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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

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何が起きても私の未来は揺るがないのでどうぞご勝手に

作者: 相生蒼尉



 ナタニエル伯爵家のタレイア・ナタニエルは、王立学園の渡り廊下で立ち止まった。


 真新しい制服の胸元に輝く学園章はとても地味なものだ。学びの場に相応しいとも言えた。それはタレイアの黒髪と黒茶色の瞳と同じく、派手さとは無縁の印象を与えていた。


 タレイアの顔立ちは整ってはいるだけに、地味な印象になってしまうのはもったいない気もするくらいだ。


 だがタレイアは外見をそこまで重要視していない。

 なぜならタレイアはその優秀さによって選ばれたからだ。だからタレイアは外見よりも努力と能力を重んじている。


「ねえ……あの人って……」

「私の婚約者よ。あの状態だから紹介できずに申し訳ないけれど」

「そこは……むしろ今紹介されたら困るっていうか……うん……」


 隣に立つ友人のチェリエが、困惑と気まずさの入り混じった表情で口をパクパクとさせていた。そういう仕草は貴族らしくないけれど、タレイアはそこを気に入っている。


 チェリエは入学してすぐにできた友人だが、隠し事を苦手とする性格のようだった。だからこそ信じられるともいえる。もしもこれが演技だったとしたら……それはそれで頼もしいだろう。


 渡り廊下から見渡せる中庭には、ニールセン公爵家の嫡男であり、タレイアの婚約者であるツヴァンツィヒ・ニールセンがいた。

 ツヴァンツィヒは一学年上、つまり二年生だ。肩まである派手な金茶色の髪と、穏やかながらも人形のような完璧な美しさで有名だ。もちろん人気もあった。


 タレイアはわずかに視線を動かし、婚約者の隣にいる女の子をみた。


 それは保護欲をそそるような金髪の女子生徒だった。

 テトラという名のその生徒は、ツヴァンツィヒの腕に自分の腕を絡ませていた。そして、楽しげな笑みを浮かべている。実際、楽しいのだろう。人気者であるツヴァンツィヒの隣にいることが。


 二人の間に流れる空気は、誰もがイメージする「恋人同士」の親密さ、そのものだった。


「……ね、ねえ。あれ……いいの?」

「自分自身以外の人間の行動を止める手段ってあると思う?」

「ええと……あるんじゃないかしら……? 声をかけてみるとか……?」

「私はないと思うの。だから放っておくし、どうでもいいのよ」


 それを聞いたチェリエはまた口をパクパクとさせてから、あきらめたように閉じた。


 どうでもいい、はタレイアの本音だ。心の奥底からどうでもいい。

 それを……そういう本音を聞かせてしまうくらいにはチェリエのことを気に入っているという証。


 タレイアにとってのツヴァンツィヒはその程度の道具のようなものだ。知り合って間もないチェリエの方がずっと価値がある。


 タレイアとツヴァンツィヒの婚約は数年前からのもので、定期的に文通やお茶会を重ねてきた。一般的な婚約者としては当たり前の行動だ。


 しかし、三ヶ月くらい前からツヴァンツィヒからの連絡は途絶え、入学式での再会もあのテトラという女の子を腕にぶら下げたままだった。この男は馬鹿なのだろうか、ああ、馬鹿なのだな、と思ったことをタレイアは覚えている。


