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第47話:三度目の正直、臥龍の昼寝と太陽の不屈の精神

第47話:三度目の正直、臥龍の昼寝と太陽の不屈の精神

翌朝、鶏の鳴き声と共に夜明けが訪れると、太陽は諦めずに再び諸葛亮の庵を訪れた。長旅の疲れと、昨日の空振りの落胆はあったが、彼の瞳にはまだ希望の光が、そして何よりも諸葛亮という人物への強い興味と、彼を軍師として迎えたいという切なる願いが宿っていた。

しかし、童子の答えは昨日と全く同じだった。「誠に恐縮ながら、先生はまだお戻りではございません。昨日は、ご友人のお宅に泊まられたと、別の童子より連絡がございました。今頃は、山寺で貴重な書物を読まれ、学友たちと天下国家の行く末を論じておられる頃かと存じます」童子は、太陽の変わらぬ真摯な態度に、少しずつ敬意を抱き始めているようだった。

太陽は、それでも希望を捨てず、その日も一日、庵の近くで諸葛亮の帰りを待ち続けた。彼は、供の者たちに食料の調達を命じ、自らは持参したわずかな書物(中原の渡来人から譲り受けた兵法書や史書、そして凛と共に読んだ天文部の蔵書にあった諸子百家の入門書など)を読んだり、静かに瞑想したり、あるいは近くの小川で魚を捕り、それを質素に焼いて供の者たちと分け合ったりしながら、焦ることなく時が過ぎるのを待った。しかし、その日も諸葛亮は姿を現さなかった。

供の者たちの間には、次第に焦りと不信感、そしてこの無駄とも思える待ち時間に対する不満が、もはや隠しようもなく募り始めていた。「王よ、このままでは我々の貴重な時間と物資が無駄になるばかりです。一度お会いしているというのに、なぜこれほどまでに我らを待たせるのか。我々には、益州の民を救うという、より大きな使命があるのでは…」と、一人の護衛が意を決して進言した。

岩牙がもしここにいたら、きっと何も言わずに主君の決断を信じただろうと、太陽は思った。

数日後、太陽は「三度目の正直」という、故郷の古い諺を胸に、改めて冷水で身を清め、衣服を整え、最大の敬意を込めて再び隆中の庵の門を叩いた。前世の歴史で知る、あの劉備玄徳も、この地で同じように三度、足を運んだという。ならば自分も、その故事に倣い、礼を尽くさねばならない。

すると、今度は童子が少し困惑したような、そしてどこか申し訳なさそうな、しかし僅かに試すような眼差しで、「先生は昨夜ようやくお戻りになりましたが、長旅でお疲れの上、夜遅くまでお一人で書を読み、何やら深く思索に耽っておられたため、今は奥の間で昼寝をされております。大変申し訳ございませんが、先生の眠りを妨げることは、私ごときには到底できませぬ。先生は、一度お休みになられると、なかなかお目覚めにならないのです」と答えた。

これには、さすがの太陽の供の者たちも堪忍袋の緒が切れ、激しく憤慨した。「我らが王が、これほどまでに礼を尽くし、三度も、それも二度目の長旅を経て足を運び、へりくだってお願いしているというのに、なんと無礼千万な! このような傲慢で人を人とも思わぬ男に、もはや頼る必要などございません! 我々は、もっと我々の誠意を理解してくれる、真の賢人を探すべきです! このままでは、我々の使命が果たせません!」

彼らの中には、剣の柄に手をかける者さえいた。

しかし、太陽は静かに、しかし断固とした口調で彼らを制した。

「待て。歴史に名を残す賢人を求める道が、平坦であるはずがない。諸葛亮殿が、我々の度重なる訪問を予期していなかったはずがないのだ。彼は、我々の本気度と、指導者としての私の器量を、そして何よりも忍耐を試しておられる。ここで短気を起こしては、それこそ歴史上の愚かな君主と同じ轍を踏むことになる。それに、彼が深く思索しておられたというのなら、それはきっと我々の未来にとって重要なことかもしれない。私は、彼が心安らかに目覚めるまで、ここで静かに待つ。お前たちは、もし待ちきれないのなら、先に村へ戻って休んでいても構わない」

太陽は、そう言うと、庵の前の、雪が薄っすらと積もり始めた、凍えるように冷たい庭先に静かに腰を下ろし、諸葛亮が目覚めるのを泰然自若として待ち始めた。彼のその揺るぎない姿と、深い忍耐力、そして何よりも賢者を求める真摯な態度は、激昂していた供の者たちの不満を鎮め、逆に彼らに深い感銘と、自分たちの王への新たな尊敬の念を与えた。南海の島々を束ねる若き王でありながら、一人の名もなき賢人を求めるために、これほどの謙虚さと不屈の精神を示せる人物は、古今東西を見渡しても稀有であった。その姿は、まさに真の指導者の器を示していた。

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