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まずは、であいから 05

 呼び鈴をおしてから鍵をあける。

「おはよう」

 ばさばさと衣擦れの音がして、ぴょこんと毛布から顔をだしたリリィの姿がそこにはあった。

「あ、え、と、…おはようございます」

 ぺこりと頭をさげた姿はかわいらしい。

「びっくりさせちゃったかな。ごめんね」

 ふるふると、頭をふってリリィはベッド脇に座りなおした。

「そんなことないです。…音、びっくりしたけど」

「音? 呼び鈴のことかな」

「…たぶん、それ」

「ふむん。耳慣れない音だったのかな。機械音だろうしなあ…」

 思い当たることにひとり納得してしまう。

 きょとんとしたリリィをみて思い出す。

「あのね、とりあえずの服預かってきたの。あとで必要なもの買いにいくけれど、とりあえずはこれに着替えてもらえるかな」

 クリーニングされたビニルに包まれた服をリリィに渡す。

「ありがとうございます」

「あぃ」

 笑顔でかえされると自然にこちらも笑顔になるってほんとうなのだな、とちょっと実感。

 着替えるのをまってから部屋をでる。

 とりあえずはこの近くの食堂を利用させてもらうことにしよう。


 バイキング形式の朝食を選び端のほうの席に落ち着くとそれぞれいただきますと食べ物に手をつけた。

「食べながらでいいのだけれど、買い物いっぱいになると思うから、まっさきに必要なものからまわろうと思うんだけど」

 もふもふとシンプルなスコーンにかぶりつくリリィはこくこくと頷いてくれる。

「必要なものってなにか思いつくかな?」

 聞いてみて、自分はチーズを挟んだベーグルにかみつく。

 ここの食堂は何気にパンの種類が豊富なようだった。

「んん。…たべもの?」

「あー…確かにたべものも必須ではあるけど、下着とか服とか、日用品も必要になってくるよね」

「ああ。そういう必要なほうでしたか」

 こくりとカフェオレを飲みこんでから「必要」の意味を再認識してくれたようだった。

「そうですね。着るものがないのは困りますね」

 小さく笑って、頷く。

「住むところは僕の家にってことになってるから家具とかは大丈夫だと思ってくれていいんだ。買い換えたかったら後からでもじゅうぶんだしね」

「おかねないですけど…ほんとうにお世話になって大丈夫なのでしょうか?」

 マグカップを両手でつつんだまま聞いてくる。

 身ひとつでいて、すべて賄ってくれるとなればどうしたって怪しく感じるのは当然か。

「うん。気にしなくて大丈夫だよ。昨日もいったけれど、居てくれることが利益に繋がることになるから」

「よく、理解できないです…」

「きにしない。だいじょうぶだから」

 しゅんとうなだれた頭を手をのばして撫でる。

「…重ね重ねありがとうございます。いまはお礼言うしかできないですけれど」

「うん」

 なでなで、とその受け止め方でいいと肯定したと伝わるようにとリリィのふわふわな髪を撫でてやる。

「あの、わたしにできることでしたらなんでもしますので、よろしくお願いいたします」

 ぺこり、あたまを下げるリリィ。

「遠慮なくなってくれると、うれしいかな。こちらこそよしなに」

「はいっ」

 やっぱり女の子は笑ってるのがいちばんかわいいよね。

 うれしくなる。

「ところで、ノアさんはおひとりで暮らしているのですか?」

「そうだね。ひとり暮らししてるよ。だから気兼ねしなくていいんだよ」

「その齢で、でひとり暮らししちゃうようなとこなのですか」

「あぁ…」

 自分のとことなると慣れすぎていてすっかり忘れてしまうけれど、自分の容姿のことをはたと思い出す。

 リリィより頭ひとつ分はちいさい自分を。

「僕これでも17歳なんだよ。リリィより年上だったりするんだよ」

 見た目はたとえ、どうみても10歳程度の子供にみえたとしても。

「え、…と? ここの世界の人はみんなそんな感じなのでしょうか?」

「否、僕だけかな? 僕はちょっと規格はずれというか、こういう体質みたいなんだ。成長止まっちゃっててね」

「ふや…そうなの、ですか」

「まあ、ひとり暮らし暦は長くないんだけれどね。部屋もファミリータイプだし一緒に住んでくれるのはうれしいかも」

「家事とかがんばりますよっ」

「あぃ」



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