「貴族の結婚なんてそういうものじゃない?」


 タレイアは何一つ感情を乗せない平坦な声でそういった。

 実際、政略結婚ではよくあることだ。婚約時からやるのは珍しいけれど。


「タレイア……」


 チェリエが悲しそうにタレイアの名を呼んだ。その顔はまるでタレイアの代わりに傷ついているかのように青ざめている。タレイアはひとつも傷ついていないというのに。


「まあ、周囲の騒がしさに比べたらどうということもないけれど」


 タレイアはそう付け加えた。


 地味な伯爵令嬢の婚約者が別の女性と親密になり、学園で注目を集めている。

 周囲のひそひそ声がうるさいのはタレイアもあきれていた。


 もちろんうるさいスズメたちがどこの誰なのかはいつも確認している。

 確認してどうするかは……これからの話だ。


「いきましょう」


 タレイアはもともと進む予定だった廊下の方向へ歩き出した。

 チェリエが戸惑いながらも、慌てて彼女の後を追いかける。


 タレイアの背中は、まるでさっきの出来事が何も存在しなかったかのように、まっすぐで揺るぎなかった。






 授業が終われば昼食だ。

 昼食の時間の大食堂はとても騒がしい。そこに全学年が入り乱れるからだ。


 タレイアはチェリエと向かい合って座り、行儀よく食事を進めていた。

 しかし、周囲の視線は容赦なく、タレイアの背中に刺さってくる。場合によっては背中どころではない視線も刺さってくるのだけれど。


「タレイア、大丈夫? あんなの気にしちゃダメよ」


 チェリエがまたもや青い顔で声を震わせる。青い顔をしているのだけれど、友人を守る、支えるという気概だけは失わない。

 人間としての善性という部分でタレイアはチェリエのことを認めていた。一緒にいてとても居心地がいいのだ。幸運な出会いだったとタレイアは思っている。


「気にしてないわよ。でも、ありがとう、チェリエ」


 このような状況でも一緒にいてくれるチェリエのことをタレイアはとても信用していた。

 チェリエならきっと裏切らない。そう信じることができた。

 だから、穏やかな微笑みをチェリエには向けられる。


 そもそも、不躾な視線がタレイアに向けられている原因はツヴァンツィヒにあった。

 大食堂でもツヴァンツィヒと、彼の腕に触れながら楽しそうに話しかけるテトラの姿が目立っているからだ。

 ツヴァンツィヒは彼女の行動を咎めることもなく、ただ穏やかに笑っている。恋人同士であることを楽しんでいることは明白だ。あれは馬鹿だから仕方がないとタレイアは思い、そのまま脳内から消去する。


 タレイアは気にせずに食事を続けた。


 不意にツヴァンツィヒの目がタレイアの方を向いた。タレイアに気づくと、それは一瞬ですぐにそらされてしまう。


(……面白いわ。まるで、悪いという気持ちがあるみたい)


 タレイアはそう思っただけで、それ以上の感情は湧かなかった。ツヴァンツィヒが罪悪感を抱いていたからといって何だというのか。


 そのまま食事を終え、チェリエと共に食堂を出た。


「やあ。少し、話せないかい?」


 そこでタレイアは立ち止まることになった。

 さすがに無視することは難しい相手だったからだ。


 目の前に立ちふさがったのは、トリニステラ第三王子だった。三番目とはいえ王子で、王族だ。はっきりと軽んじる訳にはいかなかった。


 トリニステラはツヴァンツィヒと同じ二年生で、タレイアにとっては「顔を知っているだけ」の相手でしかない。

 彼だけでなく、側近らしき生徒たちもいる。そちらも顔と名前が一致するという程度で、交流がある訳ではなかった。


 大食堂の出入り口などという目立つ場所で声をかけてくるということは、わざとなのだろう。タレイアはそう判断した。


 タレイアがぺこりと頭を下げると、チェリエは死にそうな顔になった。チェリエの足は少し震えていた。さすがに相手が王族だと震えてしまうようだ。


 それでもチェリエはそこに踏みとどまった。友情にあつい。タレイアはますますチェリエを信用した。


「タレイア・ナタニエルと申します」

「ナタニエル伯爵令嬢だね。君は……大丈夫かい?」


 タレイアは少しだけ首をかしげた。

 第三王子のいい方では内容が漠然としすぎている。もちろん、何の話をしているのかはタレイアも理解していた。ツヴァンツィヒのことだろうと。


 しかし、第三王子はそれ以上、何も言わない。具体性はゼロだ。

 タレイアは仕方がないので質問することにした。


「何が大丈夫なのかが全くわからないのですけれど?」

「強がらなくてもいいのだ。ツヴァンツィヒのことに決まっている」


 王子ではなく側近が横から口をはさんだ。


 確かヌーベルジェ侯爵令息だったはずだが、タレイアは交流がないのでちらりとみてからすぐに第三王子へと視線を戻す。

 タレイアに話しかけてきたのは第三王子のトリニステラだ。割り込まれたからと相手にする必要はない。


「何が大丈夫なのかが全くわからないのですけれど?」


 そして、おまえとは話していないとばかりに全く同じ言葉を第三王子に向けた。


 側近の侯爵令息が不機嫌そうな顔になったが、第三王子トリニステラはそれを制して訳知り顔で答えた。


「入学してあんな浮気を見てしまえば、君にとっても大きなショックだったはずだ。同じ学園ですごすというのに婚約者が浮気しているなんて許せないだろうに」


(……口にできるのなら最初からそういえばいいのに。人に聞かせたくない内容だから遠回しにしていたのではなかったのかしら? それとも……一度注目を集めてから、聞く者を増やした状態で言いたかったということ? ふむ……)


