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まずは、であいから 04

 まずはなにから説明したものかと、ぐつぐつとマカロニがおどる鍋をかき混ぜて考える。

 そもそも説明なんてこれ以上必要なのかな、とベーコンをあたためたフライパンに投げ入れ火をとおす。

 ここにきた理由、この世界の説明、きっと一度で説明しきれるものではないのだし一度で覚えきれるものではないとおもうし、追々その時々知る必要がきたときに知ればいいのだとも思う。こどもが世界を知って成長していくように。

 それに、――マカロニをザルですくい湯切りしフライパンにいれ、卵をちいさいボウルで溶きはじめて――、僕が教えられることなんてそんなにないのだし。

 家につく頃に届いた上からのメール。

 内容だけ意訳すると、明日から一緒に暮らすことだ。リリィ君とは年齢も近いし兄弟のいない君にとってもよいだろう。とのこと。

 まあ、いいこそうだしかまわないかな、と思う。

 良いこすぎるくらいいいこな気もしなくもないけれど、と会話した印象をおもいだす。

 逆にひねくれた僕になんか預けて、悪い影響がでそうな気がしなくもない。考えすぎかな。

 ちぎったレタスをのせてあるお皿にフライパンの中身をよそってテーブルに運ぶ。

 今日の夕餉はレタスとマカロニのベーコン卵炒め、パンと温めるだけのクラムチャウダー。

 怠惰な僕にとってはまともなメニューだが、フォークでマカロニをさして口に運んでからふと思いあたる。成長期のお嬢さんを預かるのにこのメニューはいかがなものかと。夕餉としてはあっさりしているが飲み物もついていているが、そこはそれひとり暮らしの手抜きワンボウルメニュー。

 明日からは、もっときっちりと作ろうとこころにメモをしておく。

 そういえば、明日からここでリリィ《あのこ》と一緒に暮らすことになるのかあ、と考えるとそれは不安なようでいて興味と好奇心とがないまぜになった感じをそわそわと心に植えつけた。

 部屋の準備からしなくちゃいけないな、とくちをもぐもぐさせながらぼんやりと思う。

 使ってない部屋はある。

 一応ゲストルームもあるのでまずはそこに寝てもらうことになるだろう。

 ベッドから服からすべてを買うことからはじめないといけないのだ、それはそれで楽しそうだ。

 買い物はきらいじゃあない。

 引越しに似た大物買い。しかし自分のではない。そのことが買い物を楽しくさせる気がする。

 自分の趣味とは違うものをみたり選んだり。はじめての感覚を知り得ることができる機会でもある。


 そうこうしているうちに夜はふけ、湯上りにレモネードをロングスプーンで撹拌させる。

 すこし甘めの冷たいレモネードが喉をすべりからだに染みこむようだ。

 明日は早起きしないといけない。早起きしてリリィを迎えに行くことからはじめないと。

 朝餉はどうしようか。テイクアウトを持ち込むような時間より早く迎えに行かないと不安がるかもしれない、それなら朝食サービスのあるところに行くのもいいかもしれない。

 普段とはちがうことを考えるのは楽しい。

 普段どおり寝る前のメールチェックをすませてベッドにもぐった時にはいつもの就寝時刻より遅くなっていた。



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