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農業革命その2:養蚕業の復活

農業革命の二本柱のうち、もうひとつは、シルクの食品利用だ。これには、坂本群馬の養蚕業を復活させたいという思いがあった。群馬の地元は、かつて養蚕業が盛んだったのだ。随分と昔のことである。群馬は、幼少の頃、母親の実家へ養蚕業の手伝いに行ったことを覚えていた。蚕が出す白い糸のようなものを不思議に思った記憶がある。


群馬が起業した頃、恩師からシルクの素晴らしさを聞いたことがあった。シルクといば、衣料のイメージしかなかったが、健康食や化粧品としても利用価値があるというのだ。


少し説明すると、人間が生きるのに必要な三大栄養素は、タンパク質・炭水化物・脂肪である。この中のタンパク質は、20種類のアミノ酸の組合せにより作られているのだが、シルクには、この内18種類ものアミノ酸が含まれている。ゆえに、衣料品も肌によく馴染むのだ。すでに医療では、手術用の糸としても使用されている。また、食品や化粧品にすれば、健康や美容面で、さらなる効果が期待できる。


また、シルクを生みだす蚕が食べる桑の葉だが、これもまた注目すべき健康食材なのだ。桑葉に含まれる1-デオキシノジリマイシンの作用で、血糖値の上昇を抑える効果があり、糖尿病の予防や改善になる。同じくGABAは、高血圧に有効とされている。当然、これらの有効成分も蚕は吸収していることになるのだ。


このようなことを恩師から教えてもらったことが、幼い頃に身近にいたあの蚕には、そんな素晴らしいチカラがあったのかと強く印象に残っていた。蚕とは読んで字のごとく、まさしく天の虫なのである。そして、群馬は、幼い日の記憶と共に養蚕業の復活を夢見るようになっていた。


あれから十年以上経って、ようやくそれを実行に移すときがきた。やっとそこまでの実力がついたということだ。群馬は、地元の大学に出資し、共同で蚕・シルク・桑を利用した健康食品と化粧品の研究を開始した。


シルクは主にセリシンとフィブロインという成分に分けられる。セリシンは比較的簡単に採取できるため、食品や化粧品への利用も簡単なのだ。現在出回っているシルク製品は、セリシンを利用したものである。一方、シルクの本質はフィブロインにあるのだが、丈夫な高級繊維であるシルクの本質だけあって、フィブロインを分解するのは、非常に困難だった。だが、群馬はシルクの食品や化粧品を名乗るなら、フィブロインを使わないと意味がないと考えていた。


研究は蚕の品種改良から始まった。随分と先は長そうだ。だが、蚕・シルク・桑が健康食品や化粧品としての利用価値を見出せれば、養蚕業は必ず復活する。また、これほど、オールマイティな健康食品は他にないという確信もあった。


シルクの効能を付け加えると、脳を活性化する働きもあるので、痴呆症患者を減少させる可能性もあるし、受験勉強にも効果的だ。こうして、群馬の養蚕業の復活という志しにより、農業革命の二本柱のひとつは、静かなスタートを切ったのだ。


また、このシルクビジネスは、世界にも通用すると考えていた。


「きっと、シルクは、押し寄せるグローバリゼーションの波にもまけない日本の切り札になる」


群馬には、妙な自信がった。

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