「伯爵家と公爵家の家格差では、どう考えても婚約の解消はナタニエル嬢からは難しいだろう。そこを私が仲介してもいい。何、簡単なことだ」


 ツヴァンツィヒは公爵家の嫡男。

 タレイアは伯爵令嬢。

 第三王子のいっていることは別にまちがってはいない。家としての力の差は明らかだ。


 公爵家側からの一方的な解消でもない限り、伯爵家から婚約の解消を切り出すことは難しい。それは事実だとタレイアにも理解はできる。


「安心したまえ。私に任せてほしい」


 トリニステラはまるで獲物を捕らえるかのように、瞳がギラギラしている。感情を隠し切れていないのは第三王子として甘やかされているからだろうか。


 その獲物はタレイアではなく、どうやらツヴァンツィヒらしい。

 いったい何をすれば第三王子からここまで嫌われるのだろうかとタレイアはあきれた。


 ひょっとするとさっきの女の子を取り合ったのかもしれないと思い至って、ああ、第三王子ならそのくらいの自由はあるのかとタレイアは納得した。


 外見ではツヴァンツィヒがやや上というところだろうか。第三王子の目はずいぶんと攻撃的な印象を与えてくるので、穏やかなツヴァンツィヒの方が女の子は安心できるだろう。


「……お気遣いありがとうございます? でも貴族の結婚ですもの。気にしておりませんわ。それに、今のところ、この婚約を解消する予定はないので」


(今後もないけれど、それは言う必要もないこと)


 タレイアは心の中でそうつけ加えた。


 タレイアは涼しげな表情のまま、軽く頭を下げるとその場を歩き去った。

 チェリエはタレイアと第三王子を見比べながらも、タレイアについていく。


「あ、おい! ちょっと!?」


 トリニステラの慌てる声が背中に響いたが、タレイアは振り返らなかった。


 彼らの同情や提案など、どうでもいいのだ。


(そもそも第三王子ごときに、そのような力があるものかしら?)


 そこがそもそも疑わしい。

 婚約破棄がタレイアの望みという形を引き出したいだけではないだろうか。


 ツヴァンツィヒを追い落とすために。そのための攻撃材料として。


(そんなことをしなくとも、既にツヴァンツィヒは自滅しているというのに……愚かなものね。恋に溺れる人たちは……)


