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ワクワク法螺話

この日は、坂本群馬、設楽慎吾、東貴博、佐々木哲夫の四人で飲んでいた。同窓会後、いくつかのグループで交流が生まれているようだった。苦労して開催した甲斐があったというものだ。このグループもそのうちの一つである。


ただ、群馬と玉木碧のことは、慎吾以外は知らなかった。余計な噂が流れ、碧に迷惑をかけてはいけないと考え、信頼できる人にしか話していなかったのだ。特に、貴博はおしゃべりな男だった。


それにしても、人のつながりとは不思議なものだ。第一回の会議に剛田浩が哲夫を連れてこなかったら、哲夫とはこれほど親しくなっていなかっただろう。また、この頃になると、哲夫が委員長を務めたことも、必然だったと思うようになっていた。そんな哲夫も、群馬の引き出しの多さに興味を持っていたのだ。だから、忙しい中、こうした集まりに顔を出しているのである。


飲み会の中で、群馬は誰のどんな話しにも即応答し、的確な返事をする。また、普段は理性で隠れている相手の本音を見抜く努力をしていた。


「タカちゃん、政治家になりなよ」


坊主の貴博には、こんなことをよく言っていた。社交的で顔も広く、政治についても自分の意見をしっかり持っていたので、向いていると思ったのだ。ただ、政治家の特徴である打たれ強さに欠けていることが心配だった。


「テツくん、経営者なら、理念や志しを持たないとだめだよ」


たかほ製作所の社長である哲夫には、自分のことを棚に上げて、よくこんな説教をしていた。そうは言いながらも、哲夫は心底、物造りや鉄いじりが好きで、経営者というより、一職人として、その道を究めたいのだろうと気づいていたのである。


会も終盤に近づくと群馬のいつものキメ台詞が出る。


「タカちゃん、テツくん、金なんか持ってるヤツが出せばいんだよ」


これが出ると貴博と哲夫が支払いをせざるを得なくなるのだ。ゲコである慎吾はもっぱら運転手だった。実は、この頃の群馬は、千藤明のビジネスを手伝っていたため、自分の飲み代くらいは払えたが、この二人に金を出させることを面白がってやっていた。同時に、文無し群ちゃんと一緒に飲むことが貴博と哲夫にとって価値のあることなのかを試していたのだ。二人も、気づいていながら、あえて支払いを担当していた。


そして、数ヶ月後の飲み会には、ゲストが来た。同窓会で意気投合した不動産会社の二代目社長、倉木雄太と、同窓会で群馬の講釈や法螺話を面白がって聞いていた服部加代だ。倉木は先日の同窓会で、群馬から「不動産王」とあだ名をつけられたほどのやり手だった。加代のほうは、花の独身OLである。会は群馬のひと言から始まった。


「いや〜、同級生で一番出世したのは、間違いなくクラさんだよ。今日はご馳走になっていいよね?」


不動産王は、苦笑いしながら応える。


「おう、当然だよ」


文無し群ちゃんとは大違いである。


「まったく、群ちゃんには、かなわねーなー」


貴博と哲夫にぼやいていたが、二人はほっとしているようだった。


そして、群馬は、倉木の仕事の話や家族の話などを一通り聞いてから言った。


「不動産業って、大きなお金が動くから、いろいろと苦労もあるよね。クラさんも頑張ってんじゃん。いつか僕が事を成すときに、投資してもらいたいから金貯めといてよ」


続けて、少しだけ未来の法螺話をした。


「この先、光の道構想が進んでいくとね・・・」


倉木も坂本群馬という人間に、興味がわいたらしい。


「投資の話しは、群ちゃんがそのステージまで来たらね」


加代がすかさず言った。


「じゃ、私が証人ね」


二人の顔を見て、ニッコリと微笑んだ。


こうして、この会はお開きとなった。倉木はいつのまにか会計を済ませ、高級外車といつもの代行で帰っていった。群馬たちは、倉木を見送った後、慎吾の車に乗り込んだ。酒を飲まない加代は、一足先に花の独身OLらしい、おしゃれなマイカーで帰っていた。

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