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第10話 族長の妻セレブ

 顔に白い布をかけられ男性が横たわっている。


 その傍らには顔を真っ青にした女性がうつむいて座っていた。たぶんセイムの母親だろうか。


 「お父さん!お父さん」

 セイムさんが父親に声をかけると、母親がうつむきながら顔を2度横に振る…。

 「うそ……」

 セイムさんも顔を真っ青にしてその場に座り込む。


 「……静かになさい。今眠ったばかりなのよ。」


…………………………………………………

…………………………………………………

………………………周りを静寂が包み込む。


 自分の心臓の音まで他の人に聞こえそうなぐらいの静寂だ。


 「うそよ、そんなの…」セイムがつぶやいた。

 「うそよ〜〜〜〜〜」


 その時突然「ブフォっっ」という音とともに男性の顔にかけられた白い布が勢いよく吹き上がる。ヒラヒラと舞い上がる。


 「んふ~~~ぶがっふが~~~~」

 白い布が顔にヒラヒラと舞い降り口をふさぎ、また舞い上がる。


 「んふ~~~ぶがっふが~~~~」

 それを3度ほど繰り返したのを静かに見守った後、白目のセイムがつぶやいた…

 「がび〜〜ん〜〜〜〜」

 錯乱してる! 美人だいなし!


※※※※※


 水を出されて、皆でとりあえず一服ついた。


 「だから私は眠ったばかりと言ったでしょう。」

 「お母さんも真っ青な顔して言われたら私も勘違いするわよ。」

 「私の顔色が悪いのはいつのもことでしょう。こういう顔なの。」


 「それにしても顔に白い布をかけなくても、私じゃなくても勘違いするわよ。」

 どうやらこの世界でも死んだ人の顔に布をかぶせる習慣はあるらしい。


 「布は、お父さんいつも夜中に息してない時があるから。この機会に確認するためにかぶせたておいたのよ。無呼吸症候群なんじゃないかな~と心配に思って。そんな時にあんた達が帰ってきたから…。」言い終わると同時に母親はわしの方に向き直り、


 「すみません、お見苦しいところを見せてしまいまして。ところであなたは…。」


 そういえばまだ自己紹介もしていなかった。


 いや、あやうくスルーするところだったけど、この世界に無呼吸症候群とかあるのか?というよりそんな言葉あんのかよ!なんで知ってんだよ!でもファンタジーなのでスルーしておこう。


 改めて自己紹介をしようとしたら…レイクが「ジューローは仙人様なんだよ。」とくったくのない笑顔で答える。


 いや…わしは仙人じゃないですよ。


 「ジューローさんは私たちをゲフンから助けてくれたのよ。でもその時の衝撃で記憶を無くしてしまって…それで記憶が戻るまでうちに滞在してくれるようにとお願いしたのよ。」


 セイムさんが助け舟を出してくれた。助かる。


 「そうでしたの。それはありがとうございます。お聞きになったかもしれませんがゲフンとセイムは両族長の決めた許嫁同士なのです。父親もネル族の将来と娘の幸せを思った末の苦渋の決断だったと思います。私も族長の妻として許嫁の決定には文句がありません。たとえゲフンが頭が弱くても。とても頭が弱くても。ひょっとして…頭が弱くても。文句は一切ありませんとも。」


……っていうか頭が弱いことしか文句ないのかよ。

 ここの族長っていうか、父親絶対みんなから人望無いよ。


 「そういう訳でしばらくこちらに厄介になることになりました。ご迷惑だとは思いますがよろしくお願いします。私のことは気軽にジューローとお呼びください」と頭を下げた。


 「こちらこそ何もない家ですが、我が家だと思いお寛ぎください。わたしのことはセレブとお呼びください。」


 「それではセレブさん。ご主人、いや族長が倒れたとお聞きして、急いで帰ってきたのですが、大丈夫なのでしょうか?」


 「私も小用で出かけていて帰ってきたところ、入口で旦那が倒れていて、あわてて寝所に運んだのですが、すごい高熱で、水で濡らした布をあてがってはいるのですが、一向に熱の下がる気配がなく、困っていたところです。」


 ふむ、高熱といえば風邪かな?ただの風邪でもこの世界では致命傷になるかもしれないしな。


 「セレブさん、お薬とかお医者さんはいるのですか?」


 「お医者さん?というのは聞いたことがない言葉ですが…薬などは城下町などに行けばあるかもしれませんが、私たちのような森の民などには一生縁のないような高価な代物です。」


 ひょっとしたら代々伝わるような秘薬や民間療法などがあるのではないか?と思ったのだが…あればとっくに使っているか。それならば病気やケガなどをした時はどうしているのだろう。聞いてみた。


 「一応、呪いまじないしのカカカさんには大分前に来てくれるよう手配してあるので、もうすぐ着く頃だと思うんですけど…」


 呪い師? そんなので治るのか?と、いぶかしく思っていると…


 「この村の呪い師で20年のベテランですの。一説によるとツンダ村のトンダさんの九死に一生のケガを九死に二生にしかけたとか。」


 いや、それまた殺しかけてますやん。全然武勇伝じゃないですよ。むしろマイナスやないか〜〜〜い。と心の中でツッコんでいると


 入口近くで大きな声がする

 「呼ばれて、われて、じゃじゃじゃじゃ~~ん!」


 ムム、新たな濃いキャラクター登場の予感。いやな予感しかしない…


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