 この婚約はタレイアと公爵家を結ぶものなのだ。タレイアにとって必須の婚約をどうして解消しなければならないというのか。意味が分からない。


 タレイアにとって重要なのは、ツヴァンツィヒの腕に絡みついた金髪の少女でも、第三王子でもなく、タレイアをもっと楽しく、わくわくさせるものなのだから。






 週末、タレイアはいつものように公爵邸を訪れていた。公爵夫人とのお茶会だ。これは公爵夫人となるための教育の場でもある。


 公爵邸の応接室は、一級品の調度品がそろっている。

 今日は隣の大陸へ渡る途中にある島国の珍しい茶葉の香りで満たされていた。


 タレイアは優雅にカップを傾け、その紅茶を一口飲んだ。ほんのわずかな渋みが脳を優しく刺激する。


「ツヴァンツィヒは出かけているみたいなのよ。フラフラしていて心配だわ。あの子ったら本当に自覚が足りないわよね」

「大丈夫です。気にしておりませんので」

「そうね。気にするべきなのはあの子の方なのに。嫌だわ。どこかで旦那さまのことを耳に入れたのかしらね?」


 現公爵の愛人は多い。

 それをツヴァンツィヒが知ってしまった可能性は確かにあった。そして、そのことを勘違いしてしまう年頃でもある。

 公爵家の男なら浮気をしても許されるのだ、というように。


「それでも旦那さまは私の前に愛人の姿など見せたこともないわ。そのくらいの節度は常識でしょう」

「……一応、食堂で偶然目が合った時には罪悪感を抱いているようでしたけれど……」

「姿を見せていればダメよ。困った子だわ、学園で面倒事を起こすなんて」


 公爵夫人はそう言って、優雅に微笑んだ。


「面倒といえばそうかもしれません」


 タレイアはカップをソーサーに戻した。

 それをみた公爵夫人がぴくりと反応した。


「あら。何かあったのかしら?」

「トリニステラ第三王子殿下に婚約解消をすすめられました」


「……まあ。そのようなことが? あなたの方に? ツヴァンツィヒではなく? あなたと交流があったかしら?」

「特にこれといった交流はしていませんので、少し驚きましたわ」


 公爵夫人の瞳が、すいと細まった。その一瞬の鋭い光は、彼女の怒りだろうとタレイアは推察した。


「ツヴァンツィヒと無関係ではないとはいえ、殿下がこの婚約に口をはさもうとしたなんて」

「ええ。解消するために仲介しようと持ち掛けてきましたね」


 タレイアは淡々と答える。


「そうなのね。タレイアはそれを聞いてどう思ったのかしら?」

「第三王子殿下にそのような力があるとは思えない、などとやや不敬なことを思いましたわ。内緒にして下さいますよう」


 公爵夫人はころころと笑いながら、タレイアに向けて微笑んだ。

 断ったかどうかは確認しないところがさすがだとタレイアは思った。それだけの信頼を積み重ねてきたという自負もある。


「まあ、そう思うわよね」

「そうですよね」


 公爵夫人の微笑みはタレイアへの信頼を表していた。タレイアの心が喜びを感じている。


「タレイアがお嫁に来るのを楽しみにしているのよ。ツヴァンツィヒについては……そのうち考えるわ。もう手遅れかもしれないし。でも、そこはどうにでもなることなのだから」

