第112話 弟子リューゴス
結局その日は仕事にならず、ヌル族の村に帰ることにした。
もちろん弟子のリューゴスも付いてくる。
道中色々話しかけるも、言葉少な・・・カタコトじゃ。
普通にしゃべれと言ったら面倒くさいと言われた・・・
わしの弟子なのに・・・
わし師匠なのに!
さてはわしの事を尊敬しておらんな!
いかんいかん、そんな細かい事で怒ってどうするんじゃわし、
もっと師匠としての大きな器をみせるんじゃ。
「ところで、リューゴスはどこから来たのじゃ、ん?」
「・・・・・・・」
「この剣すごい装飾じゃな、誰に作ってもらったのじゃ?」
「・・・・・・・」
「その頭の布オシャレか? かっこいいのう。」
「・・・・うっさいハゲ」
「も~~~~~う勘弁ならん!なになになに
師匠のわしが気を使ってやってるのに、なになになに?
わしが悪いの? ねえ、教えて? わしが嫌いなの?
その態度、も~~~う許さんもんね。ハゲって言ったから許さんもんね!」
あまりの激怒ぶりに、あわててセコス、ジョコ、マブシが止めに入る。
「まー落ち着けって、ジジイ。イイじゃねーかしゃべらないぐらい。
さっきまで本気で戦っていたんだぜ。戦いが終わってすぐに
べらべらしゃべり出すような奴よりは好感度高いぜ、俺は。」
とわしを羽交い締めにして気遣ってくれる。
・・・気遣ってくれるわりには羽交い締めって。
とりあえず解いてくれる?羽交い締め。
「だけどなリューゴス、お前もこのジジイに少なからず何か感じとった
から弟子になったんだろう、大切な剣を差し出してまでもな。
だったら、少しずつでもいいからお前から歩み寄れよな。」
とセコスがリューゴスに諭す。
セコスが大人に見える・・・・賢者タイムだからか?
「・・・・・わかった。」リューゴスがうなずく。
なんじゃろう、人嫌いなのか、それとも自分の殻に閉じこもるタイプなのか。
しゃべるのが面倒くさいとはいうものの、
本当は今まであまり人と触れ合った事がないんじゃないのか。ち
ょっと戸惑っているような気がした。
外見は大人じゃが、成熟していない子どもに見える。
見た目は大人、頭脳は子ども。その名は、名探偵リューゴス!
ものすっごい駄目感がハンパない名探偵じゃ・・
「まあいいわい。わしもアレコレ言わんようにする。
だが、ラ・メーンの事だけは別じゃぞ。
その事だけは詳しく話してもらおうか。その前に・・・
すまん、さっき暴れた時にわしの右手がマブシにクリティカルヒット炸裂して
伸びてしもうた。ちょっと待っててね。」
といい、気を失ったマブシをジョコに丸投げ・・・任せて再び歩き出す。
リューゴスは戸惑いながらも、ポツポツと話してくれた。
ラ・メーンに会ったのはやはり1カ月前。
突然頭の中に響く声に最初はびっくりしたが、すぐに慣れた。
なぜか、自分の境遇・・産まれてからの出来事をすべて知っていた。
特に恐怖はないが、段々と外の世界の話をしだして興味があった。
今まで自分は外の世界を知らなかったからだ。
そんな話しもしつつ体を要求してきたものの
一度もその要求に応えていない。
何か最後の2行だけ聞くとエッチじゃな・・・
俺の体を借りてなにをするつもりだとラ・メーン問いかけると
ジューローの話が出た。
どうやらそのジューローとかいうジジイが標的らしい。
話を聞くうちに興味を持ち、色々と情報収集をするうちに
先ほどの場所に良く来るということで待ち伏せていたとの事。
ふむふむ、ラ・メーンの奴なかなか涙ぐましい努力しておるのう。
やっぱり実力行使は出来んみたいだし。
何回も断られるって・・・報われないな・・・。
しかし、やっぱり切れる奴みたいじゃのう、ラ・メーンは。
体交渉をして、駄目だと言う奴には困り果てた体で理由を話す。
そして、対象にわしの事を興味を持たせてどんどん送り込んでくる気じゃろう。
体を乗っとれても、乗っ取れなくてもな・・・。
現実に嫌がらせぐらいにはなっとるしな。
やれやれ、やっぱりラ・メーンを倒すまで続くのかいな・・・
わしはただ・・・わしはただ普通のアイドルでいたいだけなのにのう。
「だれがアイドルだ!ジジイ。ハゲアイドルか!」
とセコスがつっこんでくれた。
っていうか何でわしの考えがわかるの?
セコスまっまさかお前!
「いや、ラ・メーンに操られてねーし。
ジジイ思いっきりしゃべってたんだよ。」
「えっまじで? 最近ついポロっと出てしまうんじゃ、
ほれ、見てみんかい、わしの下のほ・・・痛い!」
せっかくわしの体を張ったギャグをしようとする前に
セコスに阻止された・・。
・・・まあそういう事でリューゴスの事はあまりわからなかった。
言葉少なというか、自分の事はあまりしゃべりたくないようじゃったので
今は聞かないでおこう。そのうち慣れるまでは・・・な。
多分そういうのが伝わっているのじゃろう。
セコス、ジョコ、マブシもそれ以上余計な事は聞かなかった・・・
あっ、マブシはず~~っと気を失ってるからね。
途中、随所随所でボケながらヌル族の集落に向かって歩き、
陽がくれかかった頃にエメリさんの待つ我が家へ帰途に着いた。
嘘じゃ。
エメリさんは待ってなぞいない・・・妄想じゃ。
ゲタンの家に着いたのじゃ、本当は。
リューゴスの説明はどうしようかのう・・
面倒くさいからゲタンにはわしの隠し子だとでも言っておこう。




