中に身を置き、目をつむって精神を集中させる。
ピリピリとした感覚が体中を伝わってくる。腹式呼吸を繰り返しながら呼吸を整える。そのまま息を止め、20秒、30秒、40経過…今じゃ!
目を見開くと同時に、大きく息を吸い込み、大きく無駄な動作で右手の人差し指と中指をまっすぐのばしVの字にして、天に突き刺すかの様に掲げる。
そのV字になった右手をわしの右目の位置に移動し、舌を左斜め45度の角度で突き出し大声で叫んだ!
「検解」
ミチ、ミカにもらったチート能力「検索&解析」じゃ。この世界の全てのものを地球で近しい物に変換、解説してくれる優れものなんだそうだが、初めて使うので緊張した。
なんか…かっこよく決めたが、テヘペロじゃ。俗称テヘペロじゃ。しょせんテヘペロじゃ。どうせテヘペロなんじゃ…いかん自虐的になってしまったわい。
するとV字で囲った右眼に赤色のターゲットのような丸が出現し、右眼が焦点を合わせたものに詳細が表示された。
解説/クムクムの木…それほど珍しくない材木で、この森に広く分布する、代表的な木。日本名スギに近い。加工して多種多様に使用できる。などなど
すごいな。これは使える。植物だけでなく、人、動物、加工品、人工物などにも使えるのだろうか?これから色々と試してみなければな。
とりあえず今は他を探さなきゃ…
ふと周りを見渡すと、レイクとリイナがテヘペロのポーズを真似しながらこっちを見ている。と思ったらわしの周りを小さい子ども20人ぐらいに囲まれていた。全員テヘペロのポーズで…。
新たなチート能力の集中&興奮しすぎて全然気づかなかった。
そんなシュールな光景に唖然としてるとレイクが話しかけてきた。
「仙人様、このぽーず何?何?“けんかい”って言ってたけど?」
最初っから見てたの?恥ずかしい精神統一も?
〈ハジメカラミテタヨ〉
…リイナ心読んでない?わしの。読めないよね。そんなチートもってないよねキミ。
っていうか、この子供達だれ?なんでこんなにいるの?
「みんな、親が狩猟や、出稼ぎでいない日中は、自分達で集まって、子どもだけで出来る仕事をするんだ。お手伝いを含めてね。」
3歳〜12歳くらいの子どもが集まっている。みんなテヘペロのポーズでわしの一言を待っておる。よし、ここは新参者がなめられないように、一発ビシッとかましてやるかのう。
少し低めの声で、真剣な顔つきで子ども達に告げる。
「我が国、古来より伝わる選ばれし勇者を讃える感謝、感激、雨、霰のポーズ!“テヘペロ”じゃ〜〜〜〜〜〜!!」
「「「「うおおおおおおお〜〜〜〜」」」」」
子供達がいっせいにうなりをあげた。
みんながジャンプしながら声に出して叫ぶ「「「テヘペロ」」」「「「テヘペロ」」」ビッグウェ〜ブがおこる。
なに、怖い…。この盛り上がりをどうすれば…。
ごめん…悪ふざけがすぎました。ジジイ反省。




