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第1話 小林十郎 78歳の死

初めまして。数ある中から読んでいただきありがとうございます。初めて書いた小説ですので、いたらない所がたくさんあると思いますが、ファンタジーとしてさらっと読んでいただければうれしいです。

1話目は導入なので真面目ですが、2話目からすぐにふざけますんでさらっと読んでいただければ・・

 うっ・・・うう


 目が覚めるとまっ白な天井が見える。目だけで周りを伺う。見た事もない部屋だ。目の前には無味乾燥な飾りけのない白い壁だけの部屋だ。


 どうやら自分は横になっているようだ。


 体は動かせない。


 耳も聞こえないようだ。


 目が覚めて、辺りを見回す自分に気づいた老齢の女性が椅子から立ち上がって、私の体に覆いかぶさるように声をかけているようだが、何をいっているのか全く聞こえない。


 しばらくすると、30代、40代の男女6人と小さい子どもが4人、ゾロゾロとドアから入ってきて並び出した。


 みんな悲しい顔をして、しきりに口を動かしているようだが自分には聞こえない。自分はむなしく唇の動きだけを見つめ続ける…。


 しばらく自分は何者で、若いのか、年寄りなのか、男なのか女なのかも状況がわからなく、ただただ自問自答を繰り返す。


 そんな時、そんなに広くない部屋の片隅にいた60歳は超えているだろう白髪の彫りの深い顔をした白衣の男性を見て思い出した。

 自分を思い出した。


 自分は意識を失い倒れたのだ。


 いつだったかは思い出せない。つい昨日のようだったとも思えるし、もう2週間も前だったのか時間は思い出せない。


 いつもの日常、朝の日課の散歩に出ようと目覚ましに起こされ、布団から出ようとした時、体に違和感が…


 なにか自分の体ではないような違和感…手足が震え思うように動かせない。ヤバイと思い、誰かを呼ばなければと、声を出そうと思った瞬間にはもう手遅れだった。目の前が暗くなってそのまま意識を失ってしまった。


 今ならわかる。


 椅子に座っていた老齢の女性が妻のさとみだという事も。

 30代、40代の男女6人と小さい子ども4人が自分の息子と嫁と孫だと言う事も。

 白髪の彫りの深い顔をした白衣の男性が、自分の20年来のかかりつけ医だということも。


 今ならわかる。

 自分の命がもうわずかなのだという事も。


 本当ならこのまま目ざめずに亡くなるところを、神様がご褒美にみんなにお別れの時間をくれたのだろう。


 小林十郎 今年で78歳。


 若い時は柔道を少し嗜んだぐらいで平凡な学生だったと思う。小さい印刷会社に就職してそこで知り合ったさとみと26歳で結婚し、その後3人の男の子を授かり私生活も、仕事も順風満帆。65歳の定年まで勤め上げて退職。息子たちも早々と結婚していき、次第に孫に囲まれて悠々自適な恵まれた老後を送っていた矢先の出来事だった。


 たぶん脳梗塞だったんじゃろう。


 自分のしわしわに痩せ細った腕をのばすと、若い頃に比べてしわしわになったさとみが、その手を包みこむように優しく両手でつかんでくれた。


 温かい…とても温かいぬくもりだ。


 しわしわになっても若い時と変わらない愛嬌のある笑顔を自分に向けて言ってくれた。


 「幸せだったわよ」


 泣きながら何度も何度も言ってくれた。


 感覚はないが、自分の頬を涙が伝ったように思う。


 それが合図だったかのように急に眠くなって、まぶたが重くなる。


 もう少しとがんばってみたが、やっぱり逆らえなかった。これ以上望むのは贅沢というものか。もし神様に会えたらお礼を言いたい。気の利いたご褒美に感謝と…。


 小林十郎 永眠。



※※※※※



 パーン、パーン、パパパパーーーン

 「「おめでとうございま~す」」

 目が覚めた!

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