「気にしていないので問題ありません。私もここに嫁ぐ日が楽しみですし」


 タレイアもにっこりと笑って返事を返した。

 そう。ツヴァンツィヒに嫁ぐのではない。ここ、公爵家に嫁ぐのだ。


 ツヴァンツィヒは確かに浮気をしているし、それは婚約者としてまともな行動ではない。

 それでもタレイアにとってツヴァンツィヒの個人的な女性関係は、優先度の低い問題だった。


 公爵夫人との会話は、自然とツヴァンツィヒの話から離れていった。


 タレイアはこのお茶会の目的が単なる社交ではなく、公爵夫人となるための教育の場であることを理解している。


「第三王子殿下とともに、ヌーベルジェ侯爵令息も何かおっしゃっていましたわ」

「そう、ヌーベルジェね。わかりました」


 きっとヌーベルジェ侯爵家に対して何か手を打つのだろうとタレイアは思った。

 それと同時に自分が公爵夫人だったとしたら、どのような手を打つべきかを考える。


「塩の取引、でしょうか?」

「それだと強すぎるわね。まだ実害はないでしょう?」


「実害はないですね。では、スラウェン橋の通行料くらいではいかがでしょうか」

「いいわね。そうしましょうか」


 公爵夫人はにこりと笑ってヌーベルジェ侯爵家への制裁を決めた。うかつな一言を口にしただけでこうなる。だから公爵家の持つ権力は面白いとタレイアは思った。


 今回はうまく正解を引き出せたようだ。タレイアはますます自信をつけていく。


 公爵領の産業や地理をしっかりと学び、そこからヌーベルジェ侯爵領との関係まで考えての制裁だ。


 相手も侯爵家という大貴族なので、打てる手は少ない。

 釘を刺すけれど本気で殴り合わないような匙加減が重要になる。


 それが面白い。

 タレイアは強大な公爵家を動かすことに喜びを感じていた。それは伯爵家では味わえない快感だった。


「王家にはどのような?」

「さすがに王家は簡単ではないわね。でも、やりようはあるわ。次回はそこも考えましょう。あの第三王子殿下だもの。きっと、また学園で何かが起きるでしょうし」


 何かが起きるのは面倒だけれど、それをきっかけにまた学べることをタレイアは嬉しく思った。


「そうそう。お友達はできたかしら?」

「広く浅くお付き合いしている方々はもちろんですけれど、ひとり、この先も共にと願う友人がいます」


 タレイアはチェリエのことを思い浮かべた。子爵令嬢のチェリエならば侍女でもいいだろうと考えているけれど、チェリエの希望に合わせてあげたい。


「ああ、ツヴァンツィヒのことが試金石なのね?」

「そうですね」

「利用できるものは何でも利用する。それは当然のことだわ。たとえそれが夫であったとしても」


 やはり公爵夫人と話すのは楽しい。

 タレイアはここにくるとわくわくするのだ。


(ツヴァンツィヒ様が何をしていようと、この関係は変わらない)


 タレイアはそう確信していた。

 公爵夫人は、息子の振る舞いよりも、家門の存続と発展を重視する賢明な女性だ。


 彼女にとって、ツヴァンツィヒがタレイアを愛するかどうかよりも、タレイアが公爵夫人としてなすべきことをなせるかどうかの方がはるかに重要だった。


「タレイア、あなたは本当に立派よ」


 公爵夫人は、心からの称賛を込めて言った。


「私が何を求めてこの婚約を維持しているか、よく理解しているわ。そして、その理解の上に立って、感情に流されない強さがあるのも好ましいわね」


「恐縮です」


 タレイアは頭を下げたが、少し頬が緩んでしまった。嬉しい。






 公爵邸を出た馬車の中で、タレイアは学園での出来事を振り返った。


 ツヴァンツィヒの浮気とテトラの勝ち誇ったような視線はどうでもいい。

 テトラがツヴァンツィヒの愛人として子を産むのであればそれは任せていいのだ。


 今の公爵夫人も白い結婚である。

 その優秀さで公爵夫人として嫁いできた人で、実は跡継ぎのツヴァンツィヒの実母ではないのだ。


 あのツヴァンツィヒへの冷たさは血のつながりがないことも影響しているのだろう。


 妊娠と出産は母体への影響が大きく、広大な領地を有する公爵家の優秀な夫人をそれで失うことは望ましくない。

 公爵家の血筋は男系で続いており、跡継ぎを産むのは誰でもいいのだ。


 ただ公爵夫人という重要な仕事をテトラのような者にはさせられない。

 どう考えても無理である。愛人に公爵家をかき回されることも許されない。


 ツヴァンツィヒはその点だけを踏み外さなければ大丈夫だろうとタレイアは考えている。


 問題は第三王子のトリニステラ王子の方だろう。


(すべては茶番なのだけれど)


 第三王子はツヴァンツィヒを陥れようとしている。

 それも、タレイアを使って、だ。


 タレイアがそれに乗せられることはないけれど、ツヴァンツィヒはどうだろうか。今の状態を見る限りでは、踊らされる可能性はあるだろう。


(公爵さまはあちこちに息子がいるもの。もしそうなったとしても問題はない)


 タレイアにとって、自身が未来の公爵夫人であることだけが重要だった。

 第三王子の策略でツヴァンツィヒが公爵家を継げなくなったとしても、タレイアが公爵夫人となる未来が変わるわけではない。

 ただ誰に嫁ぐのかという夫が替わるだけなのだ。


(来週も楽しみだわ。どうやって王家に釘を刺すのか、いろいろと調べておきましょう)


 いっそのこと第三王子に言質を与えず、あいまいな言葉で第三王子の方を踊らせて王家を先走らせるのはどうだろうかなどとタレイアは考えていた。


 タレイアは窓の外に流れる街の景色をみながら、来週のお茶会へと思考を巡らせるのだった。






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― 新着の感想 ―
お飾りっぽい現公爵の仕事は管理された種蒔きで血筋残し、公爵夫人が実権を握ってるんだなぁというのがありありと解るお話で面白かったです。 そういう家系なんだろうな。 きっと時代的にも出産の環境が整ってるわ…
読み終わった瞬間、えっ続きは?となったものの、ある程度型がはっきりしてきた題材なだけに後の展開に想像の余地があるこの終わらせ方もなかなか悪くない後味かもと感じました。
調教師としては繁殖相手も選びたいですね
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