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まずは、であいから 06

 服を買うのは当面の分さえ確保できればカタログ注文で揃えていくことも可能だしと、からだのサイズを正確に知るために最初に下着を扱ってるお店に行くことにした。

 ただ…、案内する側の僕がブラジャーを試着すらしたことがないので、店を選んだのは上司ではあるのだが。

 店を紹介してもらうのに通話越しに大いに笑われたのはすこし腹立たしいかもしれない。

 成長しないのは僕のせいではないというのに。

 リリィの採寸からすべてを店員さんに任せて、僕はカタログを拝見させてもらうことにした。

「ふむん」

 下着といっても様々で実用から魅せるものまでさまざまと存在している。

 ぺしぺしとタブレットのページをめくっては自分もまともに成長したら使うことになるのかと、ふと考える。

「シオンさま」

 ふと店員さんに呼ばれてタブレットから顔を上げる。

「はいはい。なにでしょう?」

「エルナタンさまのサイズですとデザインが限られてしまうようでして」

「あや。…おおきいのか」

「いえ、もとよりオーターメイドも承っていますので、どういたしますか?」

「からだにあったほうがいいものなんだし、オーダーメイドかなあ。とりあえずあうサイズの数点見繕っていただけるかな」

「かしこまりました」

 からだのサイズうんぬんは通話時にきいた上司からの入れ知恵によるものだ。

 体験がないのだから仕方ない。

 ずるる、とストローでオレンジジュースをすいあげる。

 試着室のほうからはわたわたしたリリィの声が時々聞こえる。

 肌に直接つけるものだし、羞恥があるのだろうなあなどとぼんやりと人事のように思う。

 まあ、事実人事だし。

 でも下着は大事ではあるのは確かだし。

 ここで採寸したサイズで服はカタログから選ぶつもりでもあるから、きっちりしてもらわなくては。

 あ。カタログ買って行くの忘れないようにしないと。

 これがまず一店めでのこと。


 次は下着以外の服に関して、だ。

 これから暖かくなっていくから薄着なものを選んでいく。

 温度調節もできるように上着から靴までいちどにそろえるのは意外に大変だと知った。

 当の本人も最初は遠慮がちではあったものの、ショツピングというと女の子だからなのだろうか熱中していって、あれやこれもと選ぶのが楽しくなってくる。

 僕も買うつもりはなかったけどついつい買ってしまったり。


 大量の紙袋を手に帰宅した頃には日は暮れかかっていた。

 左手をかざして鍵を解除して自宅にはいる。

「…おじゃまします」

 買い物ですこしは慣れたとはいえ、やっぱりそれは違うとおもうんだ。

「今日からここが帰ってくる家なんだよ。だからね、ただいまっていってほしいな」

「ん…ただいま」

 先に靴をぬいであがっていた僕はリリィとのはじめての、

「おかえりなさい」

 をいった。


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