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遺言アプリ

この時代では、すでに、全国民の個人情報はクラウドに集約され、あらゆる情報が国によりデータ管理されていた。


そこには、群馬たちがアカデミアで育てたリーダーたちも、大きく関わっていた。


さらに拡大したオモパロスグループの中に、ソフトの制作会社があった。この会社が全国民の個人情報をデータ管理するという国家プロジェクトに技術提供をしていたのである。


そして、その会社が提供しているサービスの一つである「遺言アプリ」が人気商品となっていた。


遺言アプリとは、国で管理している個人情報が、故人に変更されると、予め指定していた人たちに指定したメッセージが送信されるというものである。もちろん何日後の何時という時間指定にも対応している。


メッセージの送信先も、国のデータと連動しているので、大事なメッセージが届かないという心配はないのである。


国のデータに登録する送信先は、個人の自由であるが、必ず一つは登録することが義務付けられている。国や地域からの連絡事項も、そこへ送信されるため、セキュリティーも強化され、ストーカー被害などにも迅速に対応できるようになっているのだ。


紙の書類を見かけることは、ほとんどなくなってしまった。


また、かつて、たくさんの人とのつながりを求めて集まってきたSNSの利用者たちは、そのつながりで逆に疲れてしまい、大手SNSは衰退の一途をたどっている。小さくても信頼できるコミュニティへ人々は移行したのだ。当然、メッセージの送信先に登録されるのは、そういった次世代コミュニケーションツールがメインになっている。


余命半年を宣告された群馬には、この遺言アプリを利用してメッセージを届けたいひとがいた。


玉木碧である。


遺言アプリには、直接の連絡先をしらなくても、同窓生リストからもメッセージを送れる機能が有料オプションでついていた。


このオプションサービスを使った「同窓会リストアプリ」もヒット商品となっている。卒業アルバムに住所が乗っていない時代もあったのだが、これにより、同窓会も簡単に開催できでるようになっていたのだ。


群馬は、碧が時々孫の面倒を見たりして、夫と仲良く暮らしているということを風のたよりで聞いていた。


「碧が幸せなら、それでいい」


それでも、碧のことを忘れられずにいたので、今でも群馬は、ひとり身だった。


「本当は、メッセージを送るだけじゃなくて、碧のこともっともっと知りたかったな。例え、理解できないことがあったとしても、100%受け入れられたのに。碧に逢いたい」


•誰かと一緒に恋に落ちる


結局、この項目は達成できなかったことになる。


群馬は自らの命を削りながら、未来を創るために働いて、愛しい碧に恋をしていたのかもしれない。

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