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さあ、終局の唄を僕に。

──────────────────────



 

 魔王と勘違いされたおかげか、捕食される事はなかった。そのため、ひとまず安堵した。



 「うん……まぁ、えーと。ひ、一先ず面をあげろ。だが罰しはしない。僕は話し合いがしたいんだ。」


 「はっ!承知いたしました!寛大な御心に感謝を。」


 

 魔王のフリをしていれば今は死ぬ事が無さそうであるため、厨二病をしつつ魔王のフリもする。


 

 「まず名を名乗れ。」


 「ガランディア紅血王朝親衛戦団長、ガラド・アヴァーレインで御座います。」


 「何故僕を魔王だと認識した。僕は再冠者だと称した筈だが。」


 「貴方様が名乗った時の覇気と、やはり再冠者であると仰った為であります。」


 「ほう。だが一つ訂正しよう。僕は魔王に成るつもりは微塵も無い。唯、この世に君臨するのみ……。」


 

 当然魔王に成る、いや成れるつもりなどないし、フリを続ける訳にもいかない。だから僕は魔王とは別の存在である、と言ったつもりだったのだが───。



 「ッ!承知いたしました。魔王ではなく新たなる存在としてこの世に君臨すると、そういう事で御座いますね!であるならば早急に魔王様がご降臨なされたと上の者にだけ報告をして参ります。では、御前失礼いたします。」


 「えっ待っ。」



 風の様に霧散していった。そのあまりの速さに目で追いかけることは叶わなかった。とはいえ、一先ずの恐怖は去った───のだが、依然としてこの森に取り残されたままであった。故にただ一言。



 「……誰か助けて?」




★☆★☆




 あれから更に七の年が過ぎた。

 

 親に捨てられてからの生活はガラドが支援し、この森のひっそりとしたところで2人で過ごしていた。幼児の頃は毎日を共にしていたが、五歳に達してからは付きっきりではなく一週間に一度の間隔で様子を見にくる感じであった。そのため大半は一人で生活していた。一人で生きていくのは全くの苦ではなく、寧ろ楽しかった。

 存分に厨二病が出来るというのは僕にとってはこの世あの世全ての娯楽以上に僥倖だったのだ。

 

 しかし、一人で生活していくにはまず力と体力が必要であった。筋肉を鍛えるのは勿論であったがそれ以上にこの世には魔力と魔法が存在していた。だから必死に学び、特訓した。

 ある程度の魔力量は鍛えれたし、扱い方もある程度洗練された。またその特訓にはガラドも度々付き合ってくれていた為、常人よりは少しばかり強くなっただろう。

 だがしかし、そんな全くの興なし特訓より厨二病を際立たせる漆黒の様な魔力を手に入れたかった。その為最初こそ色は青色であったが、今では漆黒を煌めく純然たる至高の色へと変化を遂げた。その色から放たれる煌々の魔法はあまりに明るく、美しかった。


 そして、今日もいつも通り厨二病を放つ。


 

 「ふっ……漸くか。聖を纒いし超蝶たる漆黒よ。其方はまた美しい……。」



 だがそんな時であった、瞬きの風の音と共にガラドが現れ、最悪の一言を僕に。



 「魔王様……大変長らくお待たせいたしました。玉座に再冠為される時でございます。どうぞ、こちらの魔扉へ。」


 「えなんで?????」


 

 彼女と生活している間に僕は魔王では無い、王では無いと幾度も説明した筈なのに、どうしてか彼女は全てを勘違いしていたのだろう。だから───僕は、故に。



 「……ふっ、ふあ、フアッハハハハハハハ!終わったな!これより物語は終局へと近づくだろう!!さぁ、存分に泣こう────そして精々舞ってみせよう……。僕よ、魔王を繋ぎ止めよう。」



 僕の物語はここで終わりだ。玉座に座る前に彼女の手下やその他勢力に疑問を持たれ殺されて終わりであろう、そう確信した。



 「ッ……漸く、魔王様がこの世を支配し、終と為される時が来たのですね……。これで私たちも…………。」



 恐らく彼女は何か勘違いをしているだろうが、もはやどうでも良い。玉座に座る前に僕は死ぬのだろうから。────いや寧ろ殺して欲しい、切にそう願おう。さらばだ、耀かしき僕の未来あすよ。




★☆★☆




 大量の冷や汗をかき、顔と背中と腋が冷たく染みる。だが体はどうしようもなく不快な熱を持っているためよりその冷たさが際立つ。

 それを感じながら、震えながら玉座まで歩く。

 ───そして、そのすぐ前まで来て後ろを振り返り。



 「魔王様、我々は貴方様に永遠の忠誠を誓う事を此処に宣誓いたします。」



 玉座に、座ってしまった。一体何故だ何がどうなっている何故なにゆえ僕は魔王になってしまったのだ巫山戯るな。もう僕は終わりだ。僕は、僕はただ厨二病でいたい、だけなのに。

 ならば、もはやどうでも良い。生きられるというのなら全力で足掻き、泥臭くても生きてみせよう。───何故だか分からないが、頬に熱いものが流れている気がした。


 

 「面をあげろ、皆よ。僕の名前はカレア・ロードグラード。お前達にはこの名を拝聴し、崇める事を赦す。」



 その発言と共にようやく周囲を見渡した。あまりに人数が多すぎる。先頭にガラド、その後には一体何人いるのだろうか、ざっと百は超えているだろう。そしてこの城。漆黒と紫そして金色で飾られ、荘厳で威圧を感じさせる威容があった。玉座から扉まで遠く敷かれている赤絨毯。高貴で仄暗く周囲を照らしている松明。高さ20Mはある天井には壮大なシャンデリア。完全に魔王の城であった。

 

 この場所は僕には相応しくない。そもそも僕は魔王などではない。だからこそ、もうこの場から逃げ出したかった。



 「ふん……もう、用は無い。この場は僕に相応しくない。お前達も相応しくはない。故に、もう此処には戻らない。さらばだ。ガラド、帰るぞ。」


 「……寛恕かんじよなど、乞う余地もございません。我々は……あまりに愚かであった。申し訳……ありませんでしたッ!。」



 ガラドを含めた全員の体が震え、中には歯を鳴らしている者まで居た。確かにこの場所は寒かった。僕は緊張により熱を持っていた為そこまで寒さを感じなかったが、いざ帰るとなった時に確かにここの冷気を感じとった。寒いのにわざわざ僕の為に陳列していた事に心で謝罪をした。

 

 また、それと同時に、さっさとこの恐怖の場から去れる事に対しての安堵得ることが出来た。だが何故か去る時もガラドは酷く震えていた。一体何故なのだろうか。彼女はまるで処刑台に上がる罪人のような悲痛な面持ちであり、震えながら僕に告げた。



 「……肝に、銘じます。我らごとき不肖の身、御前に在ることすら……汚らわしかったと……ッ!」


 「えっ?」


 「えっ?」